出会いを創る ~ 老舗の革新 vol.8~

執筆者:神田 良

更新日:2017年04月27日

出会いを創る

(vol.7の続き)

 伝統食品である海苔に対する嗜好でさえ、時代とともに変化し、消費者の購買行動が変化する。流通チャネルそれ自体も、時代とともに変化する。これらの変化に応じて新たな顧客、市場を開拓しなければ、衰退の道を歩むことになる。戦後の市場・流通チャネルの変化に応じて、山本海苔店も顧客接点を拡大・充実させてきた。百貨店での販売はもとより、スーパーマーケット、コンビニへも販路を広げてきたし、高度情報化社会に対応してインターネット通販も充実させている。変革の遺伝子は息づいているのである。

 とはいえ、販路を拡大するだけでは、こだわりを物語として伝えることはできない。店をして、商品をして物語を伝えている。1965(昭和40)年竣工の日本橋本店に入ると、歴史を感じさせる旧社屋に掲げられていた金文字看板が、海苔の雄性細胞を図案化した信楽焼タイルの壁に掲げられ、海苔船の船底をイメージした天井とともに、歴史と海苔へのこだわりが伝わってくる。商品に目を移すと、二代目の品質へのこだわりを受け継いだ、選りすぐりの最上級品「極吟味」、文豪泉鏡花が寄せた「山本特製海苔報條」にその名が由来する「旭の海」などが並べられている。商品、商品名にも歴史と物語が込められている。

 焼いてこそ海苔。海苔は焼くことによって美しい焼き色が現れるだけでなく、グルタミン酸、イノシン酸などの旨味成分がより引き出され、おいしさと風味がさらに楽しめる。山本海苔店では、本店だけでなく他の店舗でも自社開発した遠赤外線焼海苔器を置き、焼きたての海苔を提供するなど、さらなるこだわりを伝えている。

(vol.9に続く)

この記事の専門家

明治学院大学経済学部 教授

神田 良

一橋大学大学院商学研究科博士後期課程修了

1982年明治学院大学経済学部専任講師、86年同助教授を経て1993年から現職

著書に『実務入門 経営をしっかり理解する』(日本能率協会マネジメントセクター、共著)など
「老舗に学ぶ企業永続のマネジメント」(『信用金庫』2012年10月号)など学術論文多数。戦略研究学会理事

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