中小企業における健康経営の実践 2 ~法令遵守編~

執筆者:泉 とも子

更新日:2018年03月22日

健康を共通の価値観に

(1の続き)
 経営者は、従業員が安全で健康的に働ける職場環境を整備し、健康管理に関する会社の方針を明らかにして、チェック体制をつくることを求められている。健康経営に取り組むことは、労働契約法に則った安全配慮義務の徹底に努めることでもある。

 前述の「健康経営優良法人認定制度」では、中小規模法人部門における「法令遵守・リスクマネジメント」の評価項目として以下を定めている。
(1)定期健診を実施していること
(2)保険者による特定健康診査・特定保健指導の実施
(3)50人以上の事業場におけるストレスチェックを実施していること
(4)従業員の健康管理に関連する法令について重大な違反をしていないこと

 (4)については言うまでもないことだろう。ここでは、(1)~(3)の項目を取り上げ、以下に詳しく説明していきたい。

(1)定期健診を実施していること
 常時使用する従業員が1人でもいる(パートやアルバイトも条件を満たせば対象となる)事業場では、医師による「定期健康診断」を年1回受診させなければいけないことが労働安全衛生法で定められている。この義務を怠ると罰金を課せられることになるので、注意しよう。また、常時50人以上の従業員を使用している事業場では、定期健康診断の結果を、所轄の労働基準監督署に報告する義務もある。
 さらに、健康診断実施後に必要がある場合は、医師や保健師による保健指導の実施や労働時間の短縮等を適切に実施しなければならない。
 一方で、従業員にも健康診断を受診する義務があり、保健指導などを利用して、自身の体調を管理する「自己保健義務」があることも覚えておこう。

(2)保険者による特定健康診査・特定保健指導の実施
 「特定健康診査」は、一般的に「メタボ健診」と呼ばれている高齢者医療確保法によって定められた検査である。40~74歳の公的医療保険加入者を対象としたメタボリックシンドロームに着目した健康診査で、生活習慣病の予防を目的としている。
 一方、「特定保健指導」は、特定健康診査の結果から生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善による予防効果が多く期待できる対象者に、専門スタッフ(保健師、管理栄養士など)が生活習慣を見直す個別のサポートを行うものである。

(3)50人以上の事業場におけるストレスチェックを実施していること
 事業者は従業員のメンタル面の健康においても現状を把握し、必要に応じた対策をとらなくてはならない。2015年12月施行の改正労働安全衛生法により「ストレスチェック制度」が設けられ、事業者は、従業員の心理的な負担の程度を把握し、検査結果に基づく医師による面接指導の実施などを義務付けられている。ストレスチェックとは、年1回ストレスに関する質問票(選択回答)に従業員が記入し、それを集計・分析することで、自身のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査である。従業員が自身の状態を知ることによって、ストレスをためすぎないようにしたり、医師の面接を受けて助言をもらったりして、メンタルヘルス不調を未然に防止することが目的である。

 ここで忘れてはいけないのが、労働基準監督署への報告である。ストレスチェックを実施したとしても、労働基準監督署へストレスチェックと面接指導の実施状況の報告を怠った場合や虚偽の報告をした場合、労働安全衛生法により50万円以下の罰金に処せられるため、注意が必要だ。また、プライバシーの保護も念頭に置いた情報の取り扱いにも留意する必要がある。

 これらの定期健康診断やストレスチェックなどを、経営者は単に負担増、コスト増ととらえるのではなく、健康経営の一環として、職場環境の改善に結びつけ、職場を活性化するきっかけととらえて前向きに活用していこう。
 なお、従業員50人未満の事業場においては、ストレスチェックは当分の間は努力義務となっていることも覚えておきたい。

 従業員にとっては仕事のノルマが厳しかったり、逆に単調だったりといったことが繰り返す毎日では、ストレスを感じることは多々あるだろう。
 しかし、体のコンディションが良ければ、ストレスに対処する力も湧く。また、健康的な生活を送ることで新たな発見があったり、そこから仕事の効率が上がる方法を思いついたり、やりがいを見出すこともあるかもしれない。本来、生産性の向上やイノベーションとは、こういった取り組みの成果として現れるものであろう。

 経営者と従業員の共通の価値観として「健康であること」を捉え、一人ひとりが自らの健康を意識して働き方を工夫することが、健康経営の第一歩となるのではないだろうか。

この記事の専門家

中小企業診断士

泉 とも子

国際基督教大学教養学部語学科コミュニケーション専攻 卒業
外資系金融機関のストラクチャードファイナンス部アシスタントを経て、経営コンサルティング会社で、ハンズオンによる株式公開支援ファンドの運営および経理、総務、人事など会社経営全般に従事。その後、出産・育児のために専業主婦となるも、幼稚園のPTA会長、小学校PTA役員などを通じて、地域コミュニティでのボランティア活動を数多く経験。仕事の経験を活かして中小企業診断士となり、地域社会に貢献するため様々な方面で活動している。

ミラサポおすすめコンテンツ

サービスを利用する
補助金など支援情報
無料派遣専門家
地域プラットフォーム
専門家派遣・電子申請のご利用は、こちらより企業IDをご登録下さい
ビジネスを創造する
ビジネス創造コミュニティ
業務「アプリ」マーケット
ミラサポビジネスプロジェクト/アワード
補助金・助成金ヘッドライン
ビジネス創造ヘッドライン
マイナンバー制度ヘッドライン
バーチャルシリコンバレー
ページトップに戻る