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「説明力」向上のコツ

説明のスタートは「私」を主語に

説明力の本質は「伝える」ではなく「伝わる」が基本
プレゼンテーションの講師を務めて10年たった頃、ある受講者に「プレゼンのスキルを習っても、実はその機会はあまりないんです」と言われました。大勢を前にプレゼンを行う人は少数派で、1人~数人を前に「説明」する人は数多くいます。そこで、「説明力」を上げるセミナーをはじめたところ好評で、今も継続しています。その要点を紹介します。

はじめに「説明力とは何か?」を解説します。説明力とは「伝える力」ではなく「伝わる力」です。伝えることは簡単です。話せばよいのですから。しかし、「伝わる」ことは難しいもの。相手に確実に届かなくてはならないのですから。

ビジネスシーンでは「伝えたけど伝わっていない」ということがしばしば起こります。そして、それがトラブルのタネになり、ビジネスパーソンを悩ませます。

伝わるためには、どうしたらよいのでしょうか。そのためには「自分」「内容」「相手」の三つの要素を意識する必要があります。「自分」が発信源として明確で、「内容」がよく整理されていて、「相手」に応じて表現がチューニングできている、という三つのことが揃ってはじめて「伝わった」と言える状況が実現できます。

説明力を高めるためのポイントも、自分、内容、相手の三つです。この三つのポイントは、これからも繰り返し出てきます。この中で、「自分」の重要性については、疑問に思う人がいるかもしれません。

説明に関して「自分のことより、相手の立場に立って」ということがよく言われますが、決して「自分」はどうでもいいわけではありません。むしろ、説明のスタート時点では「自分」がとても重要なのです。

例えば、他部署の人々に説明をする際「一応、伝えておかなければならないことがあるのでお話しします」とはじめたら、相手は真剣に聞いてくれないでしょう。それは、話の中に「自分」がいないからです。話の中に「自分」を登場させて、「私は大切なことだと思うのでお話しします」とはじめたら真剣に聞いてもらえます。相手に真剣に聞いてもらうには、自分を単なる中継点ではなく「新たな発信源」と位置付ける必要があるのです。

そのことを簡単に実現する方法があります。それは、「私」を主語に話しはじめることです。「私は重要だと思うので」「私は推進したいので」「私は協力してほしいので」というように、内容と自分を一体化させてスタートします。これが、説明力強化の一歩目です。今日から、早速「説明のスタートは『私』から」をやってみて下さい。

今回は「自分」について述べましたが、次回以降、さらに説明力を上げるため「内容」「相手」について解説します。

相手に正しく伝わらない原因
説明しても伝わらないのは、自分と相手の間に障害があるからです。今回は、代表的な三つの障害を取り上げ、その除去策を考えます。

障害Ⅰ 自分が伝えたいことと相手が聞きたいことの相違

相手は、聞きたいことが聞けないとイライラします。そして、説明される内容にも批判的になります。
逆に、自分の聞きたいことが次々に聞けるような説明に対しては好意的になります。だから、相手が聞きたいことをイメージし、それを順に話せばよいのです。

しかし、それをやっている人は少ないもの。例えば、事務帳票のフォーマットを変えるという説明を他部署にするとします。多くの場合、説明する人は、自部門の事情など、伝えたいことから話をはじめます。でも、相手が聞きたいのは、そこではありません。

聞きたいのは、①何の話なのか、②それを聞いてどうすればいいのか、③一言で言うと何がしたいのか、④具体的にはどうするのか(5W1H系の話)、といったことです。

説明する際は、この順を意識すると、相手の聞きたいことを聞きたい順に話せるようになります。この中で特に重要なものが②です。説明を聞いた後に、意見を言えばいいのか、承認するのか、協力するのか、それによって聞き方が全く違ってきます。説明の詳細に入る前に「聞いてどうすればよいのか」を提示し、相手に聞くスタンスを作らせることが大切です。

障害Ⅱ 客観的に話すことへのこだわり

客観的なことは悪いことではありませんが、すべてが客観的な説明だと、冷たく、他人事に感じられてしまうことがあります。だから、時々説明の中に自分を登場させたほうがよいのです。例えば、先ほどの事務帳票のフォーマット変更の例だと、「そちらの部門では、転記作業が多く、『私』は大変だと思うのです」というようにします。こうすることで、説明に血が通い、相手を納得させやすくなります。

障害Ⅲ よいことは相手に自然に受け入れられるという誤解

商品を店頭で説明する販売員がいます。例えば、スマートフォンを販売する人をイメージして下さい。
売れない販売員の典型は、相手が誰であっても同じセリフで、機種のメリットを延々と説明する人です。よいことは、相手に自然に受け入れられると誤解しているのです。

一方、売れる販売員は、はじめに日常的なスマートフォンの使い方や、今後どんな使い方をしたいかを聞きます。そして、伝える特長を2~3点に絞ります。相手にとって価値のあることしか伝えないのです。
商品であれ、企画であれ、一般的なメリットをたくさん並べ立てるのは逆効果です。相手にとって価値のあることに絞って説明したほうがよいということです。

このように、相手との間にある障害を除去すれば、説明は伝わりやすくなります。

説明は「結論・理由・データ」で

説明をロジカルにするシンプルな形
今回は、説明の3大ポイント「自分」、「相手」、「内容」の中の「内容」を取り上げ、その整理方法を解説します。

私のセミナーに来る受講者から「もっと論理的で説得力のある説明ができるようになりたい」という相談をよく受けます。
そんな時にお勧めしているのが、「結論」「理由」「データ」の3点セットで話すことです。

論理的とは、話の筋道が通っている状態を指します。具体的には、明確な結論が理由とともに示され、理由に対してきちんとした裏付けのデータが添えられている状態です。

例えば、上司から「当社の電話サポートの応対クレーム増加の原因を調査してほしい」という依頼を受けたとします。>
上司に調査結果を説明する際、「結論」「理由」「データ」の枠組みを使って話すと次のようになります。

「電話サポートの応対クレーム増加の原因調査の件、結果をご説明します。結論から申しますと、原因は担当者の技術力不足だと考えます(結論)。技術的な知識が少ないため、回答をお待たせし、それがクレームにつながっているケースが大半だからです(理由)。実際に、クレームのケースを分析したところ、8割のクレームは、回答時間に関するもので、そのうち9割は技術知識があれば、すぐに回答できるものでした(データ)」。

このように話すと、課題に対し、簡潔で的確な説明をすることができます。
このケースで、上司が真っ先に聞きたいのは「クレームの原因は何か?」です。それを最初に話し、当然生じるであろう「なぜ、そう言えるのか?」という問いに対し理由を述べ、「本当にそうなのか?」という疑問に、裏付けデータで応じています。

これは、前回述べた「相手の聞きたいことを、聞きたい順に話す」という説明の原則にもつながります。この「結論」「理由」「データ」で話す方法は「三角ロジック」と呼ばれているもので、説明、報告、プレゼンテーション、メール、論文に至るまで様々な場面で活用できます。

説明の上手な人は、本能的にこういう話し方をするのですが、普通の人は、どれかが不足しがちです。

例えば、結論が不足しがちな人は、上司から「で?」「だから?」「君はどうしたいの?」と聞かれるでしょう。理由が不足しがちな人は「話が飛んでいる」と言われ、データが不足しがちな人は「それは君が思っているだけだろう」「もっと客観的に説明してくれ」と言われてしまいます。

読者の皆様に心当たりはありませんか。もし、「結論」「理由」「データ」のうち、不足しがちなものを見つけられたら、説明を劇的に改善できるチャンスです。足りないものを補えば、三角ロジックが完成し、説明、プレゼンなど様々な場面で伝わるようになるからです。三角ロジックは、説明をはじめ、各種のビジネス会話改善のマスターキーとなるものです。
是非活用して下さい。

説明を効果的にする話し方とは

目を見て間を使う
「自分」から「相手」に「内容」を届ける技術をデリバリースキルと呼びます。これは、主に話し方のことを指します。説明の上手な人は、よい話し方をしています。その一方で、内容はよいのに、話し方で損をしてしまう人もいます。私は8,000人のビジネスパーソンの話し方を指導してきました。その中で、この3点を押さえるだけで、説明が効果的になるというポイントがわかりました。以下、ご紹介します。

<ポイントⅠ>目を見て話す
単純なことですが、これが一番大切です。目を見て話さないと聞き手に言葉が入っていきません。原稿を読んでしまえば、当然それはできなくなります。とはいえ、説明内容のすべてを暗記して話すのは難しいもの。時々資料をチラリと見て、聞き手に視線を戻す、というようにするのが現実的です。割合としては、7割は聞き手の目を見て話す意識でいて下さい。

なかでも、数字や固有名詞、強調したいキーワードは、聞き手の目を見て話す必要があります。そうすることで、聞き手は「この説明者は内容を熟知している」と信頼してくれるようになるからです。

<ポイントⅡ>資料の棒読みを避ける
資料に書かれた文字をそのまま読み上げれば、間違いなく説明の評価は下がります。聞き手にとって、書かれていることを読み上げられるのは時間のムダと感じるからです。

ただ、社内規程などある程度、原文に忠実に伝えなくてはならないこともあります。これについては、読む際にアレンジを加えることが有効です。例えば、「交通費精算は原則として当月内に行うこととする」という規程文があったとします。これを読む際は、「交通費精算は原則、当月内にする」と読み替えるのです。わずかなことですが、読み上げ感が薄まり、聞き手の印象は大きく変わります。

<ポイントⅢ>間を入れる
よい話し方をする人は、間をうまく使います。例えば「今回のシステム変更で最も重要なことは(間)締日が変わることです」というように。間には、次の言葉に注意を引く効果、聞き手に考える時間を与える効果があります。

しかし、多くの話し手は間を使うべきところに「えー、今回のシステム変更で最も重要なことは、えー、締日が変わるということでして、えー」と間投詞を入れてしまいます。本人も言いたくて言っているわけではありません。「えー」を入れてしまうのは、シーンとした瞬間が怖いからです。この恐怖心を克服するために、間に慣れていきます。

間をとるのに適した場面は二つあります。一つは、「重要なことを言う前」。例えば「大切なことは」という疑問形の後に間を入れます。二つ目は「問いかけた後」。聞き手に考えさせる時間を与えます。このような場面で意図的に間を作ることで、間に慣れ、自然に「えー」が消えます。

この3点は、一度身に付けてしまえば、どんな説明でも生かせますので、是非やってみて下さい。

説明に相手視点の表現を加える

相手を主語に話す
連載の第1回で、説明のスタートは「私」からという話をしました。今回は、その後の説明の中に「相手」を登場させることの重要性について話をします。

例えば、あなたが取引先から「書類を今日発送します」と言われたとします。このセリフの隠れ主語は「私」です。聞き手であるあなたは「ということは、遅くとも明後日には受け取れるのかな」と、心の中で相手の言葉を翻訳するでしょう。この翻訳作業は聞き手の負担になります。

同じ場面で、取引先から「書類を今日発送しますので、(お客様は)遅くとも明後日にご覧いただけます」と言われたら、翻訳する必要がありません。聞き手は負担なく受け取ることができ、その分、伝達効率がよくなるのです。そのためには、相手の視点で表現する必要があります。具体的には、「私」を主語に話した後に「ので、あなたは」、「ので、〇〇さん(説明相手の名前)は」、「ので、お客様は」というように、相手を主語にした表現を加えます。

例えば「私がすべて準備しますので、山田さんは手ぶらで来ても大丈夫ですよ」というように。相手の立場に立って話すというのは、こういうことなのです。
また、ビジネス会話では「私」を「当社」「弊社」に置き換え、「あなた」を「御社」に置き換えても同様の効果を生み出せます。

例えば、「当社は24時間の電話相談窓口を設けています」に「ので、御社は時間を気にせずお問い合わせできます」を加えます。このように、相手を主語にすると、伝達効率がよくなるだけでなく、価値が伝わりやすくなります。

「当社は24時間の電話相談窓口を設けています」だけで終わってしまったら、価値が十分に伝わりません。相手は「で?」、「だから?」と言いたくなるでしょう。相手に価値が伝わるようにしたいなら、相手を主語に話すべきです。

営業の方で、カタログに書いてあることをそのまま読み上げる人がいます。例えば「このプリンターは、A3サイズがプリントできるものの中で最小です」と、話を切ってしまいます。この話は「弊社は小さなプリンターを作りました」としか言っていないのと同じです。ここで終わっては価値が相手に届きません。

そこに、「ので、A3プリントをよく使う御社は、オフィススペースを効率的に使えます」と加えることで相手に価値が届きます。説得したいなら、相手を主語にして話す必要があるのです。相手を主語にして話す重要性を理解していただけたと思いますが、ここで気をつけるべきことがあります。いきなり相手を主語に話しはじめても、意味は通じないのです。

以前に挙げた例で「(私は)書類を今日発送しますので、(お客様は)遅くとも明後日に、ご覧いただけます」というものがありました。(お客様は)以降の後半部分だけでは何の話かわかりません。
説明の基本戦略は「『私』からはじめて、『あなた』と続ける」ということ。是非やってみて下さい。

タイプ別の説明力向上策の要点

4つの人材タイプで考える
人には話し方をはじめとするコミュニケーションのクセがあります。自分のクセを知れば、これまで紹介してきた説明のセオリーをよりよく活用できます。

今回は、説明者を4つのタイプに分け、それぞれの強みに加え、弱みと対策を解説します。また、後半では、相手のタイプにマッチした効果的な説明の仕方も紹介します。タイプ分類については、「ソーシャルスタイル理論」を簡略化したものを使います。

以下、説明者のタイプ別に傾向と対策を記します。

タイプ①直感と行動の人
考えるより気持ちが優先、パっと決めてパっと動くタイプ。説明はシンプルでわかりやすい。難点は、話が飛ぶこと、客観性に欠けるところ。より説得力を増すには、結論、理由、データの順で話すとよい。

タイプ②成果と効率の人
目的志向で無駄が嫌い、ものごとを合理的に進めようとするタイプ。説明は簡潔で無駄がない。難点は相手への配慮が不足がちになること。言っていることは正しいが、バッサリと身も蓋もない言い方をしがち。もともと説得力はあるので、相手の視点で話すなどの配慮をするとよい。

タイプ③協調的ないい人
周囲の人々とうまくやっていくことを重視する協調性の高いタイプ。説明は、相手に配慮しながら丁寧にする。難点は、配慮を重んじるあまり、本人の意見がわかりにくくなること。改善するためには、「私はこう思います」というように、「私」を主語に話すとよい。

タイプ④慎重に考える人
日常的に考えている時間が長く、分析的なタイプ。説明は客観的で、数値データなどの裏付けをきちんと用意する。難点は、説明の量が多くなること、前提から話すため、話が長くなり、最後まで聞かないと結論がわからないこと。改善策は「結論から話す」こと。「結論から言うと」というように話しはじめるとよい。

次に相手タイプに応じた説明の仕方を挙げます。

タイプ①直感と行動の人 → 一言で話すのがポイント。資料はグラフ1枚、写真1枚などシンプルに。
タイプ②成果と効率の人 → なんのための説明なのか、目的を明示し、単刀直入に結論から事実を中心に話す。
タイプ③協調的ないい人 → ソフトに丁寧に説明する。説明に不満があっても言わないので、時々問いかけて確かめる。
タイプ④慎重に考える人 → データを示し客観的に話す。腹に落とすのに時間がかかるので、少しゆっくり話す。

特に、自分とタイプ的に正反対の相手には注意してください。正反対の組み合わせは、①の〔直感と行動の人〕と④の〔慎重に考える人〕、②の〔成果と効率の人〕と③の〔協調的ないい人〕です。正反対のタイプに対しては、自分の感覚で説明をすると、相手の好みにあわなくなります。タイプに応じた説明の仕方を実践するとよいでしょう。

各回で解説してきた説明のセオリーに、今回のタイプ別のチューニングを加えれば、説明力はますます向上します。

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