Vol.18  下請中小企業連携に取り組んでみませんか?

「下請中小企業振興法」が平成25年6月に改正、平成25年9月に施行され、下請中小企業に対する支援策が強化されました。ビジネスの潮流の中で、下請中小企業が自主的に事業を運営し、その能力を最も発揮できるよう、下請中小企業の振興を図るためのサポートが始まっています。
今回は、そんな下請中小企業連携の現状や、下請中小企業にとっての実施メリット、活用できるサポートなどについて、中小企業庁 事業環境部 取引課 藤田歩課長補佐、猪鼻俊男課長補佐、東海林麻美下請振興一係長にお話をうかがいました。

下請中小企業の連携が、新たな取引先獲得のカギ!

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ミラサポ事務局:下請中小企業連携の支援を強化されている背景について、教えてください。

猪鼻課長補佐:これまでも中小企業が連携して取り組む事業に対する支援は行われていますが、そのうち下請中小企業に焦点をあてた新たな支援・取り組みを昨年から開始しました。その背景としては、企業のグローバル化が進み、大企業が海外生産の比率を高める、あるいは国内拠点の集約化が進むことにより、取引が減少するなど、下請中小企業は厳しい状況に直面しています。下請中小企業は、これまで受け身の姿勢であっても取引につながっていた状況から、取引先のニーズに対応し、自ら企画・提案して新たな取引を獲得していくことが求められています。ただ、下請中小企業は深い技術やノウハウを有していても経験の不足から提案力に欠けることが多く、折角の技術・ノウハウをアピール出来ず新たな取引獲得が難しい状況にあります。

一方、これまでに、複数企業が連携することで1社では対応できない課題を解決し、事業につなげている事例が出てきています。1社1社の強みを上手く組み合わせることで、対応できる製品の幅、生産量などが改善され、これまで請け負えなかった受注を受けることができる、共通窓口を設け、"何でも請け負える企業グループ"をアピールすることで新たな取引先開拓ができるなどの成功事例です。
そうした下請中小企業の連携による新たな取引先獲得をサポートすべく、平成25年の通常国会で「下請中小企業振興法」を改正し、「特定下請連携事業計画」の認定制度を創設、各種支援措置を用意しました。

受注増、人材育成、共同出展など、連携のメリットが沢山!

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ミラサポ事務局:下請中小企業が連携されるきっかけには、どのようなものがありますか。

猪鼻課長補佐:様々なパターンがあり一概には言えませんが、下請中小企業自身が取り組まれる場合と、公的な機関などがコーディネイトし検討される場合があるようです。
下請中小企業自身が取り組まれる場合は、受注の減少や現状への危機感から連携に踏み出す企業や、新しい分野に参入したいが、1社では難しいため連携を検討される企業がいらっしゃいます。また、連携するにはある程度の信頼関係が必要ですが、連携先の企業とは、異業種交流会がきっかけとなり数年の付き合いを経て連携に踏み切ったなど、前々からの顔見知りで、それぞれの事業内容や人柄を知っていることが信頼関係の構築に役立っていると思います。地元で長く付き合いがある企業同士は、技術が重複しなければ連携対象になることも多いようです。

一方で、県の産業支援センター、商工会議所など地域の支援機関のコーディネーターによる、A社とB社が連携してこんな取り組みができるのではないかという呼びかけが発端となることもあるようです。また、ある程度大手の企業が、複数の下請中小企業の連携とその自立化をサポートすることもあります。

藤田課長補佐:いずれにせよ、連携に既に取り組んでいる企業は、受注が減少し何らかの手を打たないといけないという意識を持っている方が多いと思います。今後は更に、現状への危機感を持っている下請中小企業にいち早く取り組んでいただけるよう、連携取り組みの認知を拡げていきたいと思います。

ミラサポ事務局::下請中小企業が連携するとどんなメリットがありますか。

猪鼻課長補佐:1つ目は、先ほど述べたとおり、1社では実現できないことができるようになることです。お互いの技術、経営資源を組み合わせることで、より強固な技術、ノウハウを確立でき、新しい取引先を開拓できます。また、受注量を増やす、あるいは品質を高めることも可能です。例えば、これまで自社に技術があるにもかかわらず、納期が短いため1,000の部品製造を受注できなかったということも、2社が協力することで受注を獲得し得るのです。連携をきっかけに、その後、個社のビジネス拡大につながる可能性も期待できます。

2つ目は、コスト分散が可能になることです。例えば1社ですと人材育成がままならないこともありますが、複数企業が連携し、講師を招いて講習会を開催するなどにより、人的資源の底上げができます。また、連携することで展示会出展コストも削減できます。1社で数十万円の出展費用は中小企業にとって負担が大きいですが、連携することにより、低コストでPRの場を得ることにつながります。
また、展示会にグループ名で出展し、グループとしてのブランド力を高めることも可能です。グループであるからこそ、様々なことに対応できることをPRでき、1社よりも対応の幅が広がり、差別化ができる場合もあります。仮に対応が難しい案件があったとしても、連携企業の中に他に対応可能な企業を紹介できる方がいるかもしれません。そうしたことをきっかけに、更に連携は拡がり、ビジネスを獲得する確率が高まっていくと思います。

自社だけでは"ちょっと足りない"を補い、新たなビジネスにつなげていく手法のひとつが、下請中小企業連携です。それぞれのグループに合ったパターンがあり、成功パターンはひとつではありません。
連携により、受注量と対応技術の幅が広がり、新たな取引先を獲得するケースや、一括受注体制を構築し、大手企業からの受注を獲得するケース、技術を組み合わせ新たな製品を開発、他業種での新規取引を獲得するケース、など様々です。

昨年6月にまとめた「サプライヤー中小企業(下請中小企業)の競争力を高める中小企業連携ナビ」でも、こうした連携の事例や連携グル―プの運営手法などを紹介していますので、そちらも是非参考になさってください。今後も、さまざまな連携事例をまとめ、情報提供できればと考えています。

明確なゴール設定と関係者調整のできる中核人材の確保が重要

ミラサポ事務局:連携する際のポイントは何でしょうか?

猪鼻課長補佐:まずは、連携することでのゴールをきちんと決めることだと思います。顔見知りだからではなく、手を組んで何をやるかといった目的、そして手段をしっかりと決め、共有することが重要です。連携体で売上を上げていくこともありますが、個々の中小企業が儲かるビジネスにしないといけません。グループとしての発注は少ないけれど、個社に利益が還元されているという事例もあります。ゴールは、売上を伸ばすことのみに限りません。先ほどのメリットでも述べましたが、人材スキルの底上げといったことも将来的に取引先の拡大につながるかもしれません。こうしたゴールが明確に見えて来ないと連携は難しいと考えます。
その上で、ビジネスのつながりだけではなく、個々のメンバー企業にとってメリットにつながるような相互の知識・技術などを高める取り組みと受注獲得に向けた取り組みを組み合わせ、顧客の課題ニーズとグループのポテンシャルを把握し、企画・提案する課題解決型ビジネスを実践していくことが重要です。
また、製品を販売するときの、利益配分、知的財産などの権利所有、品質管理方法、トラブル時の責任の所在などのルールを決めておくことも後々のトラブルを回避する対策になると言えるでしょう。

そして、下請中小企業が連携するには、様々な知識を持ち、関係者の調整ができる中核人材がいることが重要です。中核人材には、グループ内、グループ外の様々な方と連携し、事業推進のために調整ができるスキルが求められます。併せて、複数企業の経営者を取りまとめる程の推進力に長けていることも必要です。
中核人材がいれば連携はまとまりやすいですが、そういった企業が出てくるのは難しいという現状があります。先に述べた、支援機関のコーディネーターも連携のマッチングだけを業務としている訳ではないため、中核人材になるのはなかなか厳しいと言えます。こうした中核人材の育成は今後の課題と考えています。

FIXME 藤田課長補佐:やはり重要なポイントは人材にあると思います。ある課題に対し、A社、B社、C社のどことどこが組むと製品化できるかを目利き出来る人が必要です。また、夢を語れる経営者は多いのですが、それを事業計画書や申請書に落とせる経営者は少ないのが現状です。それらを書き起こす通訳係も必要です。そうした人材の育成も併せて考えていかなくてはならないと思っています。

まずは連携という取り組みを知っていただく、そして連携に取り組んでいただくことで、下請中小企業の新たな活力になればと思います。 問題意識を持っている下請中小企業は多くいらっしゃると思います。各地方の経済産業局に相談窓口を用意していますので、是非お近くの窓口にご連絡ください。

事業計画の記入に迷ったら、アドバイザーにご相談を!

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ミラサポ事務局:平成25年度の法改正で新たに設けられた「特定下請連携事業計画」の認定について、教えてください。

東海林係長:「特定下請連携事業計画」の認定は、これまでに3回実施しています。初回は平成25年11月に実施し、23件の事業計画を認定しました。平成26年2月に実施した第2回では11件、先日、平成26年7月に審査を終えたばかりの第3回では、5件を認定しています。
2~3社での連携が多く、中には10社以上というところもあります。

「特定下請連携事業計画」では、2つの要件を満たす必要があります。1つ目は、特定下請事業者(前年度において一の特定親事業者への取引依存度が20%以上の下請事業者)が2社以上連携すること。2つ目は目標として、特定親事業者との取引依存度を年平均1%以上減少させる計画を3~5年先まで立てることです。取引依存度は全体取引に占める割合のため、親事業者以外からの引き合いが多くなれば、親事業者との取引量が上がっても年平均1%以上、依存度が低くなっていれば問題はありません。

藤田課長補佐:「特定下請連携事業計画」には、特定下請事業者の他にも、①特定会社(特定下請事業者が資本金の額、または出資の総額の1/2以上を出資している会社)、②共同事業者(特定下請連携事業を共同で行う特定下請事業者以外の者(大企業含む事業実施に協力する者))、③協力者(特定下請連携事業の実施に協力する一般社団法人、一般財団法人その他の者)が参加できますので、大手企業や支援機関が入る場合もあります。

東海林係長:事業計画では、組織体制、リーダーシップ、課題解決型ビジネス、について、明確に記載していることがポイントです。課題解決型ビジネスでは、市場や顧客ニーズをつかんだ上で何を実施するかといったビジネスプランを書くことが求められます。下請中小企業にとっては、課題解決型ビジネスを記入することは難しいかもしれませんが、認定申請書記入の手引きや、先ほど述べた、中小企業連携ナビを参考に記入いただくと良いと思います。

藤田課長補佐:また、各経済産業局は申請先になっている一方で、アドバイザーとしての役割も担っていますので、相談窓口としてもご活用ください。なお、お近くの商工会議所、商工会などの中小企業支援機関を通してもご相談に応じられますので、そちらにお問い合わせも可能です。連携後のフォローアップについては、支援機関などにご相談するのも良いと思います。

「特定下請連携事業計画」の認定制度はまだ始まったばかりです。これを機に、下請中小企業連携の事例が増え、下請中小企業の活躍の場が拡がっていくことを願っています。

今回インタビューした「下請中小企業振興法」、「特定下請連携事業計画」の詳細は、下記からご覧いただけます。





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