Vol.32 「小規模企業白書」刊行にこめた想い

今年(2015年)4月に創刊された『2015年版小規模企業白書』。前編:ミラサポ総研Vol31「初の発刊!「小規模企業白書」ダイジェスト」ではその概要をご紹介しました。
今回は「小規模基本法」の立案・施行に続き、本白書の企画・作成を担当した中小企業庁 小規模企業振興課 桜町 道雄 課長と、小規模事業者の支援を行う一般社団法人 小規模企業経営支援協会 立石 裕明理事長に、『2015年版小規模企業白書』の概要や活用方法、込められた想いなどをお伺いしました。
※本記事は2015年7月27日時点の取材を基に執筆・掲載しています。

見どころはヒューマン・ストーリー!

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小規模企業振興課 桜町 道雄 課長

ミラサポ事務局:小規模事業者の取組事例が今回の小規模企業白書の目玉の一つとのことですが、どのようなものを取り上げているのですか。

桜町課長:全国各地で活躍されている小規模事業者の方々を取り上げています。また、小規模事業者が事業を営む業種についても幅広く取り上げたため、充実した事例集になっていると思います。事例に共通して言えることは、皆様、地元愛に溢れているということです。事業を始めた当初からでなくとも、経営をしている中で地域に貢献していきたい、近隣の方々と共存したいと素直に思われる方が多いようです。また、国の支援策の一つとして2013年度から始まった『小規模事業者持続化補助金』の採択事業者などにもご登場いただいています。なお、この補助金制度の特徴は、簡易な経営計画書を経営者自ら作成することが採択条件の一つとなっていますが、補助金制度活用後の販路開拓や売上状況などの効果について、採択事業者アンケート調査を行い、その結果を第1部構造分析で取り上げています。

50万円が経営を変えるきっかけに!小規模事業者持続化補助金

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一般社団法人 小規模企業経営支援協会
立石 裕明 理事長

立石理事長:前述の『中小企業白書』でも事例が紹介されていますが、そちらは大企業に近い規模の事業者事例が多い印象です。『小規模企業白書』では、それとは違うところにスポットライトを当て、サイズ感が小規模で、より地に足付いた事例が掲載されています。そういう意味でサクセス・ストーリーというより、ヒューマン・ストーリーです。白書は難しいという印象を持たれやすいですが、読み物として面白いと思います。

桜町課長:取材した小規模事業者の経営の実態は本当にさまざまですが、取組事例の内容としては大きく、ビジネス上のヒントとして参考になりそうなものと、読者の心を揺さぶるヒューマン・ストーリーに分けられるだろうと思います。本当は全ての取組事例に目を通していただきたいのですが、ここではごく一部をご紹介します。

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図表1 ビジネス上のヒントとして参考になりそうな取組事例(一部)

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図表2 ヒューマン・ストーリーにあふれる取組事例(一部)


立石理事長:趣味を販路開拓につなげた例もありますね。まちの写真館を営む方は、趣味で模型ヘリコプターの操縦をされていましたが、そこから空撮ビジネスという新たなビジネスを始められました(早川写真館(岐阜県中津川市、事例2-4-3))。

ビジネスプランコンテストを見に行き、起業を目指す方のプレゼンを聞いて感化され、ご自身の起業を決意された方もいらっしゃるようです(合同会社西谷/たびすけ(青森県弘前市、事例2-2-1))。

3人の子供を持つシングルマザーは学生服の購入が難しいため、ご自身で学生服のリユース事業を起業されました。障がいを持つお子さんが通う施設での仕事が少なく困っていたところに商品の洗濯を依頼し、一方で地域の高齢者に学生服の修繕や刺繍取りを依頼するなど地域の雇用促進にも取り組まれ、フランチャイズ展開もされています(株式会社サンクラッド(香川県高松市、事例2-3-2))。

桜町課長:白書に掲載された小規模事業者は、苦労をひとやま超えた安堵感があるからこそ語れる話題もあると思います。最初から順風満帆な経営者は少ないです。そうした苦労は多くの読者に共感され、勇気を与えると感じています。経営者自らノウハウを語っている部分もありますので、経営のヒントもたくさん詰まっていると思います。まだまだご紹介しきれない小規模事業者のヒューマン・ストーリーを掲載していますので、ぜひ本編をご覧ください。

立石理事長:支援者の視点ですと、小規模事業者が経営支援機関、よろず支援拠点コーディネーターと一緒になって事業を進められている事例も10例掲載されています。支援者側も読むと気づきがあるのではないかと思います。

桜町課長:紋切り型の表現とならないよう、ライターに依頼して表現の仕方も工夫しました。雑誌のように読み物として楽しめる事例集にまとめています。まずは、自分が興味のある取組事例を探してお読みいただければと思います。

立石理事長:取組事例の紹介では難しい単語はでてきませんし、親しみやすさを感じました。気軽に目を通せるのではないでしょうか。

事例動画でより事業者が身近に

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ミラサポ事務局:これら取組事例の動画についても経済産業省ホームページで公開されていますね。


桜町課長:今年7月に、『2015年版小規模企業白書』で紹介した小規模事業者の取組事例の動画を公表しました。実は、『2015年版小規模企業白書』の検討が始まった当初から、小規模事業者の生の声を紹介する動画を制作したいという強い思いがありました。動画では、『2015年版小規模企業白書』に掲載した取組事例の中から、20事業者を取り上げ、経営者の皆様に、事業にかけるあふれる思いや経営における苦労談などを直接語っていただきました。

公表して4週間で総再生回数は4,000回程ですが、実際に動画を見ていただいた方は、これなら自分の事業も当てはまるのではないか、と共感されることも多いようです。動画を通して、小規模事業者の方々の社会認知度や評価が一層高まることを期待しています。

頭からではなく気になったところを読む!

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ミラサポ事務局:『2015年版小規模企業白書』ですが、どのように活用すればよいでしょうか。

桜町課長:必ずしも頭から読む必要はありません。政府刊行物として『2015年版小規模企業白書』を刊行したところですが、書店で手に取る機会があれば、パラパラとめくっていただいて、ご自身の気になるところを読んでいただければと思います。

立石理事長:小規模事業者の方にとっては、経営のヒントが詰まっています。また、支援機関の方にとっては、こういう時の支援ってどうすればよいの?といったヒントが溢れています。『経営支援発達計画』で悩んでいる商工会・商工会議所の職員も現場を理解する上で役立つでしょう。経営計画をつくるためのHow to本は探せばありますが、今回の『小規模企業白書』のようにさまざまな事例がまとまっているものはありません。辞書として手元に置いておくと、頭にも入りやすいと思います。私は、付箋などを付けてみなさまのご支援をする際、参考に読み返しています。

ミラサポ事務局:『2015年版小規模企業白書』の表紙ですが、とても力強さを感じますね。

桜町課長:表紙のタイトルとデザインの文字は、NHK大河ドラマ『龍馬伝』の題字も担当された、書家の紫舟(ししゅう)さんに揮毫していただきました。表紙には、小規模事業者を象徴する三つの言葉「信頼」「継承」「興隆」を配置しましたが、その心は、小規模事業者は「信頼」がなければ1日たりとも経営していけない、技術・ノウハウなどを後継者に大事に「継承」していく、そうした日々の積み重ねが地域で事業を営む小規模事業者の「興隆」へと繋がっていくことを表現しています。

ミラサポ事務局:どうもありがとうございました。読者からの反響が楽しみですね。

桜町課長:『2015年版小規模企業白書』について、読者からのご意見・ご感想をお寄せいただきたいと思います。ぜひ白書をお読みいただき、小規模事業者をはじめ、支援者の方々が、さまざまな経営のヒントを得てくださることを願っています。




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