コア事業をベースとした事業創造 ~ 老舗の革新 vol.9~

執筆者:髙井 透

更新日:2017年05月02日

コア事業をベースとした事業創造

(vol.8の続き)

【グンゼ】①

 グンゼという社名は、郡の是(郡の方針)から取られたものである。創業は1896年であり、設立からすでに100年以上を超える繊維分野の老舗企業である。グンゼが長期存続を実現してきたのには、社名の由来のように正しい戦略の方向性のもとに新事業を不断に開発してきたからである。事実、グンゼはコア事業である繊維事業の成熟化を、うまく新規事業を創造することでカバーしてきた。

 今日ではコア事業である繊維事業をベースに、プラスチックフィルム事業、電子部品事業、医療事業など多様な分野に事業展開している。

 グンゼが繊維事業から多角化したのは、創時の経営方針とも深く関係している。グンゼには、もともと企業の経営を進化させる上での経糸と緯糸という経営方針がある。経糸と緯糸というのは、グンゼの創業事業である繊維事業のメタファーを応用したものである。経糸というのは一度、織機に設置したら途中で切れると織物自体が完成せず、不良品になってしまう。つまり、経営理念のように変えてはならないものである。一方、緯糸は織物に変化を持たせるための柄を作るものであり、柄は時代の変化に応じて変えていかなくてはならない。つまり、緯糸は戦略、事業、商品・サービスなど時代の変化に合わせて進化させていくものである。

 グンゼの新規事業創造には、明確な三つの原則がある。

 第一の原則は、本業に近すぎる領域では意味がないが、遠すぎれば投資コストが掛かりすぎるので、「飛び地に出ず、少しだけ知見のある領域に参入する」。
 第二の原則が、既存の技術やノウハウを組み合わせれば、新分野でも革新が起こせるので、「自社の強みを掛け合わせる」。
 第三の原則が、現業が好調なうちであれば、新規事業の失敗も許容できるので、「新規事業の育成は現業が好調なうちに実施する」。
 
 この三つの原則をベースとして、グンゼの多角化はコアな繊維事業が成熟化するプロセスにおいて、自然な流れの中で行われてきた。
 例えばプラスチック事業は戦後、パンストが急激に伸びていく中で、パッケージを内製化することをきっかけに進出した。さらに、プラスチックに付加価値を加えようとして、今度は、エンジニアプラスチックや電子部品にも参入していった。
 
 グンゼの中にあって一見すると異質なサービス事業にみえる、不動産関係などのライフクリエイトのビジネスも、工場跡地の利用という中で生み出されたものである。そんな自然な流れの中で生み出されきたグンゼの新規事業にあって、異質な事業が医療事業である。この事業は、敢えて新しい分野を狙ったものである。今では、グンゼの医療事業は人工皮膚、人工硬膜、弾性ストッキング、骨接合材などの多様な製品分野に広がりを見せている。

 次回は、グンゼの異業種参入である医療分野の事例を通じて、どのように既存資源との間にシナジーを生み出してきたのかを探ってみよう。

(vol.10に続く)

この記事の専門家

日本大学商学部 教授

髙井 透

早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程修了

専門は国際論経営論、経営戦略論

研究テーマは新規事業創造、グローバルグループ経営、中小・ベンチャー企業のグローバル化など

『グローバル企業の市場創造』(中央経済社)など著書、論文多数

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