ニッポングッド会議
プロジェクトレポート

Vol.4スノーピーク

上山 桂氏

ユーザー目線のモノづくりプロデュースと
日本の職人たちによる高品質な製品化で
新潟発のグローバルカンパニーへ

株式会社スノーピーク
経営企画室
上山 桂さん

PROFILE

Snow Peak (株)スノーピークの歴史は、現社長山井太氏の父親である山井幸雄氏が、新潟県三条市に創業した金物問屋 山井幸雄商店にはじまります。登山を趣味とする幸雄氏は当時の登山用品への不満から、オリジナル登山用品を開発。さらに1986年に現社長が入社したことで、オートキャンピングのブランドへ変革を果たしました。オーバースペックと言われるほどの品質へのこだわり、製品の永久保証に加え、テントやテーブルを共通規格で設計するシステム化されたデザインはユーザーの熱烈な支持を得て、今では連結売上高40億円以上、世界20か国以上に販売網を広げる、グローバルブランドへと成長しています。

COMPANY DATA

金物問屋から世界のアウトドアブランドに成長したスノーピーク

二人の親子の経営リレーにより、金物問屋から国際的なアウトドアブランドに成長したスノーピーク。同社は「自らもユーザーである」という理念のもと、江戸時代から金物製造が盛んな燕・三条地域の地の利を活かしつつ、単にモノを売るだけでなく、モノとコトを有機的につなぎ、独自のブランドをつくりあげてきました。今回は、スノーピークが成長した背景とそれを支えてきたスノーピークらしさとはなにかについて、経営企画室 上山桂さんにお話を伺います。


アイゼン

スノーピークの商品を支える地場の中小企業100社

スノーピークの強みは「つくる、つながる」、価値あるものをつくりだし、それをしっかりお客様につなげていくことにあります。
「つくる」は、創業者の山井幸雄が築きあげた部分が大きいですね。登山を趣味としていた幸雄社長は、使い勝手の悪い海外の登山用具も金物の町である燕三条の職人たちの技術を使えば、日本人にあった品質の高い登山用具ができると考え、1959年に登山時に靴に装着させるアイゼンを開発しました。ちょうど1956年に日本人がマナスル初登頂を果たしたこともあり、登山が日本でもブームになっていました。開発したアイゼンは大好評で、職人たちの手打ち製造では追いつかなくなり、さらに燕三条の卓越した鍛造の機械技術を使い量産体制を築きました。
燕三条は燕市と三条市にまたがる地域ですが、昔から三条市は大工道具・刃物、燕市は洋食器・ステンレス製品をはじめとするものづくりの街として知られています。スノーピークでは、現在500品番の商品を販売していますが、その約5割は金物類やテーブルウェア類で、うち7~8割は、この本社から約30km以内の100社にわたる中小企業さんによってつくられています。

本社ファクトリー

スノーピークは、ユーザー目線にたったプロデュース会社

スノーピークは、アウトドア製品のメーカーといわれていますが、実は大きな工場は持っていません。この本社にファクトリーはありますが、つくっているのは「焚火台」という社を象徴する商品だけです。それは、燕三条には多くの技術と顔が見える中小のメーカーさんがいて、自社で製造機能を抱える必要がないからです。ちなみに、燕三条では「石を投げれば社長に当たる」といわれるほど社長が多い、つまりそれだけ中小企業・小規模事業者の数が多いということです。
では、スノーピークは何者かというと、私はプロデュース会社ではないかと思っています。だからユーザーの視点を失ってはいけません。当社のミッションステートメントのなかでも「自らもユーザーであるという立場で考え、お互いが感動できるモノやサービスを提供する」という一文を謳っていますが、この言葉は「つくる、つながる」を示す言葉でもあります。
アウトドアを愛し、ユーザー目線でアウトドアをより快適に、楽しくすることを考える社員とモノづくりの技術が集積された燕三条をはじめとする日本の職人さんたち、その距離の短さが、ユニークな商品を生み出し、また品質に磨きをかけているといえると思います。

落ち込んだ経営を再興させた社長の決断力

創業者の幸雄社長がスノーピークの「つくる」の原点をつくった人だとすれば、当代社長の山井太は「つくる」を進化させ、「つながる」ビジネスモデルをつくった人と言えます。
1986年に入社した山井は、1990年代に訪れるオートキャンプブームを先駆けて捉え、今やスノーピークの定番商品であるマルチスタンドを開発しました。山井は、キャンプシーンで水平な場所を確保する大切さ、快適さを見越していたのです。社員の目から見ても山井がすごいと思うのは、モノを売るというよりも、シーンを考えている。モノの品質がよいことは大前提ですが、シーンからモノづくりを発想するというのは、スノーピークの企業文化だといえます。
スノーピークの「つながる」を象徴するのが、スノーピークのユーザーさんと一緒にキャンプを通じて交流を図る「スノーピークウェイ」です。発端は、オートキャンプブームが去り、アウトドアの市場も縮小、経営が何年も落ち込んでいた時でした。気がつくと、小売店主催のキャンプイベントもなくなっていたので、お客様の声を聞こうとキャンプイベントを開催しました。参加人数は約30名。そこでお客様から、「スノーピークの商品は、質はいいけど高い。欲しい商品が店に揃っていない」というものでした。30名の方はとてもスノーピークの製品を愛してくださっている、それでも満足していただけていない。山井は、お客様の意見を真正面から受け止め、問屋を介さずに店舗への直接販売をするビジネスに切り替え、約800店あった販売店を約200店に絞り込み、その店にはスノーピークの商品を充実させてもらう決断をしました。価格が下がったことでお客様が購入しやすくなり、取り扱いも増え、業績も回復基調になりました。
以来「スノーピークウェイ」は、現在でもお客様の生の声を吸い上げる貴重な場として位置づけられ、2013年も全国で9回開催しています。

スノーピークウェイ

スノーピーク

スノーピーク

もっとお客様に近づき、感動できるモノ・サービスを提供する

しかし、現在のスノーピークにまったく課題がないかといわれるとそうではありません。お陰様で売り上げは好調で、「スノーピークポイント」の会員さんも8万人にまで増えました。
しかしながら「スノーピークウェイ」も参加者の皆さんの数が増えた分だけ、スタッフがお客様と深い話まですることが難しくなってきています。昔からの参加者の方からは、「スノーピークウェイがつまらなくなってきている」という厳しい声も聞かれます。もう一度お客様としっかりつながるのはどういうことかと考えていかなくてはいけません。
その模索をするためにも、お客様の近くにいることが大切だと考え、2011年に50,000坪のキャンプ場を併設した本社をつくりました。会社の規模に対して大きな投資でしたが、次の新しい時代を切り拓いていくためには、必要なリスクだと山井は考えていると思います。
これまでも、これからもスノーピークは、お客様の目線で考え、さまざまなモノづくり、コトづくりをする企業さんとつながりながら、お互いが感動できるモノやサービスを提供していくことを目指していきたいと考えています。

エリアモデレータの視点から

佐野 盛也(新潟県エリアモデレータ)

~「つくる」に込められた大切な視点~
◆自らもユーザーであるという立場でのものづくり
「つくる」となるとどうしても、「作りたい」という作り手の思いが勝り、「ユーザー」が忘れ去られることがあります。その点「自らもユーザーである」という立場で「ものづくり」を行うことで、常に「所有して楽しいか、使って快適か、自分なら欲しいか」が問いかけられ、研ぎ澄まされた「もの」が出来上がるのではないでしょうか。そして、それが「ユーザー」を感動させる「ものづくり」を実現しているのだと思います。

◆使用シーンからものづくりを発想する
従来の技術や価格にこだわった「モノ」を起点とした「ものづくり」は、なかなか「ユーザー」に受け入れられないなかで、「シーン」を起点とし、「そのシーンが必要とするモノ、あったら楽しいもの、快適なものは何か」という視点からの「ものづくり」が重要なのだと思います。この視点は、「ものづくり」にかかわる企業に共通して必要な発想転換であると感じました。

~「つなげる」に込められた重要な視点~
◆お客様としっかりつながるを考える
「ものづくり」において、お客様の生の声を聞くことの重要性はよく言われていますが、なかなか行動に移すことは難しいと聞きます。しかし、「本当にお客様に寄り添い、お客様と真正面から向き合う心意気を持っている企業は、そのための行動を起こすものだ」ということを知りました。また、成長を続けるなかでも、お客様と企業との関係性が薄れてきていることに危機感を感じ、お客様としっかりつながる方法を模索する取組みに感銘を受けました。

ニッポングッド会議
プロジェクトレポート

Vol.3むかしみらいごはん 六本木農園

members
左:内藤 有紀さん 右:玉川 眞奈美さん

生産者と消費者を
エンターテイメント感覚でつなぐ
共感しあえる場づくりがお客様を動かす

プロジェクトメンバー
ご提案テーマ「山梨県の食ワークショップ開催」
(株)インフィニバリュー
代表取締役 玉川 眞奈美さん


むかしみらいごはん 六本木農園のご担当
内藤 有紀さん

PROFILE

むかしみらいごはん 六本木農園 "生産者と消費者を繋ぐ"をコンセプトに地域と都市の距離を縮めてきた『六本木農園』。その第2弾として2013年6月に横浜みなとみらいにオープンしたのが「むかしみらいごはん 六本木農園」です。"3世代"と"地産継承"をキーワードに、新鮮で意味深い『むかし』の叡智を、『みらい』を担うこどもたちに、おいしい『ごはん』を通して伝える同店では、食事を提供するだけでなく、お客様と生産者との出会いの場をエンターテイメント感覚で企画するなど、さまざまな場を提供しています。

RESTAURANT INFORMATION

  • むかしみらいごはん 六本木農園
  • 住所:〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-5-1 MARK IS みなとみらい4階
  • TEL : 045-319-6580 FAX : 045-319-6581
  • 営業時間:11:00~23:00(L.O.22:00)
  • 定休日 : MARK IS みなとみらいの規定に準ずる

むかしみらいごはん 六本木農園とプロジェクトメンバーとのマッチング

「ミラサポ」の活動趣旨にご賛同いただいた企業・自治体と中小企業・小規模事業者とのマッチング機会を提供するコラボレーション企画「ニッポングッド会議」。この企画に、「むかしみらいごはん 六本木農園」様にもご賛同いただき、日本各地の次世代に伝えたい、食材、文化、 遊び、祭りなど、店舗とコラボレーションした形でのイベント展開や商品、サービス展開企画の募集を行いました。
そして、今後の企画を検討していくプロジェクトメンバーとして、山梨県の農産物を用いたメニューレシピや地場産品の開発などを展開する(株)インフィニバリュー 代表取締役 玉川眞奈美さんの提案が選ばれました。
ここでは、プロジェクトメンバーとして選ばれた玉川さんと「むかしみらいごはん 六本木農園」の内藤さんの初顔合わせの場をご紹介します。


むかしみらいごはん 六本木農園

内藤 有紀さんと玉川 眞奈美さん

みみほうとう

提案テーマ【1】「ほうとう」を現代感覚で楽しむ

山梨といえば「ほうとう」が有名ですが、昔ながらの食べ方だけでなく、新しい食べ方提案が山梨ではじまっています。その代表的なものが「みみほうとう」で、麺をのして切るのではなく、すいとんのように生地をつまんで農具の蓑のような形にしたものです。
モチモチした食感と歯応えがあって、カタチもかわいらしい。洋風ソースなどバリエーションも豊富でショートパスタのような使い方もできます。また、子どもでも簡単に形にできるので、「むかしみらいごはん 六本木農園」で、山梨のおばあちゃんとつくる「みみほうとう」の親子体験教室ができるのではと考えています。

玉川 眞奈美さん

提案テーマ【2】 牛乳パックで和紙づくり

山梨には1,000年を超える歴史があるといわれる和紙の町、市川大門があります。 牛乳パックはとても質のよい紙(パルプ)からできているので、飲み終わった牛乳パックのコーティングを剥がして水につけると、そのパルプでハガキサイズの和紙を作ることが出来ます。アイロンとキットを用意して、自分の好きな切りぬき、ちぎり絵・押し花・マークなどを入れる漉き込みも可能です。
日常的に飲んでいる牛乳のパックが、ちょっとひと手間かけることで和紙ができる。その体験を通じて、なぜ牛乳パックが回収されているのかも理解できると思います。
山梨では、こうした和紙づくり体験を子どものお祭りや環境学習、食育などで実施しています。

甲州市のもも

提案テーマ【3】 桃を食べつくして、知りつくす

山梨県は果物王国として知られていますが、なかでも「もも」は栽培面積、生産量ともに日本一です。これから春にむけて甲府の盆地は桃の花一色になり、6月~8月にかけてさまざまな「もも」を楽しむことができます。
「白鳳」や「浅間白桃」などはよく知られる代表的な品種ですが、それ以外にも県内で産地化を進めている「夢しずく」や「もも」と同じ季節に旬を迎える「すもも」もあります。
「もも」は完熟した柔らかいものを召し上がる方が多いですが、実は山梨では噛んでカリカリッとする固い桃を好む人が多いのです。それは新鮮な採れたてならではの味。古代から祭祀で供物などにも使われ、卑弥呼の時代では邪馬台国を治めるため「鬼道を行い、人々をひきつけた仙果」とも考えられていました。仙女が育てた果物、桃の木はたくさんの実をつけますから、桃が強い生命力をもち若返りの果ともいわれています。
さらに、さまざまな品種の「もも」を特性や鮮度により味覚の違いや香り、食べ方を楽しむ企画は広がりもあり、山梨の果物を知っていただくスタートとしては楽しく、美しく"実に"なると思います。

内藤 有紀さん

むかしみらいごはん 六本木農園からの意見

今日はわざわざ山梨から横浜までお越しいただきありがとうございました。また、たくさんのご提案をいただき嬉しく思います。
特に「和紙」や「もも」の企画はいいですね。
和紙のパルプが簡単にできる、その日のうちにカタチになるものは参加者にとってもわかりやすいと思います。以前、「むかしみらいごはん 六本木農園」でも栃木のイチゴを何品種も集めて食べ比べをする企画をやりましたが、すぐ予約がいっぱいになりました。「もも」も「ももソムリエになろう」なんて企画をすればきっと人気があると思います。
ちょっと惜しいな、と思うのが各論になってしまって、全体を横軸に貫くストーリーが弱いところかもしれません。「和紙」に興味がある方が「ほうとう」の企画にも来ていただけるような、そんな必然性をもう少し煮詰める必要があると思います。また、個々の企画も単に学ぼう、体験しようという問いかけではなく、直観的に感じる楽しさ、エンターテイメント性が必要ですね。そこに玉川さんのプロデュース力が活きてくるのではないでしょうか。
ひとつひとつのコンテンツはとても素敵なので、単発に終わらない、お互いにとって新しいチャレンジになるような企画にしていきたいですね。

提案を終えて

玉川 眞奈美 さん
今回、地産地消をテーマにしていらっしゃるレストランなので、山梨らしい食にまつわる提案をさせていただきました。でも、私たちは「伝えたいこと」が中心になってしまい、「本当にお客様が楽しめることは何か」を考える視点が足りなかった気がします。
プロジェクトメンバーに選出されたと言うことともに、山梨の本当の良さ・奥深さを伝えるため、今後ともブラッシュアップしたご提案をさせていきたいと思います。本日は素晴らしい機会をいただきありがとうございました。

内藤 有紀 さん
山梨は、首都圏から比較的近いのに、逆に富士山という象徴が際立っていて、知られていないところがたくさんあると思います。だからこそ、逆にチャンスがあふれているとも考えられます。私も今日玉川さんのお話を伺って、もっと山梨を知りたいと思いましたし、私たちのような地方と首都圏の消費者の間にたつ中間的な存在が両社をつないでいく役割の大きさを改めて感じました。
その役割は、消費者のなかにある「家族でゆっくりしたい」とか「きれいになりたい」といった欲求と山梨のコンテンツをどう結び付けていくかということだと思います。玉川さんのもっていらっしゃるネットワークと知識を活かして、今後素敵な企画パッケージができればと思っています。

ニッポングッド会議
プロジェクトレポート

Vol.2 キリン絆プロジェクト

fixme

農業生産者らが事業者との連携により
新しい農業のカタチを生み出す
「プロジェクトアウト」への取組み

キリン株式会社 CSV本部CSV推進部
キリン絆プロジェクト 兼 企画担当
德田 正一

PROFILE

fixme 「復興応援 キリン絆プロジェクト」は、東日本大震災の復興支援のためキリングループが2011年に立ちあげたプロジェクトです。その重点課題のひとつ「地域食文化・食産業の復興支援」の一環として取り組んでいるのが「東北復興・農業トレーニングセンタープロジェクト」。ここでは、東北で新しい農業のカタチをつくりだそうと考える農業経営者たちの育成を図るとともに、他産業との連携を図るネットワークの構築を目指しています。

COMPANY DATA

  • 住所:〒100-0004 東京都千代田区大手町2-2-1 新大手町ビル244
  • 公益社団法人日本フィランソロピー協会
  • 東北復興・農業トレーニングセンタープロジェクト総合事務局

中小企業・小規模事業者の皆さんと取り組みたいテーマ

「東北復興・農業トレーニングセンタープロジェクト」には、東北3県において、震災からの復興や農業が抱えるさまざまな課題に直面しながらも、農業経営者として自立し、他産業と連携して新しいマーケットを生み出そうとしているリーダーが集っています。特に6次産業化に向けては、販路のみならず、加工技術などの課題も多く、全国の中小企業・小規模事業者の皆さんの力が求められています。

「東北復興・農業トレーニングセンタープロジェクト」には柔軟性のある農業経営者がたくさん集っています。キリンの事業領域などは意識せず、彼らと一緒に日本の農を食をより豊かに楽しくしたいと思われる方を求めてきました。

"連携"を財産に自社の強みにしていく

キリンは食に携わる企業として、「復興応援 キリン絆プロジェクト」を通じて、東北3県の農業支援活動を継続的に実施しています。2013年からは第2ステージに入り、生産支援だけでなく、農作物・水産物のブランド育成支援、6次産業化*に向けた販路拡大支援、将来にわたる担い手・リーダー育成支援などを展開してきました。キリンにとってこのプロジェクトは単なる社会貢献に留まりません。生産者の皆さんと深いつながりをもつことで、我々が製品を流通させている飲料店さんや量販店さんに新しい提案ができる。製品をつくって売ってもらうという関係以上のものを築くことができるからです。「復興応援 キリン絆プロジェクト」は、"連携"を財産にして、強みにしていくための取組みでもあります。

(※1 農業・水産業が1次産業に留まらず、それを加工し販売するところまで視野に入れた事業展開により、農業・水産業の活性化に繋げること。1次産業(農業・水産業)×2次産業(加工)×3次産業(流通)=6次産業。)

東北復興・農業トレーニングセンタープロジェクト

fixme

"プロジェクトアウト"していく上で欠かせない1×2×3の連携

昨年から第2ステージに入っていますが、当初思っていた以上に「東北復興・農業トレーニングセンタープロジェクト」の成果は上がっています。それは、参加者の農業経営者の皆さんに"プロジェクトアウト"という考えが定着したからだと思います。生産者側の視点(プロダクトアウト)に固執せず、多様な価値観を自分の中に取り込みながら、プロジェクトを組み立て、経営を変えていく。そのうえでも6次産業化、つまりは他産業との"連携"は必要不可欠になってきます。

fixme

2年目の課題は「場」と「加工技術」との連携

成果の一方で、課題も見えてきました。現在、彼らの農産物をどうやって消費者のニーズに組み込むかという付加価値づくりや仕組みづくりを、東京の「丸の内朝大学」の皆さんとタッグを汲んで取り組んでいます。ひとつの課題は、これを「アウトプットする場」の不足です。そしてもうひとつの課題が「加工技術」です。素材があって、理想とする商品があっても、それを具現化する技術、付加価値性を高める技術がなければパッケージにはなりません。しかし、その技術は彼らの周囲にないだけで、日本のどこかにあるかもしれない。全国の中小企業・小規模事業者の皆さんと彼らが連携して、新しい「ものづくり」が生まれればと思っているところです。

fixme

参加者からのメッセージ

いきいき農場(岩手県岩手郡)
販売企画部 部長 三浦大樹さん

私は、「東北復興・農業トレーニングセンタープロジェクト」の第一期生として多くのことを学び、また自分の考えたプロジェクトの具現化に取り組んでいます。
しかし、加工技術の面で壁を感じています。例えば、「長いものすりおろし」のパッケージングは、高齢化社会を考えてもニーズのある商品だと思っています。一方で、生活者の皆さんは"本物"を求めています。そう考えると、無添加で、食べた時に素材を感じるすりたての長いものおいしさをお届けしたい。チルドなら可能ですが、常温流通でこれを実現するのは至難の業で、まだパートナーを見つけられずにいます。
長いもはひとつの例ではありますが、まだまだ私たちには「カタチにする」ための発想が不足しています。ぜひ、全国の中小企業・小規模事業者の皆さんと知り合い、協力して、知恵と技術を学んでいきたいと思っています。

エリアモデレータの視点から

齋 乾二郎(宮城エリアモデレータ)

~「絆プロジェクト」への期待・意義・価値~
東日本大震災は、主に東北地方の1次産業や商工業等に直接的な被害をもたらしました。震災からもう少しで3年経過しますが、未だ復興への道筋が立っていないところも多く存在します。
当プロジェクトは、東北の復興と被災地域の活性化に貢献する人材育成に留まらず、新しい農業のビジネスモデルを創造する仕組みづくりとして大いに期待しています。
さらに、ミラサポを活用することによって、全国の中小企業・小規模事業者、専門家、コーディネータなど普段の対面ではコミュニケーションをとることができない方々と将来的に、出会いや絆を広げていくことを改めて期待しています。

~農業生産者が全国の中小企業・小規模事業者とつながる意義~
昨今、支援施策の充実や生産者の意識改革により、農業の分野では「産業化」に向けてさまざまな取り組みが行われています。6次産業化により高付加価値を実践している生産者の事例も多いと思います。しかしながら、多くの農業生産者が販路の確保や消費者目線による商品開発などの課題に直面しているのも事実です。
生産者と中小企業・小規模事業者との連携により、上記の課題に対して解決策の糸口となる考え方を得ることが可能となります。そのような取り組みにより農業が抱える本質的な問題(高齢化と担い手の減少)の打開策、さらには地域の活性化に寄与するものと考えます。

ニッポングッド会議
プロジェクトレポート

Vol.1丸の内朝大学

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写真左から吉本さん、田島さん、稲富さん、田中さん、前田さん

日本のビジネスの中心地で関係値を創出する
ポイントはワクワクするような
視点の置き方

プロジェクトメンバー[1]
ご提案テーマ「働く女子のキャリアと健康」
田中絢子さん、田島えり子 さん、田村英子さん

プロジェクトメンバー[2]
ご提案テーマ「京都×伝統工芸」
京都国風(株) 代表取締役社長 前田久美子さん


丸の内朝大学のご担当
丸の内朝大学 事務局 稲富雅子さん
丸の内朝大学 広報担当 吉本淳さん

PROFILE

asa-daigaku 「丸の内朝大学」は、日本のビジネスの中心となる東京・丸の内周辺をキャンパスに、出勤前の平日朝7時台から、地域活性や健康などをテーマに多様な講座を開講している市民大学です。2009年にスタートし、これまでのべ1万人が受講しています。大学のキーワードは「関係値」。家と仕事場が生活の中心になりがちなビジネスパーソンたちに、"第3の場"を提供することで、学ぶだけでなく、お互いがつながり、また知恵を出し合ってさまざまな社会的な課題を解決する仕掛けを考え出しています。

COMPANY DATA

  • 丸の内朝大学企画委員会
  • 丸の内朝大学 ホームページ
  • ※丸の内朝大学は大手町・丸の内・有楽町エリアの既存施設の空き時間を活用して、街全体をキャンパスとしているため、特定の教室および施設を保有しておりません。

丸の内朝大学とプロジェクトメンバーとのマッチング

「ミラサポ」の活動趣旨にご賛同いただいた企業・自治体と中小企業・小規模事業者とのマッチング機会を提供するコラボレーション企画「ニッポングッド会議」。この企画に、丸の内朝大学様にもご賛同いただき、同大学で実施する新しいクラスのプログラム企画の募集を行いました。そして、今後の企画を検討していくプロジェクトメンバーとして、2組の提案が選ばれました。
ここでは、プロジェクトメンバーとして選ばれた2組の皆さんと「丸の内朝大学」の担当者の方との初顔合わせの場をご紹介します。


趣旨説明写真

田中絢子さん、田島えり子さん

「働く女子のキャリアと健康」

私たちは、20~30代の働く女性たちに向けた講座プログラムを提案させていただきます。女性のための健康やキャリアを学ぶ場は数多くありますが、2つの要素を一体化して学ぶことができる場はほとんどありません。しかし、彼女たちは健康な心身をもってキャリアを磨きたいと考えているはずです。これからの女性には「自分の人生を自分で主体的に選び取っていく力」が求められる一方で、
【1】結婚や出産、子育てなどのライフイベントでビジョンを描きにくく、自らのアイデンティティについて悩みを抱えやすい
【2】女性ホルモンバランスの影響を受け、ストレスや不規則な生活により心や身体の変調を起こしやすい
このような状況の中、彼女たちは日々「このままでいいのだろうか」と悩みながら生活しているはずです。

そこで、私たちは、「○○すべき」と生活行動を強制するような講座ではなく、自分がどう生きたいのかというキャリアプランをまず考えていただき、その上でどんな健康管理をするべきかという情報を提供するプログラムを考えました。このプログラムを通じて、働く女性たちがもっと元気になり、日本経済の活性にもつながればと考えています。

丸の内朝大学 広報担当 吉本淳さん

「働く女子のキャリアと健康」への丸の内朝大学からの意見

女性のキャリアと健康は、非常に重要な課題だと思います。丸の内朝大学でも、働く女性たちを対象にした講座はとても人気があります。
丸の内朝大学らしさという視点で申し上げると、ちょっとアプローチが真面目すぎるかな、と思います。私たちも毎回悩むところですが、受講を考える方に「なんだか楽しそう」「ちょっと違うかも」と思っていただけるワクワク感があるテーマ設定とプログラムづくりがとても大切です。だから丸の内朝大学では、1つのプログラムをつくりあげるのに最低でも半年、長い時は3年ぐらいかけています。伝えたいことが同じでも、伝え方を変えればイメージしてもらいやすくなるので、そこにもうひと工夫が必要かもしれません。
逆に思いっきり角度を変えるという手もあると思います。例えば、女性を部下にもつ男性やパートナーに向けた「男子限定!働く女性を育てるキャリアプロデューサー講座」とか。女性が女性に教えるよりも、かえってハードルが低くなったり、新たなコミュニケーションを生むきっかけになるかもしれません。取り組まれている課題はとても素晴らしいと思いますので、あとは思いっきりジャンプできるといいですね。

前田久美子さん

「京都×伝統工芸」

私が経営する京都国風(株)は、京都で伝統工芸と金をテーマに商品開発やプロデュースをしています。今回は、私が培ってまいりました伝統工芸に関するネットワークを活用し、"金"を切り口として友禅、西陣、金箔など本物に触れながら学ぶ講座をご提案させていただきます。
現在京都の伝統工芸技術は、継承者の不在など危機的な状況にあります。金箔を扱う絵師の技術もあと5~10年で途絶えてしまうかもしれません。この状況において少しでも多くの方に伝統工芸の素晴らしさを知っていただき、そのなかから伝統工芸を学んでみよう、弟子入りしてみようと思っていただける方が生まれればと考えています。
講座では人間国宝の方の作品のコレクションなどもみていただき、京のトップクラスの伝統工芸を体験していただくことで、金の素晴らしさ、繊細な技術、そしてそれらが数々の京の神社仏閣、蒔絵などに活かされていることを知っていただければと思っています。

三菱地所(株) 都市計画事業室 環境ユニット マネージャー 稲富雅子さん

「京都×伝統工芸(友禅)」への丸の内朝大学からの意見

京都の伝統工芸の次世代を担う人材が育っていないということは、非常に深刻な問題です。せっかく前田さんが広いネットワークをお持ちなのであれば、知ってもらうだけでなく、もっと関係性を深め、お互いがステップアップできる仕組みにしてはいかがでしょうか。 たとえば、「京都ものづくりパトロンクラス」といったテーマにし、クラウドファンディングのような伝統工芸の未来を育てる仕組みをつくることをクラスのゴールに置く。職人になるのではなく、パトロンのひとりとして、マーケティングビジネスを知る人間が、職人を育てることを支援するのは、とても文化的な行動で魅力的に見えると思います。 そうすれば、受講者の方も応援したいから学ぶといったように、よりポジティブな姿勢で臨んでいただけると思いますし、SNSなどを通じた広がりも期待できます。 また、丸の内朝大学では外国人向けの「日本の旅」を考えるクラスもありますので、受講生と協力しながら、外国人ツーリスト向けに何かプランニングするというのもひとつのアプローチだと思います。

提案を終えて

田中絢子さん
丸の内朝大学のスタッフの皆さんが非常にアイディアフルで、刺激をいただきました。特に視点を変えることの大切さは、今後自分たちのビジネスプランを実現化させる上でも大きな示唆をいただけたと思っています。ありがとうございました。

田島えり子さん
私たちはこれまで自分たちのビジネスプランを一方向でしか見ていなかったのかもしれません。もっと多面的に物事を捉える力をつけて、丸の内朝大学の皆さんのモチベーションの高さにしっかりマッチするようなビジネスにしたいと思います。本日はありがとうございました。

前田久美子さん
今回丸の内朝大学の皆さまにお目にかかれて本当によかったと思っております。いただいたご意見のひとつ、パトロンを育てるというお話は今の京都の工房にとってもありがたいアイディアです。これをご縁に、これからも丸の内朝大学さんの方向性にあったコンテンツをご提案させていただき、丸の内朝大学らしく昇華していただけるようなカリキュラムを考えてまいりたいと思います。

丸の内朝大学 事務局 稲富雅子さん
今日はありがとうございました。皆さんがお持ちくださった「女性のキャリアと健康」「日本の伝統工芸の継承」いずれも非常に意義深いテーマで、皆さんの思いの深さを感じました。丸の内朝大学では人と人、人と社会といった様々な関係値をつくることにこだわっています。これらのテーマをどうすればより面白くなるか、響くものになるか、そしてどうすれば自分がこのテーマに関与したいと思ってもらえるかを一緒に考えていきたいと思います。

丸の内朝大学 広報担当 吉本淳さん
2つのご提案は、それぞれコンテンツとして魅力的だと思いました。あとはそれをどう伝えるか、最初のワクワク感や新鮮さも含めて視点を変えるひとひねりがポイントになると思います。そこが丸の内朝大学の特長でもあると考えているので、伝え方についても今後一緒に考えたいと思います。本日はありがとうございました。