東日本大震災から7年、中小企業の産学連携を考える 1 ~逆境下の挑戦編~

執筆者:鈴木 康夫

更新日:2018年03月16日

被災企業の現況と変革への取り組み

 早いもので、この3月に東日本大震災から7年を迎えた。特に被災の象徴である、東日本地域沿岸の水産加工業に従事していた人々は、今でも事業の復旧に懸命の努力を注いでいる。
 しかしながら、「旧」に復するだけなら、経営が右肩下がりの時代を再び甘受しなければならないことは明白である。被災地域が未来型産業のモデル地域として生まれ変わるためには、復しつつ「新」を興すことが不可欠だ。復しつつ「新」を興すことは、まさしく「挑戦」である。

 国などの復興支援事業を受けて、工場や設備機器などのハード面が整備されている事業者が多いのにも関わらず、従来の取引が再現できずに、低稼働の生産を強いられている事業所が大半である。ハード面の復旧だけでは不十分であることがうかがえる。
 今後は、震災前と同じモノを製造していても業績が回復しないことから、厳しい状況の中でも、新商品の開発、既存商品への付加価値付けや新しい販路の開拓に取り組むことが必要であるとの認識が高まっている。
 そういった逆境をイノベーションと成長の源にする能力は、企業が生き残り、発展するために必要なものである。

 実際に、東日本大震災のような厳しい「制約」はイノベーションの契機となり得る。その例として、逆境を利用して新事業に取り組む事業者の挑戦があった。以下に紹介したい。
 ヤグチ電子工業(株)(宮城県石巻市)では、震災を機にスマートフォン接続型線量計を開発・販売してきた。これを慶應大学の松本教授の回路集積化技術を活用して発展させ、小型で低価格の屋外放射線モニタリングポストシステムを開発した。
 従来品の10分の1の省電力化を実現するとともに、90Hz帯無線通信の採用を可能とした。自治体や農家など向けに、小さく、イニシャルコスト・ランニングコストともに安価で、メンテナンス不要な、新しいモニタリングポストを完成させたのである。
 簡単に放射線量の監視ができ、地域住民の安心・安全、農畜産物の安全供給や風評被害防止など、様々な利用が期待されている。将来は放射線だけでなく、気象・土壌・PM2.5など、様々なセンサを追加することで農業のIT化や広域環境監視など、多様なユーザーニーズに応えることが可能になるという。
 震災前は大企業のOEM生産だけであった同社だが、震災という逆境を利用し、製品企画・開発からビジネスプランニングまで、自分達の手で「設計」するようになったのである。

 五光食品(株)(宮城県塩釜市)は、牡蠣など水産物を中心とする食品の卸売・小売業者。紫外線の中でも長波長であるUV-Aを牡蠣に照射することで、旨味成分を増した「UV-Aウマァミーノ」を開発した。
 牡蠣の加工品は、ボイルの下処理で水とともに旨味成分が抜けてしまうのが課題であったが、八戸工業大学の青木客員教授とともに紫外線を照射する実験を行い、生牡蠣に照射するのに適した装置を開発し、これを解決した。紫外線照射品は、通常のボイル品に比べて総アミノ酸量が1.7倍、グリコーゲン量も1.27倍の増加を示すという。

 上記2件は、いずれも「学の知恵」をうまく活用して新事業を成功させた事例である。このような産学連携は、被災企業のみならず、被災していない企業にとっても参考となる重要な取り組みと言えるだろう。

 次回は、被災地域以外の企業も含めた産学連携の重要性について、説明したい。

東日本大震災から7年、中小企業の産学連携を考える 2に続く

この記事の専門家

東北福祉大学総合マネジメント学部・教授

鈴木 康夫

東北大大学院工学研究科修了。宮城県に入庁し、宮城県産業技術総合センター所長、宮城大学教授を経て、現在、東北福祉大学教授。東日本大震災後、東経連ビジネスセンターのコーディネータリーダー、JST復興促進センター仙台事務所プログラムオフィサー、産学共創プログラムプログラムオフィサーを務めた。

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海・山・里に係る産業おこし

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