介護をしながら働いてもらうために必要なこと 3 ~組織風土の醸成編~

執筆者:堀野 美奈子

更新日:2018年06月08日

セミナーの実施で意識を変える

(2の続き)
 従業員に介護離職せずに働き続けていてもらうためには、前稿紹介した「育児・介護休業法」に基づく支援制度の導入をすることの他に、導入した制度が形骸化せず利用できる組織風土作りが重要である。

 介護は、親が脳梗塞で急に倒れるなど、突発的に始まるケースも多い。突然の状況に戸惑い、不安に駆られ、仕事が手につかなくなる人もいるだろう。また、仕事と介護の両立が難しいと訴える従業員の話をよく聞いてみると、介護保険制度や会社の支援制度の存在を十分に知らなかったという例も多くみられる。こうした事例に対応するため、介護保険制度や支援制度の内容や手続きについて正しく理解してもらうための社内介護セミナーの実施を強く薦めたい。

 介護セミナーの実施は、従業員への情報提供と同時に、組織風土や職場環境の改善効果も期待できる。例えば、働き方改革のため時間外労働の抑制や効率化をスローガンとして掲げても、「成果を出すためには長時間労働も止むなし」という従来の価値観に阻まれて改革が進まない場合が多い。こうした価値観を変えるのが、介護セミナーだ。

 人は自らが当事者になることで、初めて真剣に事にあたる。ほぼ確実に訪れる未来として自らが介護に直面し、時間的制約のある働き方をせざるを得ない可能性に気付いたとき、当事者意識をもって働き方改革に取り組むことができるだろう。また、セミナー内では、従業員同士が語り合うワークショップの時間をぜひ設けてもらいたい。従業員同士が立場を超えて、介護という共通の土俵の上で体験や不安を話し合うことは、組織内コミュニケーションの改善に大いに役立つ。

 介護離職と同時に、育児離職防止も企業にとっては大きな課題だろう。育児離職防止のための施策としては、育児との両立支援制度の整備や制度の周知、育児セミナー実施の他に、ハラスメント防止の施策や、上司と本人双方へのキャリア教育、両立を果たしている先輩社員のロールモデルの提示などが挙げられる。
 特にハラスメント防止は、育児・介護休業法では育児、介護ともにハラスメント行為者への厳正対処の規定も新たに設けられているため、企業側の積極的な対応が必要だ。

 介護・育児と仕事の両立支援に取り組む事業主などに対しては、厚生労働省により「両立支援等助成金」が用意されている。助成金の案内ページには、介護セミナーのサンプル資料も掲載されているので、ぜひ活用していただきたい。

 また、厚生労働省による両立支援総合サイト「両立支援のひろば」も活用していただきたい。一般事業主行動計画が簡単に作成できる「両立診断サイト」の機能の他、両立支援に取り組む企業事例や、事業主および従業員の方々向けの介護・育児に関するQ&A集が豊富に掲載されている。

 誰もが直面する介護や育児の問題を、プライベートな問題と従業員に押し付けるのではなく、互いに理解し、支え合う組織風土を醸成し、「この会社にいたから働き続けられた」と言ってもらえる組織を目指していただけたらと思っている。

この記事の専門家

キャリアコンサルタント
中小企業診断士

堀野 美奈子

大学院博士課程で行動分析学、比較認知心理学を専攻、キャリアコンサルタント、中小企業診断士。
大手通信系IT企業の人事部でダイバーシティ推進、キャリア開発喉の人材育成施策立案や社員のキャリアコンサルティングの傍ら、RPAやAIをはじめとする先端技術を活用する新規事業開拓に取り組む。

得意分野

キャリア開発

働き方改革、ダイバーシティ推進

営業プロセス改善、販路開拓

新規事業立ち上げ支援

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