新たな「マルチ・カルチャー」創出を

新たな「マルチ・カルチャー」創出を ~「カルチュラル・インテリジェンス」考Ⅱ <上>~

執筆者:正宗 エリザベス

更新日:2017年05月18日

新たな「マルチ・カルチャー」創出を

 日本の労働人口減少は深刻な問題である。昨年の労働政策研究・研修機構の報告書では、このままいくと、2030年に日本の労働人口が2014年の6587万人から5800万人へ減少すると見込まれている。

 労働人口減少の対策としてはAI・ロボットの活用及び女性とシニア層の労働参加促進が非常に注目を集めている。この様な対策も当然必要ではあるが、少子化問題と人口減少が続く限り、外国人人材の力に頼らずにこの大きなギャップを乗り切れるとは到底思えない。
 厚生労働省の統計では2016年に外国人労働者数は100万人を突破し、現に増加傾向にある。日本政府の支援政策の元で技能実習の受け入れと特定不足人材(介護、建設業界など)の労働力を補う取り組みが積極的に進められている。特に今後の生産性と経済成長の鍵となる高度外国人人材の確保と有効活用が大きな可能性を秘めている。

 しかしながら、法務省の外国人高度人材認定件数の推移を見れば、高度経営・管理職の分野が伸び悩んでいることがわかる。高度経営・管理職について言えば、外国人起業家も今後の日本経済に新しいイノベーションと画期をもたらす重要な人材として注目すべきである。
 ただし、この様な外国人高度人材を確保し、働きやすい環境を形成して行く上で様々な障害が残っている。規制緩和が進められているとは言えど、在留資格取得、資金調達、資格認定、信用問題、言葉の壁など、日本で働くには越えなければならないハードルが数多く存在するのも事実である。

 日本のビジネス界と社会を理解し、ルールを守りながらうまく生活ができるようになったとしても、外国人人材にとって最も大きな障害となるものは日本特有な働く文化である。
 昨今「働き方改革」で日本の働く文化を抜本的に変えていく運動も推進されている。その一環として日本のグローバル・カンパニーで多国籍な職場はもはや珍しくない。但し、せっかく採用された外国人の才能が本当にフル活用されているかというと、数多くの疑問が残る。
 外国人高度人材は日本について学びたくて来日するはずだが、日本のことを学習すると同時に自分の独自の経験と才能を生かし日本の発展にも貢献をしたい人も少なくない。外国人の目線ならでのマーケット・ニッチとスキルギャップも見分けることができる。

 その反面、企業側とビジネス界ではそれらの人材に対して日本の体制と風習に「合わせてもらう」といった扱いにかなりの挫折感を持つ外国人が増えているようである。中には資格を取得しても周りに認められなかったこと、期待していたような面白い仕事を与えてもらえなかったことを理由に自国に帰ってしまう人もいる。
 日本で力をつけて、キャリアアップを望んでいる外国人に話を聞くと、一番の悩み事は日本の企業文化に自分を合わせなければならないことであるという。
 自分が与えられる仕事、期待できる昇進の可能性、働くスタイルとワーク・ライフ・バランス、どれを取ってみても、高度な人材であればあるほど、より自由な環境の中で自分らしく働きながら成長する機会を求める傾向にある。

 そこで、外国人高度人材の才能を引き出すには「歩み寄り精神」を最大の決め手として挙げたい。すなわち、人の立場に立って考え、多国籍職場ですべての人材が秘めている可能性と力を生かす適応能力の育成は今後の成功の鍵となる。
 かつて日本が経済成長を成し遂げるにはモノ・カルチャーが最大のビジネスの武器だったがその時代はもはや過去のものとなり、世界のリーディング・カンパニーは多様性で勝負するようになった。
 日本でも新たなマルチ・カルチャーを生み出すことが今後のイノベーション追求にも不可欠である。外国人の日本に対して提供できる才能や知恵を本心で認め、歩み寄り精神を持って接した時、日本の企業と彼らとの強力な創作パートナーシップが日本の近未来を大きく変える夢の舞台を演出してくれることであろう。

(<下>に続く)

▼正宗 エリザベス:LinkedInプロフィール

https://jp.linkedin.com/in/elizabeth-masamune-psm-7159a94

この記事の専門家

株式会社@アジア・アソシエイツ・ジャパン
代表取締役

正宗 エリザベス

1991年から2014年までオーストラリア連邦政府の貿易促進・投資誘致を専門とする組織「オーストラリア貿易促進庁」に勤務し、外交官として日本、インドネシア、ベトナム、韓国で駐在し、オーストラリア企業のアジア進出に携わる。

豪州連邦政府を退職した後、2015年に生活拠点を日本へ移し、株式会社@アジア・アソシエイツ・ジャパンを設立。
働く女性の意識改革、グローバル人材の育成、異国のビジネス文化理解とアジア進出など、多岐に渡るコンサルティング業務を行う。その他、社外取締役、顧問、講師、評論家、モデレーターとして活動。

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