Vol.53 今からでもできる!消費税軽減税率対策

平成31年(2019年)10月1日から実施される消費税の軽減税率制度。小売店や飲食店以外には関係のないこと、と思ってしまいがちですが、実はそうではありません。今回は、制度開始前に特に中小企業が準備しておくべきことや困った時の相談方法などを、中小企業庁事業環境部財務課課長補佐の髙橋隆氏、同庁経営支援部商業課係長の関航平氏に伺いました。
※本記事は、平成29年11月22日時点の取材をもとに執筆・掲載しています。

消費税軽減税率制度は、中小企業にどんな影響がある?

消費税軽減税率制度の概要

財務課の髙橋課長補佐(左)と商業課の関係長

財務課の髙橋課長補佐(左)と商業課の関係長

消費税軽減税率制度の概要

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平成31年10月1日に消費税等の税率を10%へ引き上げると同時に、低所得者対策として「軽減税率制度」を実施します。これにより、食料品や新聞などの軽減税率対象品目の税率は8%となります。

軽減税率制度では消費税率が8%と10%の複数税率になるため、事業者の皆さまは、「適用税率ごとに区分して記帳するなどの経理(区分経理)」や「適用税率ごとに区分した消費税額の計算」などの新たな作業が必要となります。
また、複数税率に対応した仕入税額控除の方式として、平成31年10月から現行の「請求書等保存方式」を維持しつつ、区分経理に対応するために「区分記載請求書等保存方式」を実施した後、平成35年(2023年)10月から「適格請求書等保存方式」(インボイス制度)へ移行するなど、事業者の皆さまの準備を考慮して一定の経過措置を設けるとともに、必要な施策を講じます。

軽減税率対象品目の詳細などは、国税庁のホームページ内「消費税軽減税率制度」のページをご参照ください。
https://www.nta.go.jp/

すべての事業者に影響がある

飲食料品や新聞を扱わない事業者には関係のないこと、と思ってしまいがちですが、実際はそうではありません。軽減税率制度は、以下の点ですべての事業者に影響がありますので、十分に留意しておきましょう(出典:中小企業庁『今日から始める消費税軽減税率対策』)。

  • (1)対象品目の売上がない課税事業者であっても、対象品目の仕入れがある場合は、標準税率(10%)と軽減税率(8%)とを区分して経理を行う必要があります。
    • ・経理システムの変更、改修等が必要になる可能性があります。
    • ・適用税率ごとに区分した経理ができない中小事業者などに対しては、一定期間、税額計算の特例措置が設けられています。
  • (2)取引先から「軽減税率の対象品目である旨」や「税率ごとに合計した対価の額」を記載した請求書等の発行が要求されることがあります。
  • (3)免税事業者も取引先から「軽減税率の対象品目である旨」や「税率ごとに合計した対価の額」を記載した請求書等を求められることがあります。

軽減税率対策補助金の活用を!

国(中小企業庁)では、事業者の皆さまへのサポートとして、「複数税率対応レジの導入」(申請類型:A型)や「受発注システムの改修」(申請類型:B型)などを行う場合の経費の一部を補助する「中小企業・小規模事業者等消費税軽減税率対策補助金」を平成28年4月から公募しています。

このたび、本補助金の補助事業の完了期限を、平成31年9月30日まで延長しました。本補助金のA型及びB-2型は事後申請であり、完了期限までにレジなどの改修や設置、代金支払が完了していれば、申請書の提出はその後でも対象となります(別途、申請期限を設けます)。ですが、なるべく早めに対応しましょう。

対象となる事業者は、中小企業支援法に規定する中小企業者のほか、事業協同組合、特別の法律によって設立された組合(農業協同組合など)、NPO法人、社会福祉法人なども含みます。
ただし、いずれも軽減税率対象品目を扱い、「軽減税率制度の影響を受ける事業者」の場合に限ります。例えば、税率8%の商品のみ扱う事業者は「軽減税率制度の影響を受ける事業者」に該当し、対象となりますが、税率10%の商品のみ扱う事業者は対象となりません。

複数税率対応レジの導入等支援(A型)

複数税率対応レジの導入等支援(A型)

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主に飲食料品の小売店などで、日々の売上をレジで記録している場合、複数税率対応レジへの買い替えや改修が必要となる場合があります。
そのとき、レジの導入費用として、原則3分の2の、3万円未満のレジの場合は4分の3の補助が受けられます。

補助上限は、レジ1台当たり20万円(商品マスタの設定や機器設置に費用を要する場合は、1台当たり20万円追加)まで補助が受けられます。また、1事業者当たりでは200万円の上限ですので、例えば、1台当たりの補助金額が20万円のレジ導入の場合、10台まで対象となります。

受発注システムの改修等支援(B型)

受発注システムの改修等支援(B型)

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電子的受発注システム(EDI/EOSなど)を利用している事業者が、複数税率に対応するためシステムの改修・入替を行う場合の費用を補助します。
主に小売業等または卸売業等を対象としています。小売業等の発注システム改修・入替の場合は1,000万円まで、卸売業等の受注システム改修・入替の場合は150万円までを上限とします。いずれも補助率は3分の2です。

この申請類型のうち、システムベンダー等に発注して、受発注システムの改修・入替をする場合(B-1型)には、システムベンダー等が代理申請者となり、改修・入替に着手する前に申請が必要となります。
他の申請類型と申請方法が異なりますので、ご注意ください。

中小企業・小規模事業者が頼れる相談先を設置

中小企業・小規模事業者の皆さまが、できるだけスムーズに対応し、少しでも負担を減らしていただくため、補助金の他にも様々なサポート体制を設けています。

消費税軽減税率対応窓口相談等事業

相談窓口一覧

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中小企業4団体(商工会議所、商工会連合会、中小企業団体中央会、商店街振興組合連合会)の全国約2,400カ所に相談窓口を設置しています。また、セミナーを随時開催しているほか、中小企業者の相談内容に応じた専門家派遣や補助金などの支援策の説明を行う支援機関に無料での講師派遣を実施しています。

そのほか、国税庁や日本税理士会連合会などにも相談窓口を設けています。詳しくは表「相談窓口一覧」をご参照ください。

▶国税庁の電話相談窓口はこちら
消費税軽減税率電話相談センター(軽減コールセンター)(国税庁)
0570-030-456 【受付時間】9:00~17:00(土日祝除く)

中小事業者に対する税額計算の特例

基準期間における課税売上高5,000万円以下の中小事業者には、軽減税率制度の実施後一定の期間、税額計算について特例措置(経過措置)を設けています。

  • (1)売上税額の計算の特例
    売上を税率ごとに区分することが困難な中小事業者は、売上の一定割合を「軽減税率対象品目の売上」として税額計算することができます。
    この特例は、平成31年10月1日から平成32年(2020年)9月30日までの期間、適用することができます。
  • (2)仕入税額の計算の特例
    仕入を税率ごとに区分することが困難な中小事業者は、仕入の一定割合を「軽減税率対象品目の仕入」として税額計算することができます。
    この特例は、平成31年10月1日から平成32年9月30日を含む課税期間の末日までの期間(簡易課税制度の適用を受けない期間に限ります。)、適用することができます。
  • (3)簡易課税の事後選択
    仕入税額の計算に当たっては、(2)に加え、通常は事前選択制(簡易課税制度を適用しようとする課税期間の開始前までに「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要です。)である「簡易課税制度」の適用を、事後選択(簡易課税制度を適用しようとする課税期間中に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出し、同制度を適用することができます。)とすることができ、事業に応じた一定の「みなし仕入率」を使用して計算することができます。

中小企業の税制上の特例

以前から実施されている特例措置となりますが、前述の補助金と併用が可能な制度があります。要件などを確認のうえ、軽減税率制度の実施に併せて活用を検討しましょう。

  • (1)少額減価償却資産の損金算入の特例
    青色申告書を提出する中小企業者等が30万円未満の減価償却資産を取得した場合、その全額を経費として算入することができます。
  • (2)商業・サービス業・農林水産業活性化税制
    アドバイス機関から指導・助言等を受けた、青色申告書を提出する中小企業者等が経営改善設備を取得した場合、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が適用できます。
  • (3)中小企業投資促進税制
    青色申告書を提出する中小企業者等が一定のソフトウェア等を取得した場合、取得価額の30%の特別償却又は7%の税額控除が適用できます。
  • (4)中小企業経営強化税制
    中小企業等経営強化法の認定を受けた、青色申告書を提出する中小企業者等が経営力向上設備を取得した場合、即時償却又は取得価額の10%の税額控除が適用できます。
  • (5)固定資産税の特例
    中小企業等経営強化法の認定を受けた、中小企業者等が経営力向上設備を取得した場合、当該設備に係る固定資産税の課税標準を3年間、2分の1に軽減します。



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