プロジェクトには不確実性がある
個別受注生産する製造業やシステムを構築するIT業など、多くの企業は納期や品質を守るために「プロジェクト」を管理する活動を行っている。
「プロジェクト」とは、特定非営利活動法人日本プロジェクトマネジメント協会の定義では、「独自の製品、サービス、所産を創造するために実施される有期性の業務」とされている。つまり、期限が設けられている独自の活動は全て「プロジェクト」と呼べるだろう。
プロジェクトは、どんなに綿密に計画を立てても、納期遅れが発生することがある。本稿では、製造小売業を営むA社のシステム部門の事例を見ながら、その原因について探りたいと思う。
A社では、システム部門が管理する自社のシステムについて、得意先や製品を追加するために定期的に更新作業を行っていた。更新作業には、設計、組み込みおよびデータの準備など、いくつかの工程が必要であり、作業順や工期を計画した上で、かつ納期を担保するために各工程に十分なバッファ※1を設けていた。
しかし、その都度、プロジェクトとして綿密に計画を作成しても、予定していたリリース日に間に合わない、つまり納期遅れがたびたび発生していた。各工程には十分なバッファを入れているのにも関わらず、徐々に遅延が起こるケースや、納期直前の割り込み作業により作業者の手が取られるケースが発生し、こういった遅延を防ぐことができずにいたのである。
そもそもプロジェクトは、不確実な性格を持っており、この不確実性を緩衝するためにバッファを設けている訳である。A社においても本来であれば、バッファの期間だけ工期が短縮できなければいけないはずであるが、バッファが機能しないのは、人間の行動心理に由来する以下のような落とし穴があるのだ。
(1)パーキンソンの法則(第1法則)
仕事の量は、与えられた時間を全て満たすまで膨張してしまうという法則である。例えば、「まだ余裕があるから少しでも品質を上げよう」と作業を続けてしまうようなケースが考えられる。
(2)学生症候群
納期のある作業で、人は余裕時間があればあるほど、作業を開始する時期を遅らせてしまうという現象である、このような着手の先延ばし現象は、学生の夏休みの宿題を思い出してもらえばわかりやすいだろう。
※1 バッファとは、不測の事態に備えて設ける時間のこと。
この記事の専門家

中小企業診断士、
株式会社エクステック 企画推進室 チーフコンサルタント
秀田 好章
得意分野
業務効率化支援
IT導入支援
事業計画作成支援
人材育成支援
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