感情労働による心理的影響①否定的側面 ~「感情労働」への組織的支援 vol.7

執筆者:田村 尚子

更新日:2017年03月10日

感情労働による心理的影響①否定的側面

(vol.6の続き)

 感情労働は対人サービス従業者にどのような心理的影響を及ぼすのだろうか。この点に関して研究者の見解は二つに大別される。一つは、ホックシールドを代表とする否定的影響を指摘するものであり、もう一つは、ウーターズの肯定的側面を主張するものである。
 今回は前者を取り上げ、なぜ感情労働は否定的影響を及ぼすのか、①「我慢」、②「演技」、③「深入り」の三つのキーワードから検討する。
 ①「我慢」。早稲田大学の熊野宏昭教授は、ストレスをもたらす状況には「頑張る系」と「我慢する系」の二つがあると指摘する。前者のストレスは心臓に負担をかけ、後者は心を疲れさせ、精神的ダメージにつながるという。感情労働の現場はどうなのだろうか。「病院から給料をもらっているので、我慢というか……『あなた、怒らないの、これだけ言われても』と言われ、正直怒りたいですよ、怒りたいですけれども私があなたと同じように怒ったらどうなります、とそういう感じです」(総合病院医療安全課長)。
 相手の言動に対して、自分の心に自然に生起する感情(怒り、悔しさ等)を管理・抑制し、「我慢」することを職務の一環として日常的に行っている状況が推察される。もちろん、我慢することは、相手が適切な精神状態になるように誘導する上で重要だが、度重なる「我慢」は過度に精神的負担を課すことになり多大なストレスとなる。上記の事例に限らず、「我慢」を起因とするストレスは、様々な業種・職種の感情労働現場に共通して観察される。
 ②「演技」。感情労働には、相手(顧客等)に対して悔しさ等を感じたとしても自らの感情を管理し〝顔で笑って心で泣いて〟のような「演技」によって適切な外見を維持することが求められる。ホックシールドはこの感情を管理する方法として「表層演技」、「深層演技」を紹介している。「表層演技」とは、自然に生起した感情を自覚した上で、自分の外見(笑顔や温和な表情等)のみを「感情規則」(その状況に相応しい感情)に沿って変える方法である。「クレーム対応の時は、やはり『お客様が言っていることは正しい』と表情には出します。でも心の中は……その逆です」(首都圏私鉄駅員)。

(vol.8に続く)

この記事の専門家

西武文理大学サービス経営学部 教授

田村 尚子

上智大学法学部卒、学習院大学大学院修了

銀行役員秘書、昭和女子大学非常勤講師等を経て現職

専門は経営組織論、サービス・マネジメント、キャリア論
論文に「対人サービス従事者の感情労働に対する組織的支援のフレームワークに関する一考察」等

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