巻頭特集|他社の成功に学ぶ! 事例でみる~公的機関の支援施策~ Vol.4|公的機関が発行している様々な「事例集」は、企業を成功に導く宝の山です。成長する企業の取組を参考にすることで、自社の経営に活かす術がきっと見つかるはず。経営を向上させるため先進的な取組を行う中小企業や、活用した支援施策などを紹介します。

Vol.4 知的財産権活用企業事例集2018(特許庁)

知的財産権活用企業事例集2018(特許庁)

特許権、意匠権、商標権などの知的財産権を取得することで市場を獲得・拡大した中小企業を紹介した事例集です。全国52の中小企業の事例を掲載し、各企業が何をきっかけにどう取り組み、それによってどのような成果を得たかをまとめています。

独立行政法人工業所有権情報・研修館(以下「INPIT」という。)が47都道府県に設置している「知財総合支援窓口」の概要とともに、ピックアップした2事例を紹介します。
※本記事は、2019年1月18日時点の情報をもとに執筆・掲載しています。

事例紹介 1

技術をブランド化し、特許とノウハウを使い分ける企業 【株式会社五合】

超親水性無機塗料「ゼロ・クリア」
超親水性無機塗料「ゼロ・クリア」

株式会社五合(愛知県春日井市)は、表面についた汚れを水だけで落とすことができる独自の無機塗料「ゼロ・クリア」の製造販売を主に行っており、建築資材や家電製品など、さまざまな製品への同塗料の展開を図っています。

同社では過去の苦い経験から特許の取得を重視しており、「知財総合支援窓口」などの専門家の助言を受けながら特許出願を行うとともに、塗料の製造工程などはノウハウとして流出を防いでいます。

大手に採用され、引き合いが増加

株式会社五合は、無機塗料や天井クレーンコントローラ安全システムの製造販売などを営む小規模事業者。同社は自社開発した製品の売り込みをした後に模倣品が出回った苦い経験があり、安定した収益を得るため特許の取得を重視しています。

知財活用のもう1つのきっかけは、水だけで汚れを落とす無機塗料との出会いでした。さまざまな塗装のノウハウや知見があり、塗装会社ともネットワークがある同社に、ある日「特殊な塗料を発明したが後継者がいない。事業を引き継いでくれないか」と新しい塗料の事業化について打診があったのです。

同社はその依頼主と特許の専用実施権の契約を結び、事業化に向け塗料および塗装の技術開発を開始しました。そして製品化された無機塗料は、油などの頑固な汚れを水だけで落とすことができる超親水性無機塗料となりました。優れたオンリーワンの技術ですが、その利点をユーザーに分かりやすく伝える方法に腐心していた時に、独立行政法人中小企業基盤整備機構のアドバイザーの助言で技術のブランディングに取り組み、「ゼロ・クリア」の商標権を取得しました。現在では、同社の主力事業となっています。

同社の知財業務は、同社代表取締役の小川宏二さんと研究開発担当課長が兼任で対応していて、「知財総合支援窓口」などの専門家の助言を受けながら、特許料等の減免制度や補助金を活用して特許出願をしています。

一方で、同塗料の製造工程などはノウハウとして流出を防ぎ、他社が模倣できないようにしています。

同塗料は大手電機メーカーの洗濯機に採用され、その商品カタログに「ゼロ・クリア」のロゴマークが記載されたことで急速に知名度が高まり、引き合いが相次ぎました。同塗料は汚れがつきやすい外壁などの建築資材で需要があり、現在はさまざまな製品で使用されています。海外からも商談があり、専門家の助言も得ながら、国内だけでなく海外での特許および商標権の取得を進めています。そして2018年には、中国に塗装事業所の合弁会社を設立するなど海外に進出しました。

同社事業のもう1つの柱として、工場内のクレーンの操作を容易かつ安全にするコントローラ装置「zen(禅)」を開発して特許権を取得しています。これまでに自動車部品メーカーや非鉄金属加工メーカーなどへの納入実績があります。

同社の小川社長は「知財から始まって事業を拡大させることができた。今後も知財を活用して、グローバルに成長していきたい」と語ります。

天井クレーンコントローラ安全システム「zen(禅)」
天井クレーンコントローラ安全システム「zen(禅)」
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事例紹介 2

特許取得をきっかけに、さらなる技術の権利化に意欲的な企業 【株式会社沖縄ウコン堂】

同社商品「発酵サトウキビファイバー」
同社商品「発酵サトウキビファイバー」

株式会社沖縄ウコン堂(沖縄県宜野湾市)は、県産ウコンを活用した健康食品などの開発に力を入れています。他社との差別化を図るため、ウコンの糖質を低減する技術を発明し、特許権を取得しました。権利化にあたっては「知財総合支援窓口」に相談し、専門家から具体的なアドバイスを得ました。

その他、外国出願を支援する補助金や無料の特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」といったさまざまな支援施策を活用し、効率的な研究開発を図っています。

特許や商標を商品PRとしても活用

株式会社沖縄ウコン堂は、県産素材を活用した健康食品などの製造・卸小売を行う中小企業。特に県産ウコンを活用した商品開発に力を入れており、他社のウコン関連商品との差別化を図るため、特許出願を意識した研究開発に取り組んでいます。

同社によるとウコン関連商品は「これまで、どこの企業も似たようなものを製造・販売していた」といいます。

同社では健康志向の高まりに着目し、デンプン質を多く含むウコンを使った健康食品でも、糖質を低減した商品の開発に取り組みました。その結果、「沖縄県産マンゴー果実酵母」を基にしてウコンの糖質を低減する技術を開発し、特許権を取得しました。

同社では商品開発部の社員が知財業務を兼任していますが、この研究開発の早い段階から、「知財総合支援窓口」に相談し、同窓口から派遣を受けた知財専門家に、特許権取得に向けた具体的なアドバイスを得ていました。早期から特許権の取得を目標にしていたため、「糖質を低減した健康食品の製造方法」に関する特許権を1年半という短期間で取得することができたのです。

さらに、この製造方法と商品は、補助金事業を活用して特許と商標を韓国、台湾、中国にも出願しました。他社製品との差別化や海外展開時の防御のため、外国出願も活用しています。

特許権の取得後、同社は知財の意識がより高まり、INPITが運営する無料の特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」を活用して先行技術調査を自ら実施しています。そして自社の研究開発と類似する先行技術を発見したら、顧問弁理士に詳しい調査を依頼することで、効率的な研究開発を図っています。

同社は大学や企業と産学連携による商品開発にも取り組んでおり、琉球大学と共同でサトウキビを使用した新たな食物繊維を開発したり、同じく琉球大学と県内企業2社との共同でウコンの糖質および鉄分を除去した商品の開発、臨床実験を行ったりしています。

特許権を取得した技術で製造する商品の1つ「琥金(クガニ)発酵ウコン粒」は、商標権も取得しました。同商品は、大手の卸・小売企業で採用されたことで販路拡大に成功、その後も需要が拡大しています。

健康食品は品質が重視されることから、同社では商品の成分表示欄の近くに特許権や商標権を取得している旨の表記をして製品の特長をPRしています。

琥金(クガニ)発酵ウコン粒
琥金(クガニ)発酵ウコン粒

活用した支援施策

知財総合支援窓口

同事業の支援の流れ
同事業の支援の流れ
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INPITが設置する「知財総合支援窓口」は、中小企業の皆さまの知的財産に関する悩みや相談を、アイデアレベルから事業展開までワンストップでサポートしてくれる無料の相談窓口です。

全国47都道府県の窓口にそれぞれ支援担当者を設置しており、その豊富な知識やノウハウをもとに、適切なアドバイスを行っています。

公的機関の歩き方Vol.11「知財総合支援窓口」のページはこちら

施策担当者のひとこと

特許庁 総務部企画調査課

現在、多くの中小企業・小規模事業者の皆さまが創意工夫を重ね、新技術を生み出し、知的財産として武器にすることで、市場を獲得・拡大し、世界を舞台に活躍しています。

本事例集では、そんな企業の先進的な事例を具体的に紹介しています。また、事例は分野別に整理し、都道府県別目次や知財活動を分類したインデックスを設け、ニーズに合った事例を検索しやすいように工夫しています。

さらに、全ての事例について「きっかけ」「取り組み」「成果」の3ステップでまとめ、各ステップのポイントを明示することで、内容を理解しやすく整理しています。

本事例集をぜひ、経営者や知的財産関係者の皆さまにご活用いただき、新たな取組に挑戦する際のヒントとしていただければ幸いです。

そして本事例集には、中小企業・小規模事業者の皆さまを対象としたさまざまな支援施策も掲載しておりますので、それらも機会を捉えてぜひご活用ください。

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