デザインの力 ~デザインが持つ力 本質的価値の創造 vol.2~

執筆者:廣田 尚子

更新日:2016年07月15日

デザインの力

(vol.1の続き)

 「デザイナーと組んでモノはできたが売れない」という話を聞くことがある。商品が機能的で美しくても、市場にフィットするとは限らない。従来型の「モノありき開発」は行き詰まっている。では、飛躍的な成果を出している企業は何が違うのか。

 一つ目の事例はマスキングカラー(太洋塗料株式会社)。塗装時のマスキング塗料として流通していた剥離可能な業務用素材を、美しいペン型パッケージで「描いて剥がせる多色のペイントマーカー」として一般商材化している。描く行為に新しい手段を提供し、創造性を掻き立てる魅力的な商品である。類する商品も出て、新しい市場の核となっている。

 事例二つ目は心臓シミュレーター(株式会社クロスエフェクト)。心疾患患者のCTスキャンデータを光造形でモデル化するサービスである。執刀医師の術前シミュレーションが可能になり、手術の成功率が格段に上がっている。試作メーカーである自社既存の技術に、潜在していた重要度の高いニーズを結びつけ、ビジネスの仕組みを巧みにデザインしている。

 これらの成功事例は、販売されるモノが最終着地点ではなく、ユーザーが使用する体験に、高い価値が生まれるコトを提供している点が共通している。開発の過程で求められるのは、企業が自らのミッションを把握し、ビジョンを掲げる力といえる。どちらもグッドデザイン賞の2013年BEST100賞(マスキングカラー)、2014年金賞(心臓シミュレーター)を受賞。

 このような時代の変化を捉え、東京都は2012年に東京ビジネスデザインアワード(以下TBDA)を立ち上げた。TBDAは、東京都内の中小企業に向けてビジネスモデルをコンペティション形式で募集するマッチング事業である。モノありきではなく、ビジネスを構造からデザインし、技術の新しい用途を開発する。デザインに求められるのは、上市のプランも含めたトータルなソリューションの提案である。開催から3年で多数の成功事例が生まれている。先のマスキングカラーは第1回開催の応募で商品化されている。

 この連載は、筆者のTBDAにおける知見を基に、デザインを広義に捉え、ビジネス開発におけるデザインの役割とその有効活用を体系的にお伝えする。デザインがデザイナーだけの作業ではなく経営サイドにも求められる時代に、読者の参考に資することを目指したい。

(vol.3に続く)

この記事の専門家

プロダクトデザイナー

廣田 尚子

ヒロタデザインスタジオ代表、女子美術大学教授、多摩美術大学客員教授
東京生まれ。東京芸術大学卒業。GKインダストリアルデザインを経て独立。
ビジネスデザインを立脚点にマネジメント・製品開発をトータルにプロデュースする。
東京ビジネスデザインアワード審査委員長
2014年RED DOT DESIGN AWARD(ドイツ)
2015年グッドデザイン賞2016年IFデザイン賞(ドイツ)
REDDOT DESIGN AWARDなど受賞多数

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