下請けから製品開発へ参入する前に知っておくべきこと 3 ~コストとリスク編~

執筆者:原田 英明

更新日:2017年09月26日

成功事例にみるコストとリスク

(2の続き)
 下請けの仕事を続けてきた中小製造業が独自製品開発へ参入するには、新たなコストやリスクを覚悟する必要がある。中小企業の自社開発・自社ブランド製品に関する取り組みの進め方を分析した、日本公庫総研レポート「中小企業の自社開発・自社ブランド製品への取り組みの進め方~オリジナル製品による脱下請けへの挑戦と成功のポイント~」(No.2015-8、2016年3月18日、日本政策金融公庫 総合研究所)※には、事例企業の経営者のコストとリスクに対する実感がまとめられている。その一部を抜粋して以下に示す。

(1)求人費用を含む人件費
 無人ボートや内視鏡付き耳かき等の開発に成功したコデン(株)(東京都豊島区)によると、「自社ブランドで売っていくことを目指した。ただし、その場合、当社の規模でも数千万円の開発費用が掛かる。最大の費用は人件費で、ボート事業では5年間・複数名の専任者をつけた。開発は、当社既存の技術に新しい技術を上乗せする必要があり、その技術者を社外から連れてこないといけない。だから費用がかかる。」と指摘する。(同レポート120ページ引用)

(2)販売面でのコストとリスク
 コードレススピーカーなど意欲的な開発を進めているエムケー電子(株)(長野県長野市)は、「もちろん、ヒット商品ばかりではない。一時は結構売れたが、性能上、スマホにとって代わられてしまった製品などもある。とくに、一時的には売れて安定的に売れない商品は、痛手が大きい。量産したのにすべて在庫になってしまうからだ。また、数をつくれば安くつくれる。安くすれば売りやすいが、売り切れるかどうかという決断が難しい。」と述べている。(同レポート121ページ引用)

(3)高くない成功確率
 電動カートや自動給餌機など複数の成功事業を持ち、常設の自社開発製品部門を組織的に整えている福伸電機(株)(兵庫県神崎郡福崎町)は、「社内の商品開発構想は、過去15年間で数百件にのぼるが、成功例はわずかである。個人の感性やひらめきによる部分も大きい。必ずしも組織や仕組みを整えれば成功するというものではない。」と、現実的な指摘をしている。(同レポート121ページ引用)

 最後に誤解のないよう記しておきたいが、私は下請中小製造業が独自製品開発に進出することに賛成の立場である。ただし独自製品開発の失敗は、下請中小製造業にとっては大きな痛手となる。下請けと独自製品開発のモノづくりの違い、およびコストやリスクを覚悟してから参入した方がよいと考え、今回のテーマを取り上げた。

 先の資料に述べられていることだが、独自製品開発に成功すれば、「収益力の向上」「取引の円滑化・引き合いの増加」「求職者の応募の後押し」「社員の士気向上・一体感の醸成」といった効果があることも忘れてはならない。

※日本公庫総研レポートNo.2015-8「中小企業の自社開発・自社ブランド製品への取り組みの進め方~オリジナル製品による脱下請けへの挑戦と成功のポイント~」
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/soukenrepo_16_03_18.pdf

この記事の専門家

原田 英明

中小企業診断士。明治大学法学部卒。
大手総合電機メーカー系列の中堅広告会社に就職し、マーケティングやプロモーション部門で戦略策定などの企画業務、販促ツールの制作進行管理業務に従事。中小企業診断士の資格取得後に開業。小規模事業者・中小企業の経営革新、事業計画策定、マーケティング等の支援、創業支援。公的支援機関の経営相談員、専門家派遣の業務にも従事。中小企業経営者に寄り添って支援することをモットーにしている。

ミラサポおすすめコンテンツ

サービスを利用する
補助金など支援情報
無料派遣専門家
地域プラットフォーム
専門家派遣・電子申請のご利用は、こちらより企業IDをご登録下さい
ビジネスを創造する
ビジネス創造コミュニティ
業務「アプリ」マーケット
ミラサポビジネスプロジェクト/アワード
補助金・助成金ヘッドライン
ビジネス創造ヘッドライン
マイナンバー制度ヘッドライン
バーチャルシリコンバレー
ページトップに戻る