従業員の不正を防ぎ、企業の信頼性を守るための心得 2 ~発生の条件編~

執筆者:南 肇之

更新日:2018年10月17日

不正が起こる3つの条件とは

(1の続き)
 前稿で取り上げたA社の事例から見えてきた事象とは何か。不正発生の側面から説明したい。

 A社の事務管理担当者が再度、当該営業担当者の業務報告書などと旅費精算書の内容とを突合し詳細に調査したところ、時系列が一致していないところが見られた。一方で、領収書の額と旅費精算書の額は正しく整合していたのである。
 この結果を受け、社長が自ら当該営業担当者に確認したところ、長期間にわたって出張が続いていたため仮払金が多額となり、手元の残金と個人の所持金とが混同されていたことが判明した。さらに、当該営業担当者は「領収書は保管しており、精算額も正しい。金額が正しければ問題ないのではないか」という認識をしていた。
 この事例では、金銭の詐取などの明確な不正行為は無かったが、社長はこのままの状態にしておくことに危惧を感じたのである。

 米国の犯罪学者であるD.R.クレッシーによる理論では、不正は、(1)動機(不正を働く動機)、(2)機会(不正を働く機会)、(3)正当化(不正を働く口実)の3つの側面で構成され、この3つの条件が揃ったときに不正が発生するという。

 今回の事例に沿って説明すると、営業担当者は精算内容が食い違っていても問題ない、という思い込み(動機)があり、精算遅れを律する明確な取り決めがなく(ルール逸脱の機会)、証ひょうに基づく金額の一致を主張している(正当化)ということになる。
 当該営業担当者にしてみれば、「多少のことは違っているかもしれないが、金額は正しいし会社に迷惑をかけているわけでもないから」という主張になるのだろう。だが、経営者はこのような状態であり続けることに「不正の芽」が潜んでいると捉えるべきである。明確な損失が発生していなければそれでよい、と思うのは早計過ぎる。

 「不正の芽」が黙認されている環境では、同じような事象が社内で伝播する。言い換えれば、企業内での暗黙の慣行が「不正の芽」となり、コンプライアンス意識の欠如を正当化してしまう。このような環境下で金銭的な詐取などの不正行為が起こると、損益上の損失のみならず、会社自体の信用問題になることすらあり得るのである。

【中小企業の経営者が、企業の信頼性を守るためにできる対策!】に続く

この記事の専門家

中小企業診断士、公認不正検査士(CFE)

南 肇之

大学卒業後、製造業をスタートに、建設・小売・物流業にて、一貫して経営企画管理、経理、事業管理に従事。また、BPR推進や対外的にはM&Aや事業再編にも携わる。現在、これら経験を活かし、経営の監査を行う。

得意分野

経営企画・管理、予算実績統制

BPR推進、リスクマネジメント

M&A、事業再編

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