巻頭特集|他社の成功に学ぶ! 事例でみる~公的機関の支援施策~ Vol.1|公的機関が発行している様々な「事例集」は、企業を成功に導く宝の山です。成長する企業の取組を参考にすることで、自社の経営に活かす術がきっと見つかるはず。経営を向上させるため先進的な取組を行う中小企業や、活用した支援施策などを紹介します。

Vol.1 平成28年度地域商業自立促進事業モデル事例集~全国商店街の挑戦~(中小企業庁)

事業引継ぎ支援事例集

地域商業自立促進事業(自立促進支援事業)を活用した商店街による取組をモデル事業として紹介することで、他の商店街の参考となる情報を提供するものです。

同事業を活用してニーズや外部環境の調査などを行い成果が得られた事例のうち、ピックアップした2事例を紹介します。
※本記事は、2018年8月28日時点の情報をもとに執筆・掲載しています。

事例紹介 1

3者連携で施設を整備、人が集う街へ 【野幌商店街振興組合】

野幌商店街振興組合が整備した複合施設「八丁目プラザのっぽ」
野幌商店街振興組合が整備した複合施設「八丁目プラザのっぽ」

野幌商店街は、北海道江別市の中⼼地区にある商店街です。2013年に、商店街内にあったコミュニティ施設が閉鎖。「人が集まる商店街づくり」を進めるため、地場産品を活用した飲食・物販店とコミュニティスペースの複合施設を新たに整備しました。現在の同施設は、地元産品を扱うレストランの出店やコミュニティスペースを活用したイベントの開催で、憩いの場として連日賑わっています。

「人が集まる商店街」をめざして

北海道江別市の中央部に位置し、野幌駅北口から約350mの通り沿いに立地する野幌商店街。地域に根差した商店街として長年、近隣に居住する住民などの生活を支える役割を担ってきましたが、再開発による道路拡幅工事の影響で、2013年に商店街内にあったコミュニティ施設の立ち退きを余儀なくされました。

同商店街の店舗などで構成される野幌商店街振興組合は、地域のコミュニティ機能を維持しながら地域のニーズに応える事業を行うことで、「人が集まる商店街づくり」を進めていくことが必要だと考え、補助金を活用してマーケティング調査などを実施しました。そこで判明したのが、地域住民による「日中利用可能なレストランやカフェがほしい」「地元産食品を販売する場がほしい」「幅広い世代の多様な人が交流する場がほしい」というニーズだったのです。

これらのニーズを実現化する役割を果たしたのが、2013年に市が設置した「野幌駅周辺地区活性化計画実現化促進事業コーディネーター」の存在です。コーディネーターが商店街と市の関係課とをつなぐ形で、新たなコミュニティ施設を整備する体制が成立。加えて野幌商店街振興組合副理事長の梶野雅裕さんのリーダーシップにより、商店街・コーディネーター・市の3者がスクラムを組む形で事業が動き出しました。

野幌商店街振興組合 梶野雅裕副理事長
野幌商店街振興組合 梶野雅裕副理事長

住民ニーズを満たす施設をオープン

2016年12月、地域住民のニーズに応える形で、地元産品を活用した飲食・物販店とコミュニティスペースを有する複合施設「八丁目プラザのっぽ」がオープンしました。同施設の1階には、全国的に知名度がある株式会社町村農場と、地元で大人気のフレンチレストラン「シェ・キノ」とが連携したレストラン「カフェ&デリ マチノキ」が出店。同店は江別産の小麦や野菜、果物、乳製品を使ったメニューを提供し、市内外からの来店客で賑わっています。また、同じく1階に江別産の小麦を使ったクッキーやパン、ケーキなどを取り扱う「菓子工房 笑くぼ」が出店しました。2階には同店の製造スペースを設けており、作りたての商品が購入できるため来店客からも好評です。

「八丁目プラザのっぽ」の2階には、誰でも利用できるコミュニティスペースを設けており、サークル活動や各種講座などさまざまな活動の場として利用されています。同スペースを活用して、2018年3月からは地元の大学と連携して地域食堂を実施している他、NPO法人と連携して子どもの学習なども計画しており、コミュニティの場として、さらなる活躍を目指しています。

梶野さんは、今後のまちづくりについて次のように語ります。

「2017年12月に開催したオープン1周年イベントが好評で、今後も定期開催を検討しています。2019年に道路拡幅工事が完了する予定。これに合わせ、より過ごしやすい、ぶらぶら歩きが楽しいまちの実現を目指して、地域の皆様のニーズに応えられる商店街を作っていきたいと思います」

コミュニティスペースでの健康体操講座
コミュニティスペースでの健康体操講座

事例紹介 2

ノウハウ豊富な団体と連携して来訪客を増加 【七⽇町商店街振興組合】

七日町商店街振興組合が整備した交流拠点「N-GATE NANOKAMACHI」
七日町商店街振興組合が整備した交流拠点「N-GATE NANOKAMACHI」

七日町商店街は、山形県山形市の中心市街地に位置し、歴史的な建造物や町屋を活かした観光名所などが所在する商店街です。道路拡幅工事の影響で商店街所有の駐車場が全面改修となったのをきっかけに、地域活性化と街の魅力向上に向けた交流拠点の整備に取り組みました。同拠点には、子育て支援施設や観光案内施設などを併設することで、来訪者は日に日に増しており、商店街の価値向上につながっています。

子育て支援・観光など多様な機能をもつ交流拠点を整備

山形県山形市の中心市街地にある七日町商店街は、地元百貨店をはじめ有力店舗が集まる、山形駅から徒歩10分圏内の全長約300mに立地。集積率・集客力・販売額ともに県内随一の商店街です。

七日町商店街振興組合が出資するまちづくり会社(山形七日町まちづくり株式会社)が、積極的に観光交流拠点の整備などの事業を展開している地域でもあります。

2012年に県の道路拡幅計画が具体化し、商店街所有の駐車場が全面改修を迫られたのをきっかけに、同組合では補助金を活用し、2015年度に地域住民などのニーズや環境変化の詳細な分析に取り組みました。その結果、地域の活性化と街のさらなる魅力向上に向け、駐車場だけでなく子育て支援施設や観光案内所などのコミュニティ機能を有する交流拠点の整備を決定。多種多様な交流機会を提供するとともに、新たな回遊起点の創出を図ることとしたのです。

こうして2017年4月、子育て支援援施設やコミュニティカフェなどの機能を有した複合施設「N-GATE NANOKAMACHI 街なかコミュニティ機能型交流拠点」(以下「N-GATE」という。)がオープンしました。

オープンした子育て支援施設
オープンした子育て支援施設

ノウハウ豊富な団体がニーズに対応

「N-GATE」には、それまで商店街内の別のビルで運営していた子育て支援施設が、移転する形で再オープンしました。同施設は親子が交流する広場や一時保育ルーム、育児相談室、研修室などで構成されています。子育て講座が好評で、街の中心部で利用しやすいこともあり移転前と移転後の利用者数は平均で約28%増となりました。同施設の運営には、市の公的施設や、多くの子育て支援施設を運営するNPO法人の協力を得ている他、地元大学の実習先としても活用されており、地域のネットワーク強化にもつながっています。

それまで七日町には観光案内施設がなく、地域物産をPRする場もなかったことから、「N-GATE」に観光スポットの情報や地域の魅力を伝える観光案内所兼アンテナショップを新たに整備。運営は山形七日町まちづくりが担い、観光情報はもちろん、商店街の店舗や地域の情報についてコンシェルジュとして対応し、商店街内の消費を促進する狙いとしています。

これらの取組から商店街を訪れる人が日に日に増えており、実際に駐車場事業でも施設のオープンから8カ月で2015年度の年間実績(利用台数、利用金額)を突破しています。

同商店街の今後について、七日町商店街振興組合事務局長の下田孝志さんは次のように話します。

「今後は利用者数を伸ばすだけではなく、利用者の満足度を高めていくことが重要だと考えています。定期的に調査を実施することで利用者の新たなニーズを把握するとともに、新たな不満が発生していないかなどを確認していきたいと思います」

七日町商店街振興組合 下田孝志事務局長(右)と岩淵正太郎理事長
七日町商店街振興組合 下田孝志事務局長(右)と岩淵正太郎理事長

活用した支援施策

地域・まちなか商業活性化支援事業(地域商業自立促進事業)

同事業の支援スキーム
同事業の支援スキーム

地方公共団体と密接な連携を図り、商店街組織が単独で、または商店街組織がまちづくり会社等の民間企業や特定非営利活動法人等と連携して行う、「少子・高齢化」「地域交流」「新陳代謝」「構造改善」「外国人対応」「地域資源活用」の6分野に係る公共性の高い取組を支援します。

商店街等の中長期的発展および自立化の促進に寄与し、商店街等が有する地域コミュニティ機能、買物機能の維持・強化を図ることを目的としています。

中小企業庁「商業活性化」のページはこちら

施策担当者のひとこと

中小企業庁経営支援部商業課 小島 暢夫課長
中小企業庁経営支援部商業課
小島 暢夫課長

野幌商店街振興組合の事例は、商店街が立地している区域において市の再開発事業が進む中、商店街が「地域のコミュニティ」としての機能を維持しながら地域のニーズに応える1つのモデルケースであると考えています。

かねてから商店街が事業に関する検討を地道に続けてきたのはもちろんのこと、市が設置したコーディネーターが市と商店街をつなぎ、市の補助金も活用し、行政と地域がスクラムを組んで事業を展開することで、協力者もスムーズに集めることができ、地元のNPO法人や地域の有力事業者とも連携した地域一体となった取組が可能となりました。

七日町商店街振興組合の事例は、まちづくり会社と商店街が一体となって事業を実施し、地域の活性化と街のさらなる魅力向上に向け、子育て支援施設と観光案内所等を含む複合施設の整備や、地元の大学が実習場所として活用するなど、地域のネットワーク強化にもつなげている事例です。

事業実施にあたっては、事前にニーズ・マーケティング調査を入念に行い、客観的なデータを徹底的に集め、それらのデータを基に内部の合意形成を行うなど、事前の調整が重要であったと事業担当者の方も話しています。何かこれから事業をしようと考えている商店街関係の方は、地域住民などのニーズや環境変化を分析した本事例をぜひ参考にしてほしいと思います。

今回紹介した事例集はこちら

平成28年度地域商業自立促進事業モデル事例集~全国商店街の挑戦~

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