Vol.51 第4次産業革命とは?中小企業はどう取り組めばいい?

革新的な産業構造の転換を伴う「第4次産業革命」。今回はその概要と中小企業が経営に取り入れるに当たってのポイントを、独立行政法人経済産業研究所 上席研究員である岩本晃一氏に伺いました。
※本記事は、2017年10月6日時点の取材をもとに執筆・掲載しています。

第4次産業革命の概要

第4次産業革命の概要

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第4次産業革命とは

「第4次産業革命」とは、18世紀末以降の水力や蒸気機関による工場の「機械化」である第1次産業革命、20世紀初頭の分業に基づく電力を用いた「大量生産」である第2次産業革命、1970年代初頭からの電子工学や情報技術を用いた「自動化」である第3次産業革命に続くもので、新たに大量のデータの取得・分析・実行が可能になる急速な技術革新を指します。図にある通り「相互協調」「自律化」「高度化」をキーワードとし、機械が自ら判断・機能することなどが可能になります。

その核となる技術革新は、
○あらゆる事業・情報が、ネットワークを通じて自由にやりとりできる「IoT(モノのインターネット)」
○集まった大量のデータを分析し、新たな価値として利用可能になる「ビッグデータ」
○機械が自ら学習し、人間を超える高度な判断が可能になる「人工知能(AI)」
○多様で複雑な作業についても自動化が可能になる「ロボット」
などが挙げられます。

技術革新がもたらす新製品・新サービス

第4次産業革命による技術革新は、以下のような革新的な製品・サービスの提供に活用でき、その実用化が進められています。

  • (1)製品・サービスの生産・提供にデータの解析結果を活用
    具体的には、製造業者による自社製品の稼働状況データを活用した保守・点検の提供、ネット上での注文に合わせた商品のカスタマイズ、ウェアラブル機器による健康管理、保安会社による1人暮らし高齢者の見守りサービスの提供などの事例があります。
  • (2)「シェアリング・エコノミー」の提供
    シェアリング・エコノミーとは、インターネットを介してサービスの利用者と提供者をマッチングさせ、遊休資産を他者に提供したり、余った時間で役務を提供したりするサービスです。
  • (3)AIやロボットの活用
    具体的には、AIを使った自動運転の試行実験、AIを活用した資産運用、介護などでのロボットによる補助の活用などの事例があります。
  • (4)「フィンテック」(FinTech)の発展
    フィンテックとは、金融を意味するファイナンスと技術を意味するテクノロジーを組み合わせた造語であり、主にITを活用した金融サービス事業を指します。
    具体的には、取引先金融機関やクレジットカードの利用履歴をスマートフォン上で集約するサービスや、個人間で送金や貸借を仲介するサービス、AIによる資産運用サービスの提供などが可能となります。

中小企業はどう取り組めばいいか

中小企業はどう取り組めばいいか

岩本氏

世間に新しいツールが登場するたびに、「そんなものは使わない」と言う中小企業の方もいます。これに対し、岩本氏は次のように語ります。
「昔と同じ仕事のやり方では、取り引きが縮小するなど時代のトレンドに取り残される企業も多かったと思います。もちろん、IoTやAIを使うことそのものが目的ではありません。これまでと同じ現場改善や事業戦略の中にITを取り入れることで、これまでとは比較にならない売上増加や利益拡大を実現できるということです。今はITツールも『小さく、早く、安く』なっているので、それほどお金を掛けなくてもものすごい効果を生み出すことができます。また、それにより企業が大きく成長できる可能性があるのです」

一方で、中小企業が取り組むにあたっては留意点もあります。岩本氏が挙げるのは以下の点です。
「まず、中小企業には大企業と違って優秀なエンジニアが少なく、社内で考えているだけでは対応が難しいということです。始めは詳しい技術のことを知っている必要はありませんが、『他社は何をやっているのか』ということに関心を持ってみてください。今は様々な企業事例などが公開されているので、それらに関心を示すことが大事だと思います。
また、ビッグデータやAIの技術は、大量のデータを扱うために中小企業にとっては高額な初期費用が負担となるでしょう。一方、第4次産業革命の基盤技術と言えるIoTであれば、自らが必要な範囲で規模を調節して投資できるため、現実的だと思います。中小企業でも積極的にIoTの活用を行っている企業はたくさんあります」

中小企業でも取り組めるIoTとは

ここでは、第4次産業革命の基盤技術であるIoTにフォーカスして中小企業の取り組み方を事例とともに考えてみましょう。
IoTを活用して生産性向上に取り組む2社の中小企業の事例を紹介します。

事例紹介1:タブレット端末での作業実績収集と設備稼働監視によるQCDの向上

中小企業でも取り組めるIoTとは

飯山精器㈱(長野県中野市)は、油圧機器部品や情報通信機器部品の金属切削加工を行う製造業。複雑な形のものから削りにくい材質のものまで、長年の経験と最先端技術を取り入れることで対応しています。
加工業界では多品種少量、短納期の要求が高まっており、それと同時に品質の確保、工数削減によるコスト削減が急務となっています。
同社では、タブレット端末を現場担当者に1人1台ずつ配付し、作業実績の収集と設備稼働状況が監視できるシステムを導入しました。
これにより、在庫数、標準工程の情報を元にした作業指示書が発行できるようになり、それに対する実績の入力を端末上で行うことで、納期に対する進捗管理がスムーズにできるようになりました。
工程ごとの納期を管理することにより、作業の遅れを防止することはもちろん、早めの対策が取れるようになったのです。
さらに、設備の稼働状況をリアルタイムで監視して停止時間を減少させ、稼働率を向上させることにより、得意先への納期遵守率を向上させました。具体的には、システム導入前は20件程度発生していた納期遅れ件数が、システム導入後は5件程度まで減少させることができました。
同様の部品加工業者でも同じ課題を抱えており、同社では工場見学、システム説明、セミナー講演等、作業効率向上のための普及活動も行っています。

事例紹介2:無電源治具情報収集装置の活用による受注品の品質確保

中小企業でも取り組めるIoTとは

武州工業㈱(東京都青梅市)では、自動車用の熱交換器パイプ、および板金部品の製造を主な業務としています。
同社では、加工品のパイプ形状を確認する治具に、無線通信機能を有するスイッチを取り付け、受信機を介してサーバーと通信することにより、その治具を利用した形状確認が確実に実施されたかを担保する仕組みを活用しています。
このスイッチは結線不要で情報通信・電源不要が行えるものであり、数ヶ月~数年おきに受注のある「久しぶり品」の品質確保を支援する仕組みとなります。
多品種少量生産の現場では、生産治具、品質管理治具(製品に対する品質保証を行うための治具)の管理は大きな課題となっています。また、電池などを用いたスイッチで管理する方法では、いざ利用するときに電池切れであったり、長期保管時の電池劣化による発火・発煙の発生の恐れがあったりと、運用に課題がありました。
同社では、「欲しいもの」「必要なもの」をシステム化し、廉価なスマートデバイスなどの活用で、リアルタイムでの「経営と現場の見える化」を実現しています。
また、これら現場発のノウハウを、他の中小ものづくり企業と連携することで横展開しています。

利用できる支援制度、支援ツール

IoTは中小企業でも取り組めるとは言っても、資金や人材の面で二の足を踏んでしまう企業が多いことでしょう。そこで国や国が協力する機関では、中小企業などもIoTに取り組みやすいような施策を設けており、その一部を紹介します。

スマートモノづくり応援ツール・レシピ

経済産業省が主導する「ロボット革命イニシアティブ協議会」では、IoTで何ができるのか、どのようなデータをどう活用したらいいのかなどの悩みを抱える中堅・中小製造業が、より簡単に安く使える業務アプリケーションやセンサーモジュールなどのツールを活用できるよう、低コストのIoTツール・IoTレシピを募集し、公表しています。2016年に106件のツールを、2017年に96件のツールと28件のレシピを選定しました。
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地方版IoT推進ラボ

総務省と経済産業省が協力する民主導の組織「IoT推進コンソーシアム」では、製造業領域に限らず、あらゆる分野でのIoT活用とその技術開発を支援しています。
「地方版IoT推進ラボ」事業では、IoTビジネスの創出を推進する地域を選定しており、これまでに74地域を選定。各地域の特性・課題に合わせた多様な取り組みに対し、ロゴマークの使用権付与、メルマガやラボイベント等によるIoT推進ラボ会員への広報、地域のプロジェクト・企業等の実現・発展に資するメンターの派遣などの支援を行っています。
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IT活用促進資金

日本政策金融公庫では、「IT活用促進資金」という融資制度を設けています。
中小企業が情報化を進めるために必要な設備資金、ソフトウェアの取得などに係る運転資金に対し、融資する制度です。
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インタビューをした人

上席研究員 岩本晃一さん

独立行政法人経済産業研究所
上席研究員
岩本晃一さん

1981年京都大学卒、1983年京都大学大学院(電子工学)修了後、通商産業省入省、在上海日本国総領事館領事、産業技術総合研究所つくばセンター次長、内閣官房内閣参事官等の後、2015年11月から現職。
AI、IoT/Industrie4.0など第4次産業革命の社会科学研究などを専門とする。『インダストリー4.0ドイツ第4次産業革命が与えるインパクト』(日刊工業新聞社)、『ビジネスパーソンのための人工知能』(東洋経済出版社、共著)、『中小企業がIoTをやってみた』(日刊工業新聞社、共著)など著書多数。




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