巻頭特集|他社の成功に学ぶ! 事例でみる~公的機関の支援施策~ Vol.3|公的機関が発行している様々な「事例集」は、企業を成功に導く宝の山です。成長する企業の取組を参考にすることで、自社の経営に活かす術がきっと見つかるはず。経営を向上させるため先進的な取組を行う中小企業や、活用した支援施策などを紹介します。

Vol.3 Incubation Report Vol.9(独立行政法人中小企業基盤整備機構)

Incubation Report Vol.9(独立行政法人中小企業基盤整備機構)

独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」という。)では、大きな飛躍をめざすベンチャー企業や第二創業を開始した企業を、インキュベーション事業で支援しています。インキュベーションとは、新しいビジネスの成長や事業化を促進することを指し、中小機構ではそのための施設を全国に設け、運営しています。

本事例集では、インキュベーション施設に入居する企業による2017年度の活動事例を掲載。

今回は、同事例集の中からピックアップした2事例を紹介します。
※本記事は、2018年12月21日時点の情報をもとに執筆・掲載しています。

事例紹介 1

医療機器製品、工業製品に革命を起こす東大発ベンチャー企業 【インテリジェント・サーフェス株式会社】

MPCポリマーの低コスト塗布技術
MPCポリマーの低コスト塗布技術
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「東大柏ベンチャープラザ」に入居するインテリジェント・サーフェス株式会社は、生体親和性の高いMPCポリマー材料およびコーティング技術の開発を行っています。

同社は、施設に入居する他の企業と連携や情報交換を行い、互いに切磋琢磨しながら事業を行っています。近隣に最高峰の研究機関を擁する立地のもと、ベンチャーキャピタルからの出資も受け、医療分野のみならず工業分野での応用も狙うベンチャー企業です。

さまざまなサポートで、研究者から経営者に

インテリジェント・サーフェス株式会社(千葉県柏市)は、生体親和性の高いMPCポリマー材料およびコーティング技術の開発を行っています。MPCポリマーは生体膜に近い構造のコーティング材料で、コンタクトレンズや人工臓器などに利用されている他、さまざまな特性を有することから汎用製品にも応用の場を広げている素材です。

MPCポリマー開発の発端は、約40年前、現東京医科歯科大学名誉教授の中林宣男先生の研究でした。同社の現代表取締役の切通義弘さんは、大学院で有機合成の研究をしていたころ中林先生と出会い、先生の門下生である東京大学マテリアル工学専攻の石原一彦教授のもとでMPCポリマーを使ったコンタクトレンズの研究に携わった経験があります。

切通さんは大学院修了後、国立研究開発法人産業技術研究所関西センターで、ポスドク(博士研究員)として生体膜の研究に従事しました。

ベンチャー企業で開発者として経験を積んだ後、再び石原教授の研究室でコンタクトレンズに関する研究の機会を得ました。そして研究室に在籍中の2013年12月、国立研究開発法人科学技術振興機構の「研究成果展開事業・大学発新産業創出プログラム」に応募して採択されたのです。

2016年3月に同事業の研究期間が終了したことに伴って会社を設立する運びとなり、「東大柏ベンチャープラザ」に入居しました。同施設は、中小機構が東京大学、千葉県、柏市と連携して運営する施設です。近隣に最高峰の研究機関を擁する立地のもと、常駐するインキュベーションマネージャー(以下「IM」という。)が入居企業や地元企業の課題解決をサポートしています。

切通さんは同施設について次のように語ります。

「ライフサイエンス系企業、ものづくり企業が入居し、入居企業同士の連携や情報交換も盛んで、お互いに切磋琢磨する環境があります。起業したての時には自前ですべてを整えることは大変で、さまざまなサポートや情報提供もあり、非常にありがたいです」

切通さんは2016年5月に研究者・研究スタッフとともに会社を設立しました。経営者は研究者とは違って苦労する毎日でしたが、株式会社日本政策金融公庫や銀行から資金調達ができたことで、医療関連の分野で事業化に向けて加速することが可能になったといいます。その勢いに乗り、2017年には国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の補助金に採択されるとともにベンチャーキャピタルからの出資を受け、さらに2018年には事業会社からの出資を受けるに至り、現在、数社の医療機器メーカーとの共同開発も始まっています。

「工業分野での応用も狙い、いくつかの共同研究がスタートしています。これまで大変苦しい時もありましたが、さまざまな方のサポートを受けて軌道に乗りつつあります」と、切通さんは語ります。

切通義弘社長(中央)と社員の皆さん
切通義弘社長(中央)と社員の皆さん

支援担当者のひとこと

東大柏ベンチャープラザ チーフIM 原田 博文さん
東大柏ベンチャープラザ
チーフIM 原田 博文さん

当社保有技術であるMPCポリマーは、その優れた生体適合性から医療分野での利用拡大が見込まれる他、親水性・防汚性・防曇性等の特性を活かしてメガネ、コンタクトレンズや住宅設備(水回り)など汎用工業製品への応用も見込める、きわめて将来性豊かな技術です。IM室では、この技術の応用分野の開拓や事業化に向けて、最大限のサポートをしてまいります。

事例紹介 2

音楽業界を活性化させる存在をめざすベンチャー企業 【株式会社クレオフーガ】

音素材の販売サイト「Audiostock」
音素材の販売サイト「Audiostock」

「岡山大インキュベータ」に入居する株式会社クレオフーガは、音楽に関わるあらゆる面で価値の提供をめざし、11万点以上の作品を登録する音素材の販売サイトの運営などを行っています。

学生時代に起業した西尾周一郎社長のもとで売上を拡大し、ベンチャーキャピタルからの出資などを受け成長を遂げつつあります。今後もコンテンツの強化をはじめ、さらなる成長をするための取組に意欲的な企業です。

大学キャンパス内の好立地で、成長をめざす

株式会社クレオフーガ(岡山県岡山市)は、代表取締役の西尾周一郎さんが学生時代に設立した企業。社名のクレオフーガは、Creativeのラテン語である「クレオ(Creo)」と「次世代の芸術(Future Generation Arts)」の頭文字を組み合わせた造語で、「新しい時代の芸術を創造していく」という想いが込められています。

西尾さんはパソコンが好きだったこともあり岡山大学工学部情報工学科に入学しましたが、エンジニアとして技術を追求するよりも、ITを活用して企画することやサイトを作ることに興味を感じるようになっていました。

西尾さんは、当時を次のように振り返ります。

「当時は20代の若い経営者がIT関連企業を起こして成功していた時期でもあり、私自身も起業をしようと考え、経済学部経営会計コースに編入しました。そして2007年、経済学部4回生の時に会社を設立しました」

当初は音楽コンテストをインターネット上で開催するサービスを立ち上げましたが、起業してから4、5年の間は食べていくのに精一杯で、受託開発で運転資金を確保していました。

2012年1月、西尾さんは「音楽を事業にするならば東京だ」と思い立ち、東京での活動をスタートしました。その中でベンチャーキャピタルから約1,000万円の出資を受けることができ、ようやく音楽サービスで生きていく流れができました。「岡山大インキュベータ」に入居したのもこの頃です。

岡山大インキュベータは、地域の大学・研究機関が保有する研究シーズを活用し、地元企業との連携により、新しいビジネスの創出・成長・発展を支援する地域の拠点をめざしている施設です。

「大学のキャンパス内に施設があり、学生にインターンやアルバイトに来てもらいやすい点や、大学の研究室とも交流しやすい環境にあるのが良い点です。また施設も綺麗で、会議室も予約をすれば自由に利用することができて設備の面でも充実しています」(西尾さん)

同社では、2013年からAudiostock(オーディオストック)というBGM・楽曲・効果音などの音素材を販売するサイトを立ち上げ、コンテストで蓄積した音楽などの販売を始めました。現在は全国8,800組以上のクリエイターによる音楽、効果音、ボイスなど、11万点以上の作品が登録・販売されています。1曲数千円でクオリティの高い音源を入手できる点が評価され、順調に事業を拡大しています。

「売上も拡大してきてはいますが、未だに達成感はなく今後もさらなる成長をするために取り組んでいきたいと考えています。2014年には広島ベンチャーキャピタルおよび中国銀行から出資をしていただきサービス開発の面で助かりましたが、今後はマーケティング活動の拡大のためにさらなる増資も計画しています」

音楽を聴いて楽しむ人、演奏したり作曲したりする人が、ともに楽しめるサービスを提供できる会社をめざしたい、と西尾さんは語ります。

西尾周一郎社長
西尾周一郎社長

支援担当者のひとこと

岡山大インキュベータ チーフIM 鈴木 幸次さん
岡山大インキュベータ
チーフIM 鈴木 幸次さん

岡山大インキュベータがオープンして10年、初めてIPO(新規株式公開)をめざすベンチャー企業が誕生し、たいへん嬉しいことです。中国経済産業局、岡山大学、岡山県、岡山市、その他の中小企業支援機関などの総力を結集して、IPOに必要な体制整備や資金調達、ノウハウの提供などの支援を岡山大インキュベータが中心となり取り組みます。

活用した支援施策

独立行政法人中小企業基盤整備機構のインキュベーション事業

同事業による支援のイメージ
同事業による支援のイメージ
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中小機構では、全国に29拠点のインキュベーション施設を構え、入居企業は約510社あります。IMが中心となり、全国・地域のネットワークを活かし、支援企業の事業化に向けて、事業提携先、金融機関、支援機関などへのさまざまなコーディネート(各種マッチング)支援を行っています。

中小機構「インキュベーション施設」のページはこちら

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Incubation Report Vol.9

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