Vol.34 中小企業・小規模事業者のマイナンバー制度 シンプル対応策<前編>情報化推進国民会議 本委員の弁護士にインタビュー

2016年1月から実施される「社会保障・税番号制度」、通称「マイナンバー制度」。マスコミなどでも話題になっていますので、気にかけ、不安に思っている方も多いかと思います。
そこで今回は「マイナンバー制度」開始に当たり、中小企業・小規模事業はどのような対応を行う必要があるのか、情報化推進国民会議 本委員の影島 広泰弁護士(牛島総合法律事務所パートナー)にうかがいました。
※本記事は2015年9月14日時点の取材を基に執筆・掲載しています。

行政機関に提出する書類に、個人番号を記載。だから個人番号を集める

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ミラサポ事務局:「マイナンバー制度」開始に伴い、中小企業・小規模事業は何を行う必要があるのですか?

影島弁護士:とってもシンプルで、

  • 行政機関に提出する書類に、個人番号を記載して提出する
  • そのために個人番号を集める
  • この2つのみを行う必要があります。

    企業が行政機関に提出する書類は、「社会保障」と「税」にかかわる書類の2通りのみです。

  • 社会保障の書類
  •  健康保険で健康保険組合に提出、雇用保険でハローワークに提出、年金で年金事務所に提出など
  • 税の書類
  •  従業員の源泉徴収票、取引先の支払調書を税務署に提出など

    個人番号を集める目的は、「行政機関に提出する書類に記載するため」だけですので、その必要がないのに集めることは違法となります。故意で不正に集めれば罰則もあります。

    従業員からは「扶養控除等(異動)申告書」で手間なく集める!

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    ミラサポ事務局:では、誰の個人番号をいつまでに集める必要があるのでしょうか?

    影島弁護士:個人番号を集める対象は、「社会保障」と「税」の書類に記載する必要がある方々です。

  • 従業員と配偶者、扶養親族
  • 個人の取引先(不動産のオーナーやライター、カメラマン、大学講師など)
  • 株主

  • 従業員と配偶者、扶養親族は源泉徴収票や健康保険などで必要となりますし、取引先は支払調書で、株主は配当を行うタイミングで必要となります。

    従業員と配偶者、扶養親族の個人番号を集めるのは、「平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらう際に、そこに記載してもらうのが良いと思います。
    年末に配布する平成28年分の申告書には従業員、配偶者、扶養親族の個人番号を書く欄があるので、そこに記載し提出してもらえばよいだけなので、番号を集めるために例年と異なる対応を行う必要はありません。
    提出期限は2016年の最初の給与支払い日の前日までですから、毎月25日が給料日であれば、2016年1月24日までに個人番号の収集が終わるはずです。
    中途採用の社員に対しても、最初の給与支払日の前日までには、同申告書を使って番号を取得するようにしましょう(扶養控除等(異動)申告書を提出しない従業員からは、別途個人番号の提供を受けてください。)。

    なお、企業が個人番号を集めるときには、本人確認が必要となります。この本人確認は、記載された番号が間違っていないかなどの「番号確認」と、なりすましではないか、実在する人物かどうかの「身元(実在)確認」が必要です。
    本人確認に必要な書類は、
  • 従業員や取引先、株主本人の場合は以下のいずれか
  •  ①個人番号カードの提出(2016年1月以降であれば)
     ②通知カードと運転免許証あるいはパスポートなどの提出
     ③住民票の写しと運転免許証あるいはパスポートなどの提出
    手間がかかりますが、これは義務なので、必ず行わなければなりません。

    しかし、いくつか本人確認には例外処置があります。
    まず、既存の従業員に関しては、入社時に本人確認がなされていて、知覚(見る)ことによって本人であることが明らかであれば、改めて身元(実在)確認を行う必要はありません。入社時に住民票、健康保険証、年金手帳、運転免許証などのいずれかで本人確認がなされていれば、今回は通知カードで番号確認のみ行えば、問題ありません。なお、履歴書では本人確認とは言えないので、注意しましょう。

    また、2回目以降の個人番号提出に際しては、知覚(見る)ことによって本人であることが明らかであれば、身元(実在)確認が不要となります。
    つまり従業員に関しては、入社時に本人確認が出来ていなくとも、今年だけきちんと「扶養控除等(異動)申告書」提出のタイミングで身元(実在)確認を行えば、次年以降は必要がありません。

    また、従業員の配偶者、扶養親族の個人番号を、従業員を通じて取得する場合の本人確認書類は、
  • 以下のすべてが必要
  •  –配偶者や扶養親族への委任状など(代理権の確認)
     –代理人である従業員の運転免許証あるいはパスポートなど(代理人の身元(実在)確認)
     –本人である配偶者や扶養親族の個人番号カード、通知カードあるいは住民票の写しなど(本人の番号確認)
    ただし、「扶養控除等(異動)申告書」で個人番号を集めるときに限り、例外的に企業による配偶者と扶養親族の本人確認が不要となります。
    なぜなら、この申告書は、「従業員が作成して、会社に提出する」書類なので、法律的に書類作成義務が従業員にあります。したがって、従業員が本人確認を行う義務があるため、企業が配偶者、扶養親族の本人確認を行わなくともよいのです。この例外処置は、企業の事務的負荷を大きく下げてくれるのではないでしょうか。

    また、利用目的を通知などした上であれば、「扶養控除等(異動)申告書」で集めた個人番号は雇用保険、厚生年金などで活用することができるので、従業員や配偶者、扶養家族の個人番号の収集は、この年末に大きな手間をかけずに、終わらせてしまいましょう。

    取引先は1年かけて、既存株主は3年かけて集めればOK!

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    ミラサポ事務局:では、取引先と株主の個人番号はいつまでに集めればよいのでしょうか?

    影島弁護士:個人の取引先と株主は従業員と異なり、郵送などで集める必要がある会社が多いのではないでしょうか。

    取引先については2017年の1月に提出する支払調書から記載する必要があります。よって、ほぼ1年間かけて集めれば大丈夫です。発注書や請求書を送る際に、「個人番号提供のお願い」の文章を同封するとよいでしょう。
    なお、法人の取引先に関してはインターネットで「法人番号」を検索できるようになりますので、集めることはさほど大変ではありません。

    株主は経過措置があり、既存の株主に限り2016年から3年間の猶予があり、3年間は個人番号を書かずに支払調書を提出することができます(2019年以降の配当から必要)。ただ、提供を受けた個人番号については、全員分そろわない段階でも記載する必要がありますので、都度対応しましょう。

    気を付けるべきことは、1月1日以降の新たな株主に対しては、経過措置がありません。早いと2016年6月の株主総会で配当が発生するときに必要になります。株主は氏名・住所を告知する義務がありますので、その際に個人番号もあわせて提出をしてもらいましょう。

    どちらにしても、取引先と株主に関しては2016年になってから時間をかけて対処しても、大丈夫です。

    ただ、取引先も株主も、提出してもらうタイミングが遅くなると、通知カードを紛失するなど、個人番号がすぐにわからない状況になる可能性もありますので、なるべく早く提出してもらうと安心でしょう。話題として盛り上がっている間に集めてしまう方が、必要性も理解してもらいやすく、実務的にもよいかと思います。


    ミラサポ事務局:それでは年内に行っておくことは、「扶養控除等(異動)申告書」で従業員と配偶者、扶養親族の個人番号を集めるだけでよいのでしょうか?

    影島弁護士:「平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」で個人番号が記載された書類を集め始めますので、どこに、どのように保管をするのかだけは、年内に決める必要があります。保管体制を整えなくては、個人番号は集めてはいけません。
    といっても、大きな対応は必要がなく、まずは最低限、事務取扱担当者が誰なのかを決めて教育を行い、鍵のかかるキャビネットにいれておくだけでも構いませんから、きちんとキャビネットと鍵の管理方法を決めておきましょう(従業員101人以上の会社では、加えて、取扱規程などの策定、組織的安全管理措置を講じるなどの対応が必要となります)。

    来年、2016年の1月以降に行政機関に提出する書類に個人番号を記入する必要がありますが、まとめ個人番号が必要になるのは実質的には「2016年の年末調整」(2017年1月に提出する源泉徴収票に記載)です。
    すぐに税務署に提出することはないので、無理に年内にシステム化する必要はありません。

    今年中に人事・給与システムに投入するはありませんし、無理にシステム化する必要もないので、慌てて行わなくとも大丈夫です。システムをどうするかや、顧問税理士・社労士の先生にどう預けるのかは、来年考えれば十分でしょう。
    個人番号は情報漏えいしてはならない情報が1つ増えただけです。これまでの社員の銀行口座などの秘密の情報を管理するのと同じように、漏えいしないようにきちんと管理すれば大丈夫です。

    後編では個人番号を取り扱う際の「安全管理措置」や、税理士・社会保険労務士をはじめとする外部委託する際に必要となる対応について、引き続き影島弁護士におうかがいします。




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