従業員の不正を防ぎ、企業の信頼性を守るための心得 1 ~不正の事例編~

執筆者:南 肇之

更新日:2018年10月17日

小さな企業にこそ不正は潜む

 世界125カ国の2,690件を対象にした調査結果である、2018年度版「職業上の不正と濫用に関する国民への報告書」(公認不正検査士協会(2018)、一般社団法人日本公認不正検査士協会訳)によると、発生した職業上の不正の3つの主要カテゴリー「資産の不正流用」「汚職」「財務諸表不正」のうち、「資産の不正流用」が占める割合が89%と飛び抜けて多かった。また、職業上の不正の被害を受けた組織(政府機関や非営利団体を含む)は、組織形態別では「株式非公開企業」が42%を占めており、組織規模別でも「従業員100名未満」の組織が28%となり、いずれも他のカテゴリーと比べて最も多くなった。

 このように、「不正」は新聞を賑わすような大規模なものだけではなく、また、大企業だけに起こりやすいものではない。日本企業の99.7%を占める中小企業にとっても、職業上の不正は無視することができない重要な経営課題であるといえる。
 今回のコラムでは、日常の事業活動の中に潜む、コンプライアンス意識の欠如が招いた不正事例の紹介を通じて、企業経営者が従業員の不正を防止するための心がけや取り組むべき対策について伝えたい。

 A社は、全国に顧客を有する従業員30名ほどの建築資材商社である。顧客別に営業担当者を配置し、全国の建築現場を回るという営業スタイルであり、同社の営業担当者は営業活動を一旦スタートすると1週間は本社に戻ることがなく、本社出勤は月に2回だけという者もいるほどである。
 ある日、同社の社長は、月次において旅費交通費の額の変動が大きくなっていることに加え、旅費の仮払金が多額になっていることが気になり、事務管理担当者に調査を依頼した。

 数日後、事務管理担当者からの報告によると、以下の状態であったという。
(1)ある営業担当者は、営業に一旦出ると現場を転々とするため、わざわざ本社に戻って旅費交通費の精算をするのは非効率であるという判断をしていた。
(2)当該営業担当者は、本社とは常に電子メールなどで連絡を取れる状態にあり、自身の所在は適宜報告していた。
(3)営業担当者の長期出張が常態化しており、月をまたぐことが度々あった。また、当該営業担当者の失念などにより、旅費交通費の精算が1、2カ月遅延することも多かった。これにより仮払金の精算が遅延し、その残高が多額になっていた。

 以上の報告を受けた同社の社長は、お金に関わることであるため、詳細な情報を突き合わせて確認するように指示した。すると、単純に「不正」案件では片づけるべきでない事象が見えてきた。

【A社の事例に潜んだ、不正発生の原因や問題点とは?】に続く

この記事の専門家

中小企業診断士、公認不正検査士(CFE)

南 肇之

大学卒業後、製造業をスタートに、建設・小売・物流業にて、一貫して経営企画管理、経理、事業管理に従事。また、BPR推進や対外的にはM&Aや事業再編にも携わる。現在、これら経験を活かし、経営の監査を行う。

得意分野

経営企画・管理、予算実績統制

BPR推進、リスクマネジメント

M&A、事業再編

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