感情労働への支援-二つの事例から ~「感情労働」への組織的支援 vol.14

執筆者:田村 尚子

更新日:2017年04月19日

感情労働への支援-二つの事例から

(vol.13の続き)

 2.組織レベルの支援―B病院(看護師)
 首都圏近郊都市の消化器科専門病院。設立以降、医療訴訟はゼロ。看護師離職率もほぼゼロであり、入職希望者が後を絶たない。黒字経営で安定している。同病院の感情労働への組織的支援の中から二つ紹介する。
 一つ目は「一定の裁量」が職員に付与され自主性、自律性が尊重されている点である。
 職員が信頼されており、経営理念にある「患者様とその家族の喜びや幸せになるため」
のケアについては基本的に禁止事項を設けることなく看護師の自発性が尊重されている。感情労働を伴う「患者様の立場に立った心温かいサービス」が実践できる職場環境であり、患者・家族からの感謝等肯定的反応を得て、看護する側の達成感・充実感、職務満足感等
は増大する。但し、自己満足に陥らないよう実践方針の裏付けとなる基準システム等がある。
 さらに、「したい看護」(患者様の生命力を広げる看護)を一人で行うのではなく、部門の枠を超えたチームとして行えることも、高い「チーム力」の証である。
 二つ目は、「医療サービス対応事務局」の存在である。
 患者、地域の人々、働くスタッフの満足と幸せをサポートするために創設された。組織形態は、クロスファンクショナル・チームとして組織の階層的な壁を取り払い、各部署からの兼任メンバー(医師、看護師、事務、施設整備)で構成されている。同事務局の主な役割は、病院の経営理念に掲げたCS経営の推進とお客様相談であり、「患者満足度調査」、「患者様の声」等から患者のニーズやウォンツの情報収集を定期的に実施し、結果を分析して病院経営に反映させている。
 さらに、病院と患者の間に立って、様々な部門で埋もれがちになる患者からの意見、要望やクレームを部門横断的に一元管理し、関連部門等が協力して対応策を検討することを促し、患者への誠意ある対応に貢献している。例えば、患者やその家族からのクレーム等も、個人にのみ負わせるのではなく、組織全体の問題として同事務局が対応しており、感情労働による精神的負担の軽減に寄与している。「患者満足」はもとより「働く人」の感情労働を支援する仕組みとしても機能している。

(vol.15に続く)

この記事の専門家

西武文理大学サービス経営学部 教授

田村 尚子

上智大学法学部卒、学習院大学大学院修了

銀行役員秘書、昭和女子大学非常勤講師等を経て現職

専門は経営組織論、サービス・マネジメント、キャリア論
論文に「対人サービス従事者の感情労働に対する組織的支援のフレームワークに関する一考察」等

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