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アワード受賞企業に学ぼう!リーディング企業ピックアップ Vol.15

受賞名

会社名

技術革新や経営革新を行い、社会に影響を与えている中小企業として賞を受賞している優良企業の中から、注目企業をピックアップ。今回は、「平成28年度 新・ダイバーシティ経営企業100選」を受賞した「株式会社クラロン」をご紹介します。東北地方で唯一のスポーツウェアメーカーとして、また、全国的にも非常に高い障がい者雇用率を誇る企業として注目される、その取組を紹介します。

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株式会社クラロン

  • ■所在地:福島県福島市八木田字並柳58
  • ■資本金:6,300万円
  • ■従業員数:134人

受賞ヒストリー

  • 平成28年度 新・ダイバーシティ経営企業100選
  • 第5回日本でいちばん大切にしたい会社大賞 厚生労働大臣賞
  • 第49回社会貢献支援者表彰<社会貢献の功績 日本財団賞>

企業概要

株式会社クラロンは、福島県福島市に1956年に創業されたスポーツウェアの製造、卸売を営む企業。東北や北関東の学校を中心に、多くの販路を有しています。
創業以来、障がい者、高齢者、女性の正規雇用に積極的に取り組んできており、特に障がい者の雇用率は35.1%に上り、全国的にも非常に高い数値です。
社員1人ひとりの特性を見極めて、適材適所に配置し、知的障がい者でも容易に操作できるよう、設備の改善にも取り組むことで、生産性を向上させています。

創業時から障がい者を雇用

「昭和の大合併」により福島県福島市に編入された、旧・吉井田村に本社工場を立地して50年以上。当時は、周囲は田畑だけの土地でした。株式会社クラロンは、1956年2月の創業から63年の歴史を有します。
特別支援学校などから多くの生徒を受け入れており、雇用する障がい者の数は、全従業員134人に対して36人(うち重度11人)と、障がい者雇用率は35.1%(重度障がい者は1人を2人とししてカウント)。現在の民間企業の法定雇用率は2.2%なので、これは全国的に見ても高い雇用率です。

同社代表取締役会長の田中須美子さんは次のように語ります。
「創業当時から3人の障がい者を雇用していて、障がい者が職場にいることは自然でした。進んで雇用してきたわけではなく、その後も自然と増えていきました」
同社は障がい者のみならず、女性や高齢者など、一般的に就業に「ハードルがある」とされる人の雇用率も高いことが特徴です。女性は100人、65歳以上の高齢者は7人雇用しており、田中会長も御歳93歳というから驚きです。
性別や年齢などを問わず、多様な人材を経営に活かす、「ダイバーシティ経営」を実践する企業と言えます。しかも、その全てを正社員として雇用しており、賃金体系もほぼ同等です。

同社は、当初は肌着メーカーとして田中会長の夫である故・田中善六さんが創業しました。その後、1964年の東京オリンピックの開催に合わせ、「これからはスポーツの時代」とスポーツウェアの製造に転換し、「みんなが望む健康、みんなに優しいスポーツウェア」を経営理念に掲げました。

「障がい者を多く雇用していますが、普段の業務に特に支障は感じていません」と田中会長は語ります。
震災のときなど緊急時には、保護者に迎えに来てもらう必要などがありますが、普段は障がいのある人も健常者に混じって何不自由なく仕事に励んでいるそうです。また、社内に認定講習を受けた「障害者職業生活相談員」が5人いて、様々な相談に乗っています。
このような体制が、福島県内で唯一、縫製工場で100人超の従業員を有する企業の経営を支えています。

本社工場の外観と同社が製造するスポーツウェア

従業員の存在が、会社を続ける秘訣

同社の創業者で社長であった故・田中善六さんは、妻の田中会長(当時は専務)と二人三脚で会社を大きくしていきました。善六さんは生前、障がい者の就労を支援する「福島職能開発研究協議会」という組織を立ち上げたり、ボランティア活動を行ったりと会社を空けることが多く、そのときは経理を担当していた田中会長が留守を守っていたと言います。

善六さんの人柄を表すエピソードがあります。ある日、自閉症のあるKさんという従業員の男の子が入社しました。Kさんは時折、情緒が不安定になると奇声を上げ続け、その声は工場中に響くほどでした。他の従業員はそのたびに作業を中断せざるを得ず、困っていました。
そんなとき、善六さんはKさんとともに倉庫に行き、2人で大声を出し合いました。気が済むと、Kさんはすっきりして作業を続けるようになりました。これを2年間続けた結果、奇声を上げることもなくなったと言います。それ以来、Kさんは善六さんを見かけるなり、いつもニコニコと駆け寄ってくるようになりました。

善六さんは、2002年に病気で他界しました。当時、善六さんは社長として約150人の従業員を抱える同社の経営を担っていたので、その混乱と田中会長のショックは大きなものでした。
「主人が亡くなった直後は頼る人もなく、苦労の毎日でした」と田中会長は当時を振り返ります。
田中会長が代表を引き継いだものの、深い悲しみに暮れていたとき、工場でKさんが駆け寄ってきました。そして「社長さん、頑張って!」と大きな声で言ったのです。

生きる気力を失いかけていた田中会長でしたが、これが「一番の喝を入れてくれた体験」であったと当時を振り返ります。Kさんは、現在も同社で働いています。
「主人が他界してからは、従業員の皆が支えてくれていて、力になっています」と田中会長。
高齢の田中会長が元気に会社を続けられる秘訣は、従業員の存在があるからだと言います。「これほど多くの従業員がいるから、会社を長く続けられています。人間は1人では生きていけませんよ」(田中会長)

田中会長

競合大手に負けない「小回りの良さ」

同社が商品を納めるのは、主に東北6県、茨城県、埼玉県、新潟県の教育施設です。幼稚園から小学校、中学校、高等学校まで、約1,100箇所の児童・生徒に、地元の販売店を通じて、体操着などを提供しています。かつては体操着だけを取り扱っていましたが、少子化の影響もあり、スクールシューズやスクールバッグ、道着など、海外で生産する商材も増やしています。
その他には、病院、企業などへ制服やユニフォームを納めています。
同社の売上規模は、年間約9億5,000万円。福島国体が開催され、大量のユニフォームの受注があった1995年頃が売上のピークでしたが、近年では安価な輸入品に押されて業況は苦しくなっています。
「体操着は、学校ごとにそれぞれデザインが違います。特注品になるので、人件費の高い国内の工場でもやっていけるのです」と田中会長は説明します。

同社の強みは、「小回りの良さ」です。例えば高等学校では、合格発表から入学までの短い期間に、生徒は氏名の刺繍が入った体操着を一式揃える必要があります。中には、肥満の生徒や手足に障がいのある生徒など、規格サイズに合わない生徒もいます。そんなときでも、同社ではたとえ1枚からでも要望に応じて対応しています。また、東北地方では唯一の体操着メーカーであることから、福島県を中心とする一円の教育施設には、発注から速やかに対応することができ、納期を厳守しています。

学校などの体操着の受注は、主に型の変更や学校の統廃合があるときに、PTAや教育委員会などの人が集まる場でプレゼンテーションが行われます。競合には数多くの大手メーカーがあり、同社は規模としては小さいほうですが、その「小回りの良さ」を武器に、受注を確保しています。1度受注が決まれば、翌年度以降も継続して使われるため、教育施設をメインの取引先としているのです。

学校用オリジナル体操着の製作工程と同社が製造する学校用体操着

「適材適所」による生産性向上

女性や高齢者、障がい者を多く雇用する同社では、どのように生産性を向上させているのでしょうか。
「障がいのある人もない人も、育成方法は同じです。人によって得手、不得手があるのは当たり前で、その人にできる仕事をしてもらっています」(田中会長)

ただし、特に障がい者の場合、まずは人に慣れさせることから始める必要があると言います。いきなり縫製担当としてミシンを相手にさせてしまうと、孤独に陥る恐れがあるためです。入社初めの時期は、人と会社に慣れさせるため、まずは仕上げや糸切りの部門など、立ち仕事で、同僚と連携が必要な部門に従事させるようにしています。また、新人と先輩従業員ができるだけ一緒に昼食を食べるようにするなど、会社に親しみやすい環境作りを先輩従業員が進んで行っています。従業員に障がい者が多いことが、この環境作りにも役立っているのです。
「他の従業員と話すのが楽しいから会社に来たい」という声が、多くの新人従業員から聞かれます。

新人が会社に慣れてきたら、やがて同社の心臓部と言える縫製部門、ミシンの仕事に付かせます。縫製部門には約100人の従業員がいて、縫製部位により班を分け、流れ作業としています。班長はほとんどが女性で、部下の面倒見が良いことが自慢です。
12ある班には障がい者がそれぞれ3、4人いますが、班長や「障害者職業生活相談員」によるバックアップ体制を有しており、それぞれの仕事ぶりにあった指導を行っています。そして、その仕事に慣れてきたら上達を促すために、なるべく同じ担当を継続させていると言います。

また、知的障がいのある従業員などにもわかりやすく、使いやすいよう、機械に必要な改造を施しています。これらの取組から、障害者雇用促進協会(当時)による「障害者の雇用促進のための施設・設備改善コンテスト」の優秀賞を受賞した実績もあります。

工場内仕上げ工程と工場内縫製工程

モノづくり企業だからこそできたこと

同社は、多様な人材の活用などにより、これまでに様々な賞や表彰を受けています。このことについて、田中会長は次のように語ります。
「入札が多い弊社では、受賞などが直接、受注につながるということはありません。ただし、1つ賞を頂くとそれを見た人から色々な話を頂くことがあり、会社の知名度向上につながっていると思います」

このような受賞と、全国的にも非常に高い障がい者雇用率という事実から、全国の障害者協会などから見学や講演の依頼が引っ切り無しに届くと言います。また、福島市内の小学校では社会科の副教材に同社が紹介されていて、毎年10校ほどから生徒が社会科見学に来るそうです。
現在、会長職とともに社長職を兼務しており、激務に追われる田中会長ですが、「多くの人と話ができ、忙しい毎日ほどありがたいことはありません」と嬉しそうに語ります。

同社の知名度が上がったことで、田中会長の元には「障がい者雇用に取り組みたい」という企業からの相談も多く寄せられるようになったと言いますが、その要望は障がい者に電話番や伝票処理などの事務仕事をさせたい、というものが多いそうです。これに対し、田中会長は次のように答えます。
「全ての企業が、弊社のように高い障がい者雇用率を実現できるとは考えていません。弊社の場合は、たまたまモノづくりの会社だったから取り組みやすかったのです。それぞれの人に合った仕事を与えることが重要だと思います」
実際に、同社でも経理部門や事務部門には、障がい者は配置していません。

「多様な人材を活用することができるモノづくりの会社を遺してくれた主人と、この会社で働いている従業員に感謝しています」と語る田中会長でした。

多数の表彰履歴、そして小学校などから多くの人が見学に訪れる

いかがでしょうか?株式会社クラロンは、「適材適所」の経営手法により多様な人材を活用し、生産性の維持と社会貢献を両立させています。そして、多様な従業員の存在が、高齢の田中会長が元気に仕事を続けるバイタリティにもつながっているのです。

今回取り上げた賞はこちら

新・ダイバーシティ経営企業100選

経済産業省は2012年度から、ダイバーシティ経営に取り組む企業のすそ野拡大を目的に、多様な人材の能力を活かし、価値創造につなげている企業を表彰する「ダイバーシティ経営企業100選」を実施しています。
2015年度からは、今後、広がりが期待される分野として重点テーマを設定した「新・ダイバーシティ経営企業100選」として実施しています。

技術革新や経営革新を行い、社会に影響を与えている中小企業が全国に数多く存在しています。
ミラサポでは、表彰された優良企業をご紹介していますので、みなさまの経営の参考事例としてご覧ください。

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