判例にみる、正社員と非正規社員との待遇差の判断基準 3 ~判例からみる対応編~

執筆者:渡邉 勝行

更新日:2018年11月20日

助成金も活用し均等待遇の実践を

(2の続き)
 ここでは、数ある賃金項目のうち、住宅手当を例に考えてみる。
 「ハマキョウレックス事件」を例にとると、同社では正社員に対してのみ住宅手当を支給することとなっていた。その住宅手当について最高裁は、「従業員の住宅に要する費用を補助する趣旨で支給されるものと解されるところ、契約社員については就業場所の変更が予定されていないのに対し、正社員については、転居を伴う配転が予定されているため、契約社員と比較して住宅に要する費用が多額となり得る」とした。したがって、正社員に対して「住宅手当を支給する一方で、契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は、不合理であると評価することができるものとはいえない」とした。本事案の場合は、転勤を伴う正社員とそうでない契約社員との間で、住宅手当の支給に差があることは不合理ではないとされたのである。このように考えてみると、会社は賃金項目の諸手当の支給要件について、明確な判断基準を設けることが必要であることが分かる。

 一方で、「長澤運輸事件」を例にとってみたい。60歳での定年制を採用している会社で、現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する「継続雇用制度」の導入をしている場合には、この制度により65歳までの雇用が必要となっている。この65歳という年齢を70歳へ引き上げられる検討が政府でなされていることは周知のとおりである。判例および現状を踏まえると、定年後に再雇用する従業員については有期契約となるケースが多いと思われるが、無期契約と有期契約のそれぞれの就業規則について、改めて精査しておくことが必要となるであろう。

 視点を変えると、厚生労働省「キャリアアップ助成金」の活用を検討することができる。「キャリアアップ助成金」は、有期契約労働者などの、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップなどを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度である。7つのコースがあるが、その中でも、特に以下のようなコースの利用を検討したい。
(1)有期契約労働者等の基本給の賃金規定等を増額改定し、昇給した場合に助成される「賃金規定等改定コース」
(2)有期契約労働者等に関して正規雇用労働者と共通の職務等に応じた賃金規定等を作成し、適用した場合に助成される「賃金規定等共通化コース」
(3)有期契約労働者等に関して正規雇用労働者と共通の諸手当制度を新たに設け、適用した場合に助成される「諸手当制度共通化コース」

 このような助成金を活用し、無期契約労働者と有期契約労働者の均等待遇を実践していくことにより、今後、改正施行が予定されている「短時間労働者、有期労働者等と通常の労働者との均等な待遇の確保等に関する法律」(パート・有期労働者均等待遇法)にも対応していくことができると考える。

この記事の専門家

渡邉事務所 代表(特定社会保険労務士・特定行政書士)

渡邉 勝行

大学卒業後、新聞社に勤務。1998年に行政書士時事務所、2000年に社会保険労務士事務所開業。社会保険労務士として開業後は、中小企業を中心に労務問題の解決にあたるとともに、開業当初から社会保険労務士資格取得学校で講師として、分かりやすさをモットーに講義を続けている。

得意分野

就業規則、労働契約書の作成支援

給与規定に関するコンサルティング

労務トラブルに対するアドバイス

助成金活用の支援

ミラサポおすすめコンテンツ

サービスを利用する
補助金など支援情報
無料派遣専門家
地域プラットフォーム
専門家派遣・電子申請のご利用は、こちらより企業IDをご登録下さい
ビジネスを創造する
ビジネス創造コミュニティ
業務「アプリ」マーケット
ミラサポビジネスプロジェクト/アワード
補助金・助成金ヘッドライン
ビジネス創造ヘッドライン
ビジログ
バーチャルシリコンバレー
ページトップに戻る