売上を減らさず値上げするコツ 3 ~値付け編~

執筆者:遠藤 康浩

更新日:2018年01月26日

顧客単価を上げる心理学的アプローチ

(2の続き)
 値付けの方法には、心理学的要素が多分に盛り込まれている。300円とするよりも298円とした方が、割安感を演出できる例などが典型的である。ここでは、このような心理学的なアプローチで値上げの成功確率を上げていく方法の一例を紹介したい。

 単純に値札表を書き換えただけでは、顧客は値上げに気づき、購買を控えるであろう。
 しかし、実質的に値上げをしているにも関わらず、顧客がそれを意識しない売り方というものが存在する。その1つが3段階で価格を設定するやり方である。

 例えば、あるそば店が天ぷらそばで次のようなメニューを設定していたとする。
 上  1,000円
 並   800円

 上記のように2種類のとき、「上」が3、「並」が7の割合で売れているとする。では、次のようなメニュー構成にすると割合はどうなるだろうか。
 特上 1,500円
 上  1,000円
 並   800円

 このような場合、「特上」が2、「上」が6、「並」が2の割合に変化する現象がしばしば起こる。売れ筋が「並」から「上」に変化したので、顧客単価は上昇し、実質的な値上げが成功したことになる。すべての企業に当てはまる例ではないが、この結果は「真ん中のものを選びやすい」という人間の心理を利用したものである。

 つまり、ある商品において、より高価格のラインを用意すると、売れ筋の水準が上の価格帯に移動するという現象が起こるのである。この現象は、2017年ノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー教授が研究している行動経済学という分野で考察されている現象である。これまでの経済学は「ヒトは合理的に物事を判断する」という前提であったが、行動経済学はヒトの非合理的な部分、つまり心理に焦点を当てた経済学である。
 行動経済学には本稿では紹介しきれない事例もたくさんあるので、ぜひ一度、書籍などにあたって参考にしていただきたい。

 上記の例の場合、1つ注意点がある。高価格のラインのアイテムは、あくまでも売れ筋のラインを上げるための「見せる商品」として機能するものである。よって売上分析を行い、「死に筋商品」であると判断して撤去してはならない。撤去すると、売れ筋が下のラインに移動し、売上が下がってしまうことになるため注意が必要である。

 長いデフレ期がようやく終わろうとしている。経済環境が変わると、ビジネスのやり方も変わってくるのは必然である。「良いモノを最適な価格で提供する」という原則は変わらないにせよ、「最適な価格」が何なのかは時代により変化していくものである。今回紹介した手法は一部であるが、これからの経済環境に適した値付けを行っていただきたい。

この記事の専門家

遠藤 康浩

中小企業診断士。プログラマーとして通信系企業に勤務していた平成17年に中小企業診断士として登録。同年7月、経営コンサルタントとして独立開業する。
最も得意とする領域は、製造業のWebマーケティングであり、ホームページを活用して、いかに取引先を拡げるかというコンサル手法には定評があり、これまで50社を超える製造業のコンサルティングを実施した実績がある。また、このテーマで平成25年に中小企業経営診断シンポジウムにて中小企業診断協会会長賞を受賞した。

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