人材育成の近未来 ~デザインが持つ力 本質的価値の創造 vol.15~

執筆者:廣田 尚子

更新日:2016年09月09日

人材育成の近未来

(vol.14の続き)

 長い景気の低迷により、人材育成は研修の内製化などコストダウンが進む傾向が続いた。しかしモノだけでは売れない時代、経済再生が語られる今は、人材育成こそが長期的な安定の術として、転換の時期を迎えているのではないか。

 数字だけでなく人の心や市場の背景を深く読み取り、ビジネスプランのストーリーを考えることがすべての役職で求められている。そこで求められる能力は、問題を発見する力・深い思考と実行で解決する力・橋渡しとリーダーシップ。度々話題に出るこれらの能力は、実はデザインが担う役割と全く一致する。そのことから、モノづくりにおける人材育成の新しい切り口として、デザイン教育をベースに、現場を重視した内容を実践的に行うことが適切だと考えている。

 大学のプロダクトデザイン教育では、仮説を立てて検証を行う思考作業を繰り返してストーリーを立て、それに基づいたアイデア・プロトタイプを作成してプレゼンテーションする。授業は双方向性の対話型で個人、またはチームで行われる。生徒が直面する課題を題材にして、具体的な指摘や議論を重ねることで、理論を暗記するよりも確実に消化でき、熟考して次への糸口を掴むことができる。多様な正解があることを学ぶには、一つのテーマに時間をかけて向き合うことや他の意見に触発されることが大切だ。

 この手法は、在日アメリカンスクールでは、「デザインテクノロジー」として小学生の授業に取り入れられている。数年前からすべての科目を暗記型から思考と作業・発表を交えたデザイン型に転換している。双方向性の教育では、受講する人の性格・意欲・夢といった内的側面が浮き彫りになり、習得の進行に大きく関わる。細かいことに固執して俯瞰できない、欲がなく深く探求することが理解できないなど、個人的な部分に触れながら指導を進める。複雑な対応も多いが、思考技術と心の成長が同時に行えるため、課題の修了時には達成感が大きく精神的な成長も期待できる。人材育成では、精神面は個人の管理によるのが一般的だが、今後は仕事の現場で必要な能力は総合的に身につけることが支持されるだろう。

(vol.16に続く)

この記事の専門家

プロダクトデザイナー

廣田 尚子

ヒロタデザインスタジオ代表、女子美術大学教授、多摩美術大学客員教授
東京生まれ。東京芸術大学卒業。GKインダストリアルデザインを経て独立。
ビジネスデザインを立脚点にマネジメント・製品開発をトータルにプロデュースする。
東京ビジネスデザインアワード審査委員長
2014年RED DOT DESIGN AWARD(ドイツ)
2015年グッドデザイン賞2016年IFデザイン賞(ドイツ)
REDDOT DESIGN AWARDなど受賞多数

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