Vol.12

だれもが活躍できる 地域に根ざしたホテル経営

岩手県の内陸南部に位置し、稲作を中心として前沢牛や江刺リンゴなど著名な農産物を有するなど、県内屈指の農業地帯である奥州市。株式会社プラザ企画は、同地で数多くの結婚式や法事などを執り行うホテル「プラザイン水沢」を営む。また、地域の人々とのネットワークにより、地域産品を活用した商品開発や催事出店などの事業も展開。同社の特徴は、従業員の仕事と生活の「両立支援」に積極的なことで、その取組により次世代育成支援対策推進法および女性活躍推進法に基づく認定などを数多く受賞している。

関係者の相関図

ホテルを主力に多角的な事業を展開

プラザ企画は、1985年2月に設立。同年3月に岩手県奥州市にホテル「プラザイン水沢」を開業し、以来30年余り、同地でホテルを営んでいる。近隣市を含めてレストランを3店舗有し、他に新聞販売事業を運営。また、グループ会社が奥州市内に「ホテルニュー江刺」を営む。ホテルでは宿泊事業の他、結婚式や法事などの冠婚葬祭に関わる事業や、ホテル内に備える加工施設においてレトルト品や冷蔵品などの加工食品の製造も行っている。
同社の直近の売上は、グループ会社を含む連結で16億円。売上の約半分を冠婚葬祭事業が占めており、少子化の影響などで結婚式が減って苦労しているという。
「地方のホテルにありがちな話ですが、多角的な事業をしているため、旅館業以外にも、外食業、ブライダル業、葬祭業など、競合他社は多いです」と、同社取締役・プラザイン水沢支配人の堀内恵樹さんは語る。

ホテル「プラザイン水沢」外観

ホテル「プラザイン水沢」外観

プラザ企画取締役・プラザイン水沢支配人の堀内さん

プラザ企画取締役・プラザイン水沢支配人の
堀内さん

地域とのつながりを大切にする

プラザ企画の従業員は、120人。男女比は約4:6で、女性のほうが多い。
同社代表取締役の菊池達哉さんは、女性活用の推進について次のように語る。
「従業員の働き方を見直し、仕事と家庭の両立『ワーク・ライフ・バランス』を応援しています。私自身も仕事を充実させつつ、私生活を大切にするよう心がけています。当社はコミュニティホテルとして地域とのつながりを大切にしているため、女性活用を始めとする社会参画活動に取り組むのもごく自然な流れでした」
コミュニティホテルとは、シティホテルとほぼ同等の機能を持ちながら、比較的廉価であるとともに、その地域の中核となる都市機能を果たしている中級ホテルをよぶという。地域のコミュニティに根ざした「場」を提供し、低廉な価格設定や多様な商品提供が利用者から評価されている。
同社の宿泊客は、普段はビジネスや冠婚葬祭の用途で利用が多いが、中高生のスポーツ大会など地域のイベントがあるときに利用が増え、地域に重宝されているという。
「都心の高級ホテルのようなサービスはできませんが、地域のためにDV(家庭内暴力)の被害者の駆けこみ先としての役割や、母親が乳児の世話をできる部屋を提供するなどのサービスを提供しています」と、堀内さん。

プラザ企画の菊池社長

プラザ企画の菊池社長

同社のブライダル事業

同社のブライダル事業

多様な人材活用で各種認定を取得

同社では、女性や障がい者、高齢者、病気療養者など、多様な人材に働き続けてもらうため、さまざまな手法で仕事と生活の両立支援を実施している。
その取組を進める背景は、我が国が直面する「破壊的な労働力不足」(堀内さん)であるという。将来は女性や高齢者も活用しなければ人材が不足する、という危機感を認識しているからだ。
同社では初めに障がい者の雇用促進に取り組み、その後、高齢者の雇用促進、女性従業員の家事と仕事の両立支援へと取組を進めた。その成果として、次世代育成支援対策推進法に基づく、子育て支援に積極的な企業の証「くるみん」認定を2012年と2015年の2回取得、2018年には、より高度な「プラチナくるみん」認定を取得した。さらに2017年には、女性活躍推進法に基づく「えるぼし」認定(最上の第3段階)を取得した。国の認定だけでなく、都道府県単位での健康経営や両立支援に関する認定取得も進めている。
「くるみん」「えるぼし」の認定をダブルで受賞した例は、中小ホテルとしては全国初であるという。同社がこのような快挙を得られた背景を、堀内さんは次のように語る。
「従業員のニーズを聞き取り、働き方に関する現場の課題を1つひとつ解決してきた結果、さまざまな認定などを頂きました。認定の取得自体が目的ではなく、働き方改革の近道として捉えています。どうしたらいいんだろう、と悩むより認定取得をめざすことが有効だと思います。それは従業員のニーズと直結するものだからです」
両立支援の取組を進めることで実際に効果が現れており、女性比率が高い職場でありながら、直近では結婚や出産、育児を理由とする離職者はゼロとなっている。また、管理職に占める女性の割合は16.7%で、同業界の参考値が9.9%(2018年現在)であることから、高い比率となっている。

「プラチナくるみん」認定マーク

「プラチナくるみん」認定マーク

「えるぼし」(第3段階)認定マーク

「えるぼし」(第3段階)認定マーク

柔軟な働き方やキャリアの創出を奨励

「個を生み出す価値の最大化を支える」という同社の能力開発の方針に基づき、さまざまな福利厚生や能力開発支援の制度を設けている。
その1つが、従業員がそれぞれの状況に応じて、自らの勤務形態を選択できる「雇用タイプ選択制度」だ。同社では通常の正社員の他に、「限定正社員」「短時間正社員」とよぶ従業員が在籍している。育児中だったり障がいがあったりする従業員は、地域や時間などを限定した多様な働き方を認め、柔軟な勤務形態としている。フルタイムからパートタイムへの転換、その逆も活発に行われている。また、子の看護休暇などを取得できる期間を中学校入学までとするなど手厚い両立支援を実施している。
さらに、「メンター(助言者)制度」を設け、職場と育児・介護の両立に悩む従業員などが同じ境遇の先輩従業員らに気軽に相談できる体制を構築している。
このような両立支援の取組によって、同社では障がい者を法定雇用率(2018年現在2.2%)の約3倍雇用するとともに、60歳以上の従業員は全体の約25%を占めている。
同社では従業員の能力開発支援にも熱心だ。2016年から裁量労働制の導入とともに従業員の副業を認め、多様なキャリアの創出を促進している。また、「資格取得支援制度」を設けており、業務に関わる資格であれば、全ての従業員を対象にその資格取得のための受講料や交通費の補助を行っている。この制度を利用し、レストランサービス技能士、調理師およびキャリアコンサルタントなど、多くの従業員が資格取得を果たしている。
制度が有効に機能している理由について堀内さんは「初めに制度ありきではなく、従業員1人ひとりにニーズの聞き取りを重ねたことや、ニーズを受けて頻繁に制度変更を行った結果です」と語る。

同社の女性従業員

同社の女性従業員

地域と連携した商品開発

ホテル「プラザイン水沢」内に設ける同社の加工部門では、経営するレストラン「きくすい」のブランドで加工食品を製造・販売する他、外部から商品開発の依頼があり、相手先ブランドで商品の製造も行っている。前沢牛などの地域の特産品を使ったレトルト品や冷蔵品を主力としている。
連携先は、県内の農業協同組合、農業公社、産直センター、企業などさまざま。また、岩手県県南広域振興局 観光商業・食産業課によるマッチング支援をきっかけとして、地域の生産者と連携した実績もある。「消費者の目線」で地域振興のイメージができること、を連携先とする条件としているという。
自社ブランド商品は、レストランの持ち帰り商品として販売する他、百貨店のカタログ販売や駅売店に卸している。また年に数回、東京などで開催するイベントに出店して販売も行う。
「地域の資源を活用した商品で地産地消に貢献するのも、地域とのつながりを大切にする取組の1つです。地域で事業を継続するためには、組織が連携して新たなブランドを創出し、そのモデルを多方面で確立していくことが重要と考えています。地域資源を活用した商品の開発や販売戦略を通じて、地域振興を広げたいと思います」(菊池社長)

他社ブランドで製造する外販弁当商品

他社ブランドで製造する外販弁当商品

ホテル内に設ける加工場

ホテル内に設ける加工場

補助制度が資格取得の後押しに

同社で育児と仕事を両立させている、サービス担当トレーナーの佐々木美幸さん。メンターとして、さまざまな悩みを持つ若手従業員などの相談に応じている。同社の両立支援や能力開発支援の取組について、以下のように語った。
「子が2人いますが、周囲のフォローも得ながら子育てと仕事の両立ができています。メンターを務める中で、仕事と生活の両立に悩み、辞めたいという相談を受けた経験が何度もありました。悩む同僚の手助けになればと思い、『能力開発支援制度』を活用してキャリアコンサルタント資格を取得しました。講習期間は3カ月かかりましたが、費用の補助や無利子借入の制度があり、お金の面での心配はありませんでした。現在は短時間正社員となり、副業として講習に通ったスクールで受講生のサポートもしています。裁量労働制で柔軟な働き方ができるので自身のキャリア創出にも役立っており、助かっています」

サービス担当トレーナーの佐々木さん

サービス担当トレーナーの佐々木さん

堀内さんは語る

プラザ企画取締役・プラザイン水沢支配人の堀内恵樹さん

両立支援などの新たな取組を進める上で、休業をとる従業員のカバーをしなければならなくなる従業員からは、戸惑いや反発の声もありました。それでも働きやすい職場環境を実現できたのは、目指すゴールを明確にし、代表者の熱意と私自身がリーダーシップを持ち、地道な改善の積み重ねを続けてきたことにあると思います。




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