感情労働による心理的影響②肯定的側面 ~「感情労働」への組織的支援 vol.9

執筆者:田村 尚子

更新日:2017年03月15日

感情労働による心理的影響②肯定的側面

(vol.8の続き)

 心理的影響の否定的側面を主張する見解に対して、感情労働は対人サービス従事者に楽しさ、喜び、新鮮な刺激等肯定的な影響を与え、大きな職務満足をもたらす、という反論がある。その代表的論者であるウーターズは、ホックシールドと同じく客室乗務員の調査を通して感情労働の肯定的側面を強調した。肯定論の中には、職務目的の効果的達成に向けて戦略的視点で感情労働を捉えようとする見解もあるが、本稿では心理面への肯定的影響を中心に記述する。
 では、なぜ感情労働は肯定的影響をもたらすのか、①「笑顔」、②「評価」、③「自己承認」の三つのキーワードから検討する。
 ①「笑顔」。相手(顧客等)から「笑顔」という反応を“直接”受け取ることができる。
 これはモノづくりの現場とは異なる点である。感情労働を行使することにより、相手(顧客等)から直に喜びや感謝の笑顔が返されたとき、たとえ最初は「演技」(第4回)で対応したとしても、対人サービス従事者の心には喜びや嬉しさ等、肯定的感情が湧き起こる。「最初は演技でも良いから笑っちゃえと。笑いにはパワーがありますから。お客様と一緒に笑って、ありがとうと言われることで、真の笑顔になっていくのですね」(テーマパーク従業員)。
 ②「評価」。感情労働の行使が、相手(顧客等)に満足感、信頼感等をもたらし、その反応としてねぎらいや感謝の言葉、賞賛等の肯定的「評価」を受けるとき、対人サービス従事者の心は、達成感、充実感に満たされ職務満足を得る。動機づけにもつながる。第2回で感情労働の特性として「不可視性が高く……周囲に気づかれにくく、また評価もされにくい」と既述したが、たとえ感情労働が現場の上司・同僚に気づかれず、評価をされないとしても、相手(顧客等)から直に評価を受けることができる。高い「評価」は、時に礼状という形をとることもあり、感情労働への大きな励みになる。
「心を込めた接客の積み重ねの中でお客様と心がつながり、お客様に喜んで帰っていただくのが一番うれしいことです。お礼状を頂くこともあります」(百貨店化粧品販売員)。対人サービス現場の中には職場内の壁面に届いた礼状等を貼付し、喜びを共有すると共にメンバー相互の切磋琢磨を促すツールとして活用するケースもある。
 ③「自己承認」。①、②の積み重ねの過程を通して、感情労働を伴う仕事に従事している自分自身を肯定し、「自己承認」していくことになる。

(vol.10に続く)

この記事の専門家

西武文理大学サービス経営学部 教授

田村 尚子

上智大学法学部卒、学習院大学大学院修了

銀行役員秘書、昭和女子大学非常勤講師等を経て現職

専門は経営組織論、サービス・マネジメント、キャリア論
論文に「対人サービス従事者の感情労働に対する組織的支援のフレームワークに関する一考察」等

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