次世代につなぐ ~ 老舗の革新 vol.14~

執筆者:神田 良

更新日:2017年05月17日

次世代につなぐ

(vol.13の続き)

【おかもとポンプ③】

 老舗が永続してきたのは、各世代が時代に合わせて変革を導入し、その時々の変化する環境に対応したからである。しかし、それだけではない。次の世代に向けて、新たなビジネスを仕込む変革も忘れなかったからである。

 温泉ポンプに事業ドメイン(事業領域)を確保したおかもとポンプは、過酷な条件下で、個別の状況に対応して、深井戸用水中ポンプで不可欠な揚水サービスを継続的に提供するという中核的なノウハウを構築してきた。このノウハウは海外での経験でも培われてきた。

 三代目がフィリピンでの戦後賠償(ODAの前身)に参加したことに始まり、その後も競合他社が売上規模の割には手がかかりすぎるとの理由で手を引いていく中、この事業分野にも力を注いできた。今では、ODAを通して、過酷な状況で飲み水などに悩むアフリカ、東南・南アジア、そして中近東、中南米地域にも進出している。

 とはいえ、温泉ポンプ市場でも競争は激化している。温泉には単純泉と特殊泉があり、単純泉では通常の清水用ポンプが使用できる。それが使えない特殊泉に、おかもとポンプの強みがあるのだが、市場を考えれば単純泉市場も取り込むべきである。
 しかし、そこはコスト優位性が求められる市場だ。そのため、製品コストの6割を占めるモーターの開発から始まり、部品調達、組立生産に至るまでのバリューチェーンを再構築しなければならない。

 大手企業にモーターの開発を依頼するとともに、海外からの調達部品を見直し、独資化(外国資本100%化)した中国現地法人を活用して生産機能を高めた。新たな市場開拓に向けて布石を打っている。

 温泉ポンプでは、海外市場にも目を向けている。中国に生産機能を移転したことから、中国での温泉ポンプにも参入することになった。

 ところが、日本の温泉ポンプが毎分100~200リットルの大きさなのに対して、中国では1~2トンと桁が違っていた。そこで、大型ポンプを開発せざるをえなかった。
 これがまた新たな市場の可能性をもたらした。この種の大型ポンプは世界でも数社しか生産できず、同社が温泉で培った個別的なクレームへの対応力も生かすことができる。鉱山や塩分濃度が高い海水ポンプなどのニッチ市場にも手がかりを得たのである。

 温故知新。創業以来培ってきた手押しポンプでも、新たな市場に向けた布石を打っている。阪神大震災の時、防災井戸のニーズが高まった。電力がない状況で力を発揮するのが手押しポンプ。そこで、どのような状況でも使用できる手押しポンプの可能性を徹底的に追求しなおし、多くの製品群を開発してきた。手押しポンプと言ったらおかもとポンプ、とのブランドも構築できた。

 水中モーターポンプと手押しポンプを同軸で併設して、最小井戸口径(100ミリ)の既存の井戸に拡幅工事せずにそのまま据え付けることができる「タンデム型ポンプ」もその一つ。通常は電動ポンプで動くが、電源が使えない時には手押しで使えるポンプである。
 さらに、この技術にソーラーパネルを付けて無電源地域でも活用できる「ソーラーポンプシステム」も開発した。災害時だけでなく、電源がないODA開発援助国のニーズにもかなうものである。

 水中ポンプにこだわり続けてきた、おかもとポンプ。培ってきたノウハウを生かした革新によって、既存市場の深掘りだけでなく、次世代に向けた新たな市場の開拓にも挑んでいる。

(おわり)

この記事の専門家

明治学院大学経済学部 教授

神田 良

一橋大学大学院商学研究科博士後期課程修了

1982年明治学院大学経済学部専任講師、86年同助教授を経て1993年から現職

著書に『実務入門 経営をしっかり理解する』(日本能率協会マネジメントセクター、共著)など
「老舗に学ぶ企業永続のマネジメント」(『信用金庫』2012年10月号)など学術論文多数。戦略研究学会理事

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