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アワード受賞企業に学ぼう!リーディング企業ピックアップ Vol.13

受賞名

会社名

技術革新や経営革新を行い、社会に影響を与えている中小企業として賞を受賞している優良企業の中から、注目企業をピックアップ。今回は、「第4回ものづくり日本大賞・内閣総理大臣賞」を受賞した「齋栄織物株式会社」をご紹介します。海外製品に押されがちな日本の繊維産業の中で、世界一薄い絹織物を開発し、国内外から注目される企業の取り組みを紹介します。

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齋栄織物株式会社

  • ■所在地:福島県伊達郡川俣町鶴沢馬場6-1
  • ■資本金:1,600万円
  • ■従業員数:19人

受賞ヒストリー

  • 第4回ものづくり日本大賞 内閣総理大臣賞
  • 2012年度グッドデザイン賞
  • 国際コンペ「A' Design Award(エーダッシュデザインアワード)2017」(イタリア) 銀賞

企業概要

齋栄織物株式会社は、古くから養蚕と機織が盛んな福島県伊達郡川俣町に1952年に創業し、同地の特産品「川俣シルク」とよばれる絹織物を製造してきました。当初はスカーフや和装裏地用の生地を生産していましたが、同社は生糸を前もって色染めし、色の異なる経糸(たていと)と緯糸(よこいと)で織り上げることで特徴的な色合いが生まれる「先染織物(さきぞめおりもの)」を得意としています。近年では工業用途の製品売上を伸長させ、海外への販路開拓にも積極的な企業です。

東洋一と謳われた川俣シルク製品を製造

かつて東洋一と称された絹織物「川俣シルク」は、1,400年間の歴史を持つと言われ、福島県伊達郡川俣町は国内でも有数の絹織物の産地です。国内の絹織物の産地は、消費量の順に京丹後、福井、金沢と続きますが、川俣町は全国で7番目の消費量を誇ります。
齋栄織物は、1952年に同地に創業。スカーフや和装裏地に使われるシルク製品を得意としてきました。同社は月産約5万mと全国的にも上位の生産量を誇りますが、京都などの産地と比べると付加価値額がそれほど高くないため、売上高は1億8,000万円から2億円で推移しています。

「全国的にスカーフがブームとなり、1973年ごろが売上のピークでした。今とは単価が違いますが、当時の売上高は6億円。その後、女性の社会進出が進み、女性のファッションは和装から洋装へ、スカートからパンツスタイルへと変わったことで、シルク製品の需要は減少していきました」と同社社長の齋藤泰行さんは語ります。
最盛期には同地に220社ものシルク製品関連業者がありましたが、現在は同社を含めて24社を残すのみとなりました。

創業当時の工場

創業当時の工場

新規市場の開拓と窮境

シルク製品の需要減退という窮境を打破するため、同社は生糸を前もって糸染めし、色の異なる経糸(たていと)と緯糸(よこいと)で織り上げることで特徴的な色合いが生まれる「先染織物(さきぞめおりもの)」の生産に着手しました。とても技術力の要求される工法ですが、先染織物の生地は、光沢のある多彩な色を表現することができ、ドレスなどで利用されるようになりました。
それにより同社は売上を回復し、タキシードやカクテルドレスなどにも用いられることで、米国を中心に海外にも販路を伸ばしました。
順調に海外売上を伸ばしていた同社ですが、2008年のリーマンショックにより、一時は「1ドル=80円」まで円高ドル安が進行しました。これによって、米国のブライダル市場などは、ほとんどが生地の調達をインドや韓国など安価な生産国に切り替えてしまい、同社は輸出がほとんど出来ない状態に追い込まれました。売上高は、1億2,000万円へと落ち込みます。

「その後、為替レートが戻ったからといって、すでに別の調達ルートができてしまった取引先は、もう戻ってくることはありませんでした。その時期から、米国中心だった海外販路を欧州にも伸ばしていくことにしました」(齋藤社長)
シルクは、服飾用の繊維として優れているだけでなく、ナイロンやポリエステルといった化学繊維と比較して耐熱性に優れている、という特徴があります。これを利用し、空気清浄機などのフィルターや、海底ケーブルや光ファイバーの接合部分のテープなどとしても提供を始めました。
現在の売上高は、工業用途が6割超を占めるまで成長しました。工業用途の場合、年間継続して受注が見込まれるというメリットもあります。

齋藤泰行社長

齋藤泰行社長

先染織物による製品は、ドレスなどにも使用される

先染織物による製品は、
ドレスなどにも使用される

後継者に託す世界一の商品

リーマンショックによる影響があった2008年頃、特別な生糸と出会います。ある製糸メーカーが医療用の縫合糸として開発した、8デニール(日本人の平均的な髪の毛の太さが約50デニール)の極細の糸を手に入れたのです。これは「三眠蚕(さんみんさん)」と呼ばれる、1日の睡眠回数を4回から3回に減らした蚕が吐く細い糸を使用することによって作られています。
これを何かに利用できないかと思いを巡らせていたとき、経済産業省の繊維課(現在:生活製品課)の職員から、中小企業地域資源活用促進法を活用した補助金事業の案内を受けました。これは、地域資源を活用した中小企業の新商品・新サービス開発、販路開拓等を支援するものです。
初めは新商品開発に二の足を踏んでいた齋藤社長でしたが、当時のことをこう振り返ります。
「自分の時代で会社を終えるのであれば現状のままでも良いと思いましたが、当時は人に自負できるような製品がありませんでした。将来、事業を後継者に渡すときのことを考えると、そのままではいけないと思いました」(齋藤社長)
息子である齋藤栄太さん(現・同社常務取締役)は、当時まだ大学生でしたが、いずれ経営を継いでもいいと言っていました。そこで、将来の事業承継に向けて、新商品開発に取り組むことにしたのです。
やがて事業計画は認定を受け、極細の糸を使用して世界一薄い絹織物の開発に着手しました。3年間に及ぶ試行錯誤の結果、2011年9月には「世界一薄く軽いシルク製品」を完成。これまでにない薄さと滑らかな肌触りから、「フェアリー・フェザー(妖精の羽)」と名づけました。
「ネーミングが一番大切だと思っています。この名称は、一般公募で得られた意見を参考にしながら検討し、商標を取得しました」(齋藤社長)

世界一薄い絹織物「フェアリー・フェザー」

世界一薄い絹織物「フェアリー・フェザー」

ふたたび海外へ

開発した生地は、もともと親交のあったファッションデザイナーの桂由美さんにウェディングドレスとしてデザインしてもらい、「世界一軽いドレス」として話題になりました。
「ウェディングドレスは重いもの、という常識を打ち破り、フェアリー・フェザーを使った重さ600gのウェディングドレスを実現しました。桂さんの発信力のおかげで、世間の反響がより大きなものになったのです」(齋藤社長)
これを携えて欧州の展示会に出展し、同生地はルイ・ヴィトンやアルマーニなどを始めとする有名ブランドに採用されます。これを足がかりに、同社は海外展開により一層力を入れるようになりました。
現在、売上高ベースでは、約60%が海外向けの取引。米国向けは工業用途の資材が中心で、イタリアやフランスでは、同社の生地が有名ブランドのスカーフやコートなどに使用されています。
また、2012年に「第4回ものづくり日本大賞・内閣総理大臣賞」と「グッドデザイン賞」をいずれも受賞したことで、様々な業種からも同社へサンプル製作の要請があるといいます。
「お酒や醤油のフィルターなどにシルク製品を使うことで『絹絞り』『シルクプロテイン入り』などのネーミングで売られているようです。顧客は我々では考えられないアイディアで商品開発をしていて、勉強になることも多いです」(齋藤社長)

国内外の展示会に積極的に出典

国内外の展示会に積極的に出典

桂由美さんデザインのウェディングドレス

桂由美さんデザインのウェディングドレス

さらなる商品開発にも意欲的

同社は、現在も商品開発に意欲的に取り組んでいます。
シルク製品は、一般に「家庭で洗えない」「伸縮性がない」という取り扱いづらさがあります。これを解消するため、家庭で洗えて、シワになりにくく、ストレッチ性がある、シルク100%の商品開発を今まさに行っています。現在、地域の公設試験研究機関と共同研究に取り組んでいるところで、2020年3月の商品化を目指しています。
さらに、東北大学と共同でシルクの肌触りのよさと導電性に優れた特性を活用した研究開発にも取り組んでいます。主に乳幼児を対象とした肌着を開発することで、微弱電流により発汗や体温などを検知し、健康状態を管理できるものとなります。
「『シルク・イノベーション』を経営理念としています。シルクはもともと衣料としての利用がメインでしたが、今では工業資材や医療品にも使われています。『シルクで世界を変える』ことをコンセプトに、引き続き挑戦していきます」(齋藤社長)

必要な本数の糸を、長さや張力を揃えて経糸とする整経(せいけい)作業

必要な本数の糸を、長さや張力を揃えて
経糸とする整経(せいけい)作業

織機は106台。それぞれに個性があるという

織機は106台。それぞれに個性があるという

齋栄織物が開発した「フェアリー・フェザー」の紹介動画

いかがでしょうか?齋栄織物株式会社は、度重なる窮境においても新たな取り組みを推し進め、その高品質な製品は国内外を問わず高い評価を受けています。製品の高付加価値化に取り組めば、新たな市場が創出できることを証明したのです。

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ものづくり日本大賞

日本の産業・文化の発展を支え、豊かな国民生活の形成に大きく貢献してきたものづくりを着実に継承し、さらに発展させていくため、製造・生産現場の中核を担っている中堅人材や、伝統的・文化的な「技」を支えてきた熟練人材、今後を担う若年人材など、ものづくりの第一線で活躍する各世代のうち、特に優秀と認められる方々を顕彰する制度です。

技術革新や経営革新を行い、社会に影響を与えている中小企業が全国に数多く存在しています。
ミラサポでは、表彰された優良企業をご紹介していますので、みなさまの経営の参考事例としてご覧ください。

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