建設業・製造業が利益を上げるための原価管理の基礎 3 ~取組事例編~

執筆者:森若 壽英

更新日:2019年01月25日

原価管理を導入した中小企業の事例

(2の続き)
 本稿では、原価管理を導入した中小企業の事例を、「中小企業における管理会計の総合的研究<最終報告書>」(日本管理会計学会、2016年、水野一郎ほか)第4章より、A社の例を抜粋して紹介する。

 「A社は、自社ブランドで、主に計量器の製造、販売をしている。創業1937年という歴史をもち、資本金4,000万円、従業員200名、売上高は約30億円という」(井上和子、2016、p.47)
 「当時、税引き前当期利益(以下、「利益」と略す)は、対売上比1%を切る低い数値にさらされていたものの、経営陣の戦略は、売上拡大の一点に集中していたという。利益率が対売上比1%以下の状態が続く中、月次決算単位では売上原価率が6~7%も変動することに経理担当者は疑義をおぼえたという。(中略)売上構成比によって、売上原価率は変動するが、その差異が平均2%程度であることは掴んでおり、ここに何らかの改善策を講ずることにより、利益を3~4%確保することは可能ではないのか、と原価計算経理担当者は考え、これが出発点となったという」(井上、2016、p.48)

 このような状況で、A社が実施した原価管理の取組は大きく分けて次の4点である。
(1)予算計画の立案
(2)原材料費、労務費、間接費等の原価算出
(3)予算と実績の照合
(4)予算計画値と実績の進行状況の管理

 同社の原価管理の取組におけるポイントは、a)(予算と実績の)「差異分析を毎月の月次決算段階で繰り返すことにより、(中略)毎月の売上原価率の変動は、その原因が明確になり改善された」(井上、2016、p.51)こと、b)「年度決算において、新たに標準原価との差が生じることは、ほとんどなくな」(井上、2016、p.51)ったこと、c)「生産現場に足を運び、(中略)生産現場の不満に耳を傾けた。(中略)現場では解決できない不良の発生等の存在を知り、理解に努めたという。これらを辛抱強く行うことにより、製造現場と経理・経営側の関係が改善され、正確な原価計算に対してマイナスに作用する製造側の不正やごまかしないし操作を排除できた」(井上、2016、pp.51-52)こと、である。

 結果として、「原価測定の柔軟な運用を通じたコスト低減活動の促進および利益の明確化」(井上、2016、p.52)に繋がり、また「生産部門の評価、人的管理や原価管理へと繋がり、さらに、それを基礎とする個別単価改訂議論、予算編成は、各人への動機・意識づけ、人的育成、責任体制の構築」(井上、2016、p.52)へと結びついていった。

 上述のA社の取組こそが、前稿で説明した「(1)目標原価(標準原価)の設定」「(2)実際原価の見える化」「(3)実際原価と標準原価の比較」「(4)なぜギャップが生じたのかを考え改善策を実施」のPDCAサイクルに対応していることがお分かりいただけることと思う。

 特に重要なのが、毎月しつこいまでに目標に対する実績(数字)を追いかけること、および現場と一体感を持ってPDCAサイクルを回していくことである。目標に対する実績(数字)を見ればどこに問題があるのか、どの目標が未達なのかが誰でも分かるので、問題意識を共有しやすい。
 その問題に対して犯人探しをするのではなく、社長をはじめとする会社の関係者同士で議論する中で、改善策を出し合いその改善策を実施して一緒に解決していく。経営層の人が現場へ足を運び、積極的に声を聞くことで相互にコミュニケーションを図り、一体感を醸成することが原価管理における勘所である。

この記事の専門家

中小企業診断士

森若 壽英

元自動車部品メーカー勤務。広島で営業、原価管理を経験後、静岡本社にて経営企画に携わる。2018年4月に中小企業診断士登録。現在は経営コンサルタントとして独立し、広島豪雨災害の復興支援や事業承継、ものづくり補助金などに携わる。

得意分野

ものづくり補助金・持続化補助金の活用

事業承継支援

業務改善による生産性向上

原価管理

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