「無期転換ルール」に対応するため、助成金を活用しよう 3 ~活用のポイント編~

執筆者:渡邉 勝行

更新日:2018年12月26日

助成金を活用するためのポイント

(2の続き)
 本稿では、具体的なキャリアアップ助成金の活用のポイントを紹介したい。
 まず必要なことは、「キャリアアップ計画書」の作成である。アルバイトやパート従業員などの有期契約労働者、無期雇用労働者がいる企業であれば、キャリアアップ計画書を作成し、管轄労働局長の認定を受けておくべきである。さらにいえば、現在はアルバイトなどを雇用していない場合でも、今後、採用する可能性がある場合には、キャリアアップ計画書の作成および提出をしておいても損はないものである。
 キャリアアップ計画書の作成はそれほど難しくはなく、すぐに作成できるものだが、その後の助成金の申請まで考えると、社会保険労務士などの専門家に支援を依頼することも考慮すべきであろう。

 次に行うことは、就業規則などの改定または作成である。今回のコラムでは、キャリアアップ助成金のうち、正社員化コースを中心に紹介する。正社員化コースの場合、労働者を「有期」から「正規」、「有期」から「無期」、または「無期」から「正規」へと転換する必要があるが、このときのポイントは、就業規則などに「正規雇用への転換」に関する規定を定めておくことである。例えば、「勤続○年以上の者で、本人が希望する場合は、正規雇用に転換させることがある」といった規定である。
 通常、就業規則は常時10人以上の従業員を使用する企業で必要となるものであるが、従業員が10人未満の企業であってもキャリアアップ助成金などを活用する場合は、就業規則などを作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出ておくことをお勧めする。正社員化コースの助成要件として、「就業規則または労働協約その他これに準ずるもの」に規定した制度に基づく取組であることが必要だからである。

 キャリアアップ助成金を受給するために、今回押さえておきたいポイントとして筆者が伝えたいのは、タイミングを意識してほしいということである。具体的には、有期契約労働者から転換する場合のキャリアアップ助成金の支給対象となるのが、雇用期間が通算して6カ月以上の労働者であり、かつ有期契約としての雇用期間が3年以内の労働者を転換する必要がある。つまり、上述の就業規則に定めるべき規定についても、「勤続6カ月以上の者」とすることが必要であり、実際に、雇用から3年以内のタイミングで転換することが必要となるのである。
 5年で適用される無期転換ルールに対して、その適用前のタイミングで、かつキャリアアップ助成金の対象となるタイミングである入社などから3年以内に、「有期」から「正規」へ、「有期」から「無期」へ転換することに注意してほしい。

 支給要件としては、他にも賃金を5%以上アップさせること、一定期間、事業主の都合による解雇がないことなど、注意すべきことがある。
 さらに、キャリアアップ助成金を受給するためのポイントとしては、賃金の5%アップがネックとなることがある。具体的に考えると、例えば月額20万円の給与であれば21万円とする、ということである。中小企業の場合、給与の決定について明確な基準がないことが多い。現在の求人難から、従業員の手当などは計画的に決定しているというより、「○○手当をつけよう」という発想から「就業規則を改定しよう」といった流れになっていることが多いと思われる。そのため、いざ従業員を正社員などに転換しようとしたときに、うまく給与の5%アップにつなげられないことがある。なかなか難しいことかもしれないが、賃金規定をしっかりと作成することが必要となる。

 他方で、必ずしも就業規則に規定するべきことではないかもしれないが、具体的な賃金額を考えておくことが重要である。例えばいま、中途採用、大卒、30歳、社会人経験8年、同業の業務経験が5年、現在の業務が営業職の人を採用した場合は、給与をいくらとするか。またそれが35歳だったら、または同業の経験なしだったら、といった具合に、採用前の段階でシミュレーションしておくことが大切だろう。
 今後、無期転換ルールを念頭におきながら、キャリアアップ助成金の活用を考えてほしい。詳しい要件などは、管轄の労働局やハローワークに問い合わせてみよう。

(参考)申請様式のダウンロード(キャリアアップ助成金)

この記事の専門家

渡邉事務所 代表(特定社会保険労務士・特定行政書士)

渡邉 勝行

大学卒業後、新聞社に勤務。1998年に行政書士時事務所、2000年に社会保険労務士事務所開業。社会保険労務士として開業後は、中小企業を中心に労務問題の解決にあたるとともに、開業当初から社会保険労務士資格取得学校で講師として、分かりやすさをモットーに講義を続けている。

得意分野

就業規則、労働契約書の作成支援

給与規定に関するコンサルティング

労務トラブルに対するアドバイス

助成金活用の支援

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