最近の労災事故からみる企業責任とその対応策 2 ~事故事例編~

執筆者:鈴木 元

更新日:2018年03月23日

怪我だけが労災ではない

(1の続き)
 最近の労災事例の中で注目されているのが、「新型労災」、即ち怪我以外の労災事故に対する企業責任である。
 怪我以外の労災事故として、企業の損害賠償責任が認定された事例を以下に紹介する。

(1)過労による「脳・心疾患」の労災事故
 従来、労働者が脳出血や心筋梗塞で亡くなる、もしくは重度の後遺障害の状態になったとしても、労災事故とは無関係とされていたが、最近では企業の管理責任が問われ、高額の損害賠償責任が認定されるケースが出てきている。
(事例)約2億円の損害賠償責任を負ったケース
 金属製品の製造・販売業を行っている会社に勤務していた労働者が、小脳出血・水頭症を発症し手術を受けたが、継続して半昏睡状態となり、体を動かすことができない状態となった。裁判で争われ、重い後遺障害となったのは、部署変更に伴い2週間で61時間の時間外勤務となったことが原因、と労災の認定。使用者である企業は、労災保険による補償以外に、1億9,800万円の損害賠償が命じられた。

(2)職場環境を原因とする、うつなどの「精神疾患」の労災事故
 過酷な作業環境や長時間労働、同僚との確執の問題など、職場におけるストレスを原因とした「精神疾患」についても、ストレスチェックなど、労働者の「心」に対する企業の管理責任が問われている。
(事例)1億円超の損害賠償責任を負ったケース
 調味料の製造・販売会社に勤める労働者が自殺したのは、夏場40度を超える職場環境で慢性疲労の状態に至り、また上司として部下への指導に思い悩んでうつ病に罹患したものと推定されると裁判所が認定。使用者である企業は1億1,100万円の損害賠償が命じられた。

(3)天災に対する企業責任
 東日本大震災以前は、天災(地震・噴火・津波)に対する企業責任は極めて限定的なものだった。しかし、先の大震災における訴訟案件においては、大地震の後に来る津波が予見可能なものであり、労働者の避難などにおいて、企業の管理責任が問われるケースも出てきている。

 厚生労働省の平成28年度「過労死等の労災補償状況」によると、過労などが原因で精神疾患を発症したと労災請求があった数は、平成28年度は1,586件と過去最多であった。労災認定された数も同様に過去最多の498件。そのうち自殺や自殺未遂者は84人であった。
 企業責任がここまで問われるようになったのか、と驚かれた人もいることだろう。

 次回は、企業としてどう対応したらよいのかを紹介する。

最近の労災事故からみる企業責任とその対応策 3に続く

この記事の専門家

鈴木 元

ファイナンシャルプランナー。
工場から排出される排水・排ガスをクリーンにするプラントの営業を経験。その後、損害保険会社に入社し、平成3年に損害保険代理店として独立。平成8年から生命保険を扱う。平成9年にファイナンシャルプランナーの資格を取り、FPとして活躍。
「安心を形にする」をスローガンに、顧客の様々な問題を解決するため、ワンストップサービスを目指し、現在11種の士業を集め「専門家集団アリさんNET」を主宰。主な著作に「FPの知恵袋」がある。

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