知的資産を経営に生かす 1 ~知的資産の分類編~

執筆者:佐々木 陽三朗

更新日:2017年09月19日

会社の特徴を3つに分類

 「知的資産」という言葉を聞いたことがあるだろうか?知的資産とは、会社の組織風土、人材、ノウハウ、マニュアル、技術、知的財産、地域との関係性など、目に見えにくい資産の総称である。
 現代の経済は、ハードよりもソフトが重要になっていると言われて久しいが、このソフトにあたるのが知的資産である。企業の競争力の源泉は、資金力や最新設備ではなく、知的資産であり、知恵やノウハウがなければお金も道具も使いこなせない。経営戦略を考えるうえでこの知的資産は重要なコンセプトだ。

 歴史的には1990年代前半のヨーロッパで議論が始まり、その後、「MERITUMプロジェクト※」により、知的資産を「人的資産」「構造資産」「関係資産」に分類して整理するというやり方が定着した。日本では2005年から経済産業省が知的資産に重きを置いた経営を推奨し、その後、独立行政法人中小企業基盤整備機構から中小企業向けの様々な論文やツールが発信されてきた。リーマンショック後に活動が下火になった時期もあったが、2011年に日本知的資産経営学会の設立、2012年に中小企業基盤整備機構による「事業価値を高める経営レポート(知的資産経営報告書)作成マニュアル」の改訂などを経て、近年再びこの周辺の活動が活発になっている。

 前述のとおり、知的資産は、人的資産、構造資産、関係資産に分類して整理する方法が一般的だが、その中身はどういったものだろうか。ここでは例としてプロ野球を経営する球団で実際に知的資産をピックアップしてみよう。

 人的資産は、「従業員が退職とともに持ち出し、企業に残留しない資産」である。選手、コーチ、監督、スカウト、球団職員個人が持っている能力やノウハウが該当する。
 構造資産は、「従業員が退職しても企業内に残留する資産」である。チームの作戦、サインプレーの他、近年よく耳にする選手の評価システム、育成システム、集客ノウハウといったことが挙げられる。
 関係資産は、「企業の対外的関係に付随した全ての資産」である。ファンクラブ組織、所属リーグ、フランチャイズ地域、スポンサーといったことが挙げられる。

 このような形で御社でも知的資産を洗い出すことができるが、ここで重要なことが2つある。
 1つは、知的資産が、上記3分類のどれにあたるかにあまりこだわらないことである。例えば、選手の育成能力は、人的資産である名コーチのおかげという一方、構造資産であるチームとしての育成システムという面もある。細分化していけば、人的か構造かには通常区別できるが、きれいに分類したからといってそれほどの得はない。実務的には人的、構造、関係の3つの方向から考えることで、「もれなく洗い出す」という意識が大切である。

 2つ目は、一見経営に直接関係がなくても、会社固有の特徴であれば、知的資産として一度は取り上げてみるということである。今回は球団を例にしたので地域の視点は無理なく連想されたが、一般企業、特に製造業やWebサービスでは地域とのつながりを明確に意識することは少ないだろう。しかし、このような無意識下の知的資産が、新戦略、新規事業につながることが多い。
知的資産を経営に生かす 2に続く

※MERITUMプロジェクト:ナレッジ型経済の準備を目的として、欧州の6カ国(スカンジナビア3カ国、デンマーク、フランス、スペイン)と9つの研究機関が30ヶ月(1998年から2001年)にわたって実施したプロジェクト

この記事の専門家

佐々木 陽三朗

中小企業診断士。慶応大学商学部卒。
ベンチャーキャピタル会社で投資案件開拓、投資先支援。ソフト開発会社、外食チェーン等事業会社では経営企画、広告宣伝等に従事した後開業。経営者の考えを行動計画や財務数値計画にまで落とし込むことを得意とし、業種を問わず、創業・ベンチャー支援、事業改善・再生などに携わっている。「真のパートナーとして経営者・事業とともに成長する」を理念としている。

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