「感情労働」とは何か ~「感情労働」への組織的支援 vol.4~

執筆者:田村 尚子

更新日:2017年03月03日

「感情労働」とは何か

(vol.3の続き)

 会社では顧客は利益をもたらす存在であり、対応者はたとえ嫌な気持ちにさせられたとしても職務の一環として、感情労働を行うことを雇用者から要求されているからである。この例では次のような感情労働が求められる。
<自然に生起する感情(上記の①、②)を抑制し(③)、相手が適切な精神状態になるよう(怒りを鎮め落ち着くなど)、努めて自らの声の表情、話し方を穏やかに装いながら対応する(④)>
 このような「自分の感情を誘発したり抑圧したりしながら、相手の中に適切な精神状態を作り出すために、自分の外見を維持する労働」を、ホックシールドは「感情労働」と名付けた。さらに、感情労働の特徴として次の三点を挙げている。
 1.対面あるいは声による顧客との接触が不可欠である。2.労働者は他人の中に何らかの感情変化―感謝の念や恐怖心等―を起こさなければならない。3.雇用者は、研修や管理体制を通じて労働者の感情活動を支配する。
 ホックシールドの提唱する感情労働を理解する上で、特に留意すべき点は2と3である。2では、ビルの高所で働く作業者が恐怖やストレスを感じたとしても、それは単に個人レベルの感情的負担であるとし、相手の中に適切な精神状態を作り出すための努力を伴う感情労働とは明らかに異なるものと区別している。
 3は、誰が感情労働者に該当するのか、という点である。感情労働を行使するよう、直接、指示・統制する管理監督者がいる。「賃金労働者」が本来の感情労働者であり、直接的に統制・支配する監督者がいない独立・開業している医師や弁護士等は、感情労働者に該当しないというのがホックシールドの主張である。本稿もこの主張に準じている。
 最後に感情労働の三つの特性を確認する。1.「心のエネルギー」を大量に消費する。2.顧客と感情労働を行う者の間は互酬関係ではない。どんなに心を尽くして感情労働を行っても、顧客はそれに応える義務はない。3.不可視性が高く精神的に消耗・疲弊しても周囲に気づかれにくく、また評価もされにくい。
 この三つは感情労働への組織的支援を検討する際の留意点になる。

(vol.5に続く)

この記事の専門家

西武文理大学サービス経営学部 教授

田村 尚子

上智大学法学部卒、学習院大学大学院修了

銀行役員秘書、昭和女子大学非常勤講師等を経て現職

専門は経営組織論、サービス・マネジメント、キャリア論
論文に「対人サービス従事者の感情労働に対する組織的支援のフレームワークに関する一考察」等

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