下請けから製品開発へ参入する前に知っておくべきこと 2 ~経営判断編~

執筆者:原田 英明

更新日:2017年09月25日

投資を上回る成果を得るには

(1の続き)
 粘着メモ、付箋として有名な「ポスト・イット※ ノート」の事例を用いて、製品開発における経営判断の難しさを紹介したい。
 現在、広く使用されるポスト・イット ノートは、発売前の米国での市場調査では、価格が通常のメモ用紙の7~10倍もしたため、誰も必要性を感じない製品と評価された。しかし開発者が社内の秘書に使用してもらうと、秘書の業務に便利なツールであることから、口コミで瞬く間に広がり、社内の使用量が飛躍的に増えたことから一般発売が決定した。
 しかし、社内での反響の高さから高い期待を持ってアメリカで大々的にテスト販売されたものの結果は散々で、販売プロジェクトも中止の寸前にまで至った。ところが、しばらくして優良企業の秘書たちから注文が殺到した。開発者が属するマーケティング部が社内の評価を知り、年間売上げ上位500社の秘書にサンプルを送っていたのである。

 一方、日本では1981年に発売されたが、全く売れない状況が2年間も続いた。その後、米国の例を参考に女性を主なターゲットとして企業や街頭で大量のサンプルを配ると徐々に注文が増え始め、使用後の感想として「短冊状の小片サイズが欲しい」という声が官公庁で圧倒的に多いことがわかった。それまでは、米国と同一の製品しか販売していなかったが、日本独自の要望に応え、紙の先端を赤く塗った小片タイプを開発して販売したところ、爆発的に売れた。先行販売したメモサイズには興味を示さなかった企業も飛びつく結果となった。

 製品に対して芳しくない評価が先行していたので、その時点であきらめていたなら、ポスト・イット ノートは米国でも日本でも現在は存在しなかったかもしれない。また、現在のように売れていなかったら、年間売上げ上位500社の秘書へのサンプル送付や日本独自の小片タイプの改良も無謀な判断とされていただろう。

 製品開発では、これまでやってきたことの継続かどうか、また投資金額を増加して機能向上を図るかどうかなど、正解がわからない中での判断を求められることも多いのである。

下請けから製品開発へ参入する前に知っておくべきこと 3に続く

※ポスト・イットは3M社の商標です。
参考:3Mジャパングループホームページ 3M製品開発ストーリー「ポスト・イット ノート 不屈の魂が生んだ世界のオフィスの必需品」
http://www.mmm.co.jp/wakuwaku/story/story2-1.html

この記事の専門家

原田 英明

中小企業診断士。明治大学法学部卒。
大手総合電機メーカー系列の中堅広告会社に就職し、マーケティングやプロモーション部門で戦略策定などの企画業務、販促ツールの制作進行管理業務に従事。中小企業診断士の資格取得後に開業。小規模事業者・中小企業の経営革新、事業計画策定、マーケティング等の支援、創業支援。公的支援機関の経営相談員、専門家派遣の業務にも従事。中小企業経営者に寄り添って支援することをモットーにしている。

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