ミラサポ 未来の企業★応援サイト

アワード受賞企業に学ぼう!リーディング企業ピックアップ Vol.12

受賞名

会社名

技術革新や経営革新を行い、社会に影響を与えている中小企業として賞を受賞している優良企業の中から、注目企業をピックアップ。今回は、「第3回日本ベンチャー大賞 経済産業大臣賞 女性起業家賞」を受賞した「株式会社ナノエッグ」をご紹介します。薬剤の成分を必要な部位に効果的に作用させるDDS(ドラッグデリバリーシステム)の技術を武器に、スキンケア化粧品の開発に乗り出して成功、将来的には医薬品分野への本格的な進出を狙う同社の取り組みを紹介します。

今回の注目企業はこちら

株式会社ナノエッグ

  • ■所在地:東京都港区赤坂7-1-15 アトム青山タワー5階
  • ■資本金:1億3,735万円
  • ■従業員数:25人(2018年1月現在。パート含む)

受賞ヒストリー

  • JAPAN Venture Awards 2012 中小企業長官賞
  • 第26回中小企業優秀新技術・新製品賞 一般部門優秀賞
  • 第3回日本ベンチャー大賞 経済産業大臣賞 女性起業家賞

企業概要

聖マリアンナ医科大学発ベンチャーとして2006年に設立した株式会社ナノエッグは、自社特許技術を用いて、スキンケアやヘアケア化粧品を開発、販売し、併せて医療分野において創薬研究をしている企業。主力商品の「豊麗(ほうれい)」シリーズは、2017年11月時点で美容液単体でも販売実績160万本を突破しているほか、大手化粧品メーカーや医療機関などへ化粧品などの原料販売をしています。

独自のナノカプセル化技術が強み

ナノエッグのスキンケア化粧品は、「皮膚から薬剤を必要な部位に浸透させる技術」の研究から生まれました。DDS(ドラッグデリバリーシステム、薬物送達システム)とよばれる技術です。

薬剤を体内に入れる方法には「注射」「経口投与」そして「皮膚からの浸透」の3つがありますが、このうち「皮膚からの浸透」は、異物の体内侵入を防御するバリア機能が働くため最も難しく、必要とする患部にうまく到達させることができません。

同社の商品の強みは、同社の社名でもある「ナノエッグ」とよぶナノカプセル化技術にあります。薬用成分の包接濃度が99%以上と高いうえ、皮膚への親和性にも秀でています。この特性により、薬剤を素早く皮膚角質内に浸透させることができ、いったん皮膚に入ると自ら深部まで拡散していくのです。

同社のカプセルのサイズは、大きいもので十数ナノメートル(ナノは10億分の1)、小さいものでは数ナノメートルです。他社が一般的に使うナノカプセルは100~200ナノメートルなので、ナノエッグがいかに微細であるかがおわかりいただけるでしょう。

2000年代初め、聖マリアンナ医科大学(神奈川県川崎市)に研究者として在籍していた、現社長の山口葉子さんたちが基礎研究によってそれを発見し、2006年、製剤化することに成功しました。

独自のナノカプセル化技術

独自のナノカプセル化技術

研究開発の公的助成金を受けたのが起業のきっかけに

研究成果を実用化し、世の中に役立てるにはどんな方法があるのか。山口さんがそんな想念をめぐらせていたちょうどそのとき、科学技術振興機構(以下「JST」という。)による「平成15年度プレベンチャー事業」という助成事業があり、応募しました。そして、「皮膚再生のためのレチノイン酸ナノ粒子」の研究テーマが採択となったのです。

助成金は1チーム当たり3年間で数億円と高額なもの。その研究費を投じて研究を進め、3年以内に研究成果の実用化のため起業をめざすという制度です。

「多くの人が応募するので、書類選考を通るのさえ大変といわれていた助成制度ですが、運よく最終の面接選考にも通ることができました」と、山口社長は当時を回想します。

JSTから助成金を受けたのは2003年9月。そして丸3年の期限を待たず、2006年4月、株式会社ナノエッグを設立しました。

ナノカプセル化技術はもともと医薬品のために作った技術でしたが、医薬品の上市には膨大な研究費用や期間が掛かります。そこで、まずは研究成果をスキンケア化粧品に活かそうと考えました。独自技術を活かして営業活動を行い、設立から7カ月後の2006年11月には、大手エステ会社への原料販売を開始しました。

研究開発部門では山口社長のほか9名の研究員が日夜、商品開発を行う

研究開発部門では山口社長のほか9名の
研究員が日夜、商品開発を行う

多額の債務超過からの社長復帰

順調なスタートを切ったかに見えたナノエッグですが、一般的に、研究者が研究を続けながら会社経営をするのは不可能に近いと言われます。周囲からは、経営者を他所から探してくるよう促されます。

その結果、山口さんは1年半で社長を退いて研究に専念。後任として社長に就任したのは、MBAを取得し、ビジネス経験を積んだ文字通り「経営のプロ」でした。

ところが、その後の経営はなかなか軌道に乗らず、対策として盛んに商品広告を出し、さらに人を雇ったことで販売管理費がかさみます。その結果損失が拡大、ついには数千万円の債務超過となり、すぐにでも倒産しておかしくない状況でした。

「ビジネスや経営の知識で会社がうまく経営できるかというと、そうではないんですね。きちんとしたシステムができあがっている会社なら、それも可能かもしれません。でも、ゼロからスタートするベンチャー企業の経営には、教科書の知識はなかなか役に立たないということを痛感しました。そのとき私は腹を括りました。数億円もの負債を抱え、もはや倒産目前。それを立て直すのは会社を作った自分の責任であると考えました」(山口社長)

そして山口さんは社長に復帰しました。マイナスからの再スタートになってしまいましたが、設立者であること、また20人を超える従業員を抱えていたことによる責任感から、もう一度チャレンジすることにしたのです。

山口葉子社長

山口葉子社長

「豊麗」シリーズが消費者の支持を得、起死回生

当時の山口社長は、まだ「経営の素人」。経営指南書を読みあさり、そして考えました。「人は貧乏になったとき、何をすればいいのだろう。結局、節約するしかないんじゃないか」

こうして徹底した経費削減に乗り出します。2011年4月、まずは希望退職者を募り、人員を削減。「人員削減は私のこれまでの人生で最大の痛恨事です」と山口社長は語ります。さらには事務用品の経費を削り、商品広告の出稿も地域や対象を限定したフリーペーパーのみに絞りました。

この再建時、後年の同社を支えるヒット商品が誕生します。エイジングケア化粧品の「豊麗」シリーズです。もしこの新商品が失敗していたら完全に息の根が止まっていましたが、DDS技術を活かしたこの商品が消費者の支持を得て起死回生となりました。

半年後の9月には、早くも営業黒字に転じます。その後も事業は安定拡大を続け、2年後には債務超過も解消。

その後、ベンチャーキャピタルなどからの増資を受け、現在の資本金は1億3,735万円となっています。

現在の売上の多くは「豊麗」シリーズが占め、次いでヘアケアの「KIRARI(キラリ)」シリーズ、薬用育毛剤の「ふわり」、美白用スキンケアの「シロエホワイト」シリーズが続きます。

2011年以降の3年間は、売上目標である年率25%成長を続けたものの、その後スローダウンし、現在は同15%前後で推移。「もう少し加速しなければ」というのが山口社長の考えです。

化粧品のベンチャーでよくいわれるのは、いわゆる年商10億円の壁と、20億円の壁です。3年ほど前に10億円の壁を突破し、前期(2016年度)には約17億円に押し上げたものの、今度は20億円の壁が立ちはだかっています。「当期はなんとか20億円の壁を越えたい」(山口社長)と気を引き締めています。

販売方式は、電話とWebサイトのみによる通信販売を貫いています。販売経費のかさむ自社店舗の設置や、販促要求の高いドラッグストアなどへの卸売は行っていません。

薬事法上、化粧品は効能を謳うことができませんが、消費者からは好ましい反響が寄せられており、それが販売拡大につながっていくことが期待されます。

ナノエッグの主力商品
ナノエッグの主力商品

ナノエッグの主力商品

商品の使用イメージ(写真は薬用育毛剤「ふわり」)

商品の使用イメージ
(写真は薬用育毛剤「ふわり」)

医薬品分野への参入を視野に

今後の売上高目標は、5年後の100億円達成です。現在20億円にも達していないのに、あまりに期待先行でないか、と思われる向きがあるかもしれません。でも、山口社長はこう説明します。

「狙うのは、医薬品業界です。5年後の化粧品部門の売上見込みは30億円。あとの70億円は医薬品事業で達成したいと考えています。」

もともとDDS技術を活かした医薬品の事業化をめざして起業した会社。化粧品部門で成功を収めましたが、社内に研究部門を置いて、今も医薬品の研究開発を続けています。

「最初のうちはいろいろな領域に手を広げていましたが、近年は難治性皮膚疾患にターゲットを絞って研究を進めています。その中でも、アトピー性皮膚炎の研究に現在、取り組んでいます」(山口社長)

アトピー性皮膚炎の患者数は、国民の1割にも及ぶといわれます。しかし未だ有効な治療薬は開発されないままです。

「なぜアトピー性皮膚炎になるのか。それを解明しないと、有効な治療薬も開発できません。会社には、薬学や医学だけでなく物理学、生物学、獣医学など、様々な分野の研究者がいます。多分野の目で問題解決に取り組むので、他の製薬会社とは違った視点で本質に迫ることが可能になります。それが私たちの強みなのです」(同)

現在、アトピー性皮膚炎の研究成果が出てきており、そう遠くない将来に研究成果を世に出したい、と山口さんは言います。

さらにその先の将来には、「針を使わない薬物投与」をめざすといいます。アフリカ、東南アジアを始めとする開発途上国では、注射針が感染症を蔓延させる1つの原因となっています。皮膚からの薬剤投与が普及し、多くの子どもたちの尊い生命を救いたい――。

山口社長の夢が広がっています。

山口社長(前列中央)と研究員の皆さん

山口社長(前列中央)と研究員の皆さん

研究所が入居する、川崎市産業振興財団 ナノ医療イノベーションセンター

研究所が入居する、川崎市産業振興財団
ナノ医療イノベーションセンター

いかがでしょうか?株式会社ナノエッグは、特許に裏打ちされた独自技術を武器にすることで、自社製品の販売拡大と大手メーカーなどへの原料販売を可能にしています。また、設立者である山口社長が持つ経営と研究の双方での強いリーダーシップが、経営難からの早期回復を実現しました。厳しい状況でも責任感を持ち、諦めずに経営を続けたことが、売上伸長に寄与したのです。

今回取り上げた賞はこちら

日本ベンチャー大賞

若者などのロールモデルとなるような、インパクトのある新事業を創出した起業家やベンチャー企業を表彰し称える制度です。起業を志す人々や社会に対し、積極的に挑戦することの重要性や起業家一般の社会的な評価を浸透させ、もって社会全体の起業に対する意識の高揚を図ることを目的としています。

技術革新や経営革新を行い、社会に影響を与えている中小企業が全国に数多く存在しています。
ミラサポでは、表彰された優良企業をご紹介していますので、みなさまの経営の参考事例としてご覧ください。

一覧を見る




すべての特集を見る