Vol.63 平成30年度「税制改正」活用ガイド~設備投資・資産取得編~

平成30年度の税制改正においては、中小企業の企業活動を幅広く支援する措置が講じられています。
「ミラサポ総研」では、改正の概要や措置の内容、適用要件等について、中小企業の皆様向けに分かりやすく解説したパンフレットから、特に「事業承継」と「設備投資・資産取得」に関する税制を取り上げ、紹介します。
前編となる今回は、「設備投資・資産取得」に係る改正内容や新たに創設された税制について取り上げます。
また、税理士 佐藤昭一氏より、中小企業が活用するに当たってのポイントを解説していただきます。
※本記事は2018年4月27日時点の取材をもとに執筆・掲載しています。

中小企業の生産性向上には、設備投資が求められている

労働生産性の推移と賃上げ率と企業規模別設備年齢の推移の図

「労働生産性の推移と賃上げ率」と
「企業規模別設備年齢の推移」
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経済産業省「平成30年度 経済産業関係 税制改正について」によると、中小企業の業況は回復傾向にありますが、労働生産性は伸び悩んでおり、大企業との差も拡大傾向にあります。また、中小企業が所有している設備は特に老朽化が進んでおり、生産性向上に向けた足枷となっていると言えます。
老朽化が進む設備を生産性の高い設備へと一新させることで、中小企業の皆様が労働生産性を飛躍的に向上することを目的としています。

中小企業の生産性向上につながる税制措置

「設備投資・資産取得」に係る措置内容は次のとおりです。新規設備投資の固定資産税が3年間最大ゼロとなる特例が創設されるなど、中小企業の企業活動を幅広く支援する税制措置が講じられています。

  • (1)設備投資に係る固定資産税の特例の創設
  • (2)少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の延長
  • (3)経営力向上計画の認定による設備投資の税制措置の延長
  • (4)30%の特別償却、7%の税額控除の選択適用

詳細は、以下の項で詳しく説明します。

(1)設備投資に係る固定資産税の特例を受けられます

制度の概要図(2020年度末まで)

制度の概要(2020年度末まで)
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要件を満たす設備投資を対象とし、償却資産に係る固定資産税の特例措置を講じます。特例率は、3年間、ゼロ以上1/2以下で市町村の条例で定める割合となります。なお、この特例措置は、集中投資期間(2018年度~2020年度)に限定して適用されます。

<佐藤税理士による解説>

この措置は、生産性向上特別措置法による固定資産税の特例制度です。生産性向上特別措置法の施行日から2021年3月31日までに取得等し、事業の用に供した減価償却資産が対象です。
後述する「(3)経営力向上計画の認定による設備投資の税制措置の延長」による固定資産税の軽減とは異なる制度であるため、本店所在地の市町村ではなく、先端設備等を設置する市町村で先端設備等導入計画の認定を受ける必要があります。中小企業庁が実施したアンケート結果によると9割近くの市町村が特例率をゼロとする意向のようですが、市町村により特例率が異なるため、先端設備等を設置する市町村の条例を確認する必要があります。

同法の施行日は、2018年6月中旬から7月初旬を予定しているようです。施行された後に市町村が条例を定め、その後、申請事業者が先端設備等導入計画の認定を受ける必要があるため、直近で設備投資を考えている場合には、設備投資のスケジュールを考慮する必要があります。設備取得後の計画申請は、一切認められないようですので注意してください。

(2)少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例を延長します

少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例のポイント

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従業員1,000人以下の中小企業者等が30万円未満の減価償却資産を取得した場合、当該減価償却資産の合計額300万円を限度として、全額損金算入(即時償却)を認める制度です。
中小企業者における償却資産の管理や申告手続などの事務負担の軽減、及び少額資産の取得促進による事務処理能力・事業効率の向上を支援するため、この適用期限を2019年度末まで、2年間延長します。

<佐藤税理士による解説>

従前の使い勝手の良い制度が2年間延長されました。2020年3月31日までに取得等し、事業の用に供した減価償却資産が対象です。パンフレットには「IT機器等」とありますが、IT機器に限らず、中古を含む全ての減価償却資産が対象となります。

20万円未満の減価償却資産については、3年で償却できる一括償却資産か即時償却かを選択できます。限度額の300万円は、事業年度ごとに判定します。対象となる減価償却資産の合計額が300万円を超えてしまう場合には、耐用年数が長い減価償却資産を即時償却の対象とすると、損金計上のタイミングが早くなり有利になると思います。即時償却を選択した減価償却資産については、償却資産税の申告対象になります。
一方で、一括償却資産は、償却資産税の申告対象になりません。償却資産税まで考慮して、有利・不利を判定する必要があります。

(3)経営力向上計画の認定による設備投資の税制措置の延長(中小企業経営強化税制)

制度の概要図(2018年度末まで)

制度の概要(2018年度末まで)
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経営力向上計画の認定を受けると、資本金3,000万円以下の法人、個人事業主の場合、法人税・所得税の即時償却または10%の税額控除が選択適用できます。資本金3,000万円超から1億円以下の法人の場合、法人税・所得税の即時償却または10%の税額控除が選択適用となります。また、固定資産税を3年間、2分の1に軽減することもできます。

<佐藤税理士による解説>

経営力向上計画の認定を受けることが必須の制度です。2019年3月31日までに取得等し、事業の用に供した減価償却資産が対象です。経営力向上計画の認定を申請する段階で取得する減価償却資産を決めておく必要があるため、計画的な設備投資が必要となります。
経営力向上計画は、減価償却資産の即時償却や固定資産税の特例だけでなく、計画に基づく事業に必要な資金繰りを支援してもらえることや、認定事業者に対する補助金における優先採択もあります。

後述する「(4)30%の特別償却、7%の税額控除の選択適用」の制度に比べ、特別償却・税額控除とも有利になっています。特に資本金3,000万超の法人は、(4)では税額控除の適用がありませんが、中小企業経営強化税制では、7%の税額控除が可能です。

(4)30%の特別償却、7%の税額控除を選択適用できます

経営力向上計画の認定を受けない場合でも、資本金3,000万円以下の法人、個人事業主に限り、30%の特別償却、7%の税額控除が選択適用できます。

<佐藤税理士による解説>

経営力向上計画の認定を受けることは難しくありません。まずは、経営力向上計画の認定を受けた上で、「(3)経営力向上計画の認定による設備投資の税制措置の延長」の即時償却や固定資産税の軽減の特例を受けることを検討してください。
特別償却と税額控除の選択ですが、毎年納税が発生する場合には、税額控除を選択し、たまたま当期だけ利益がでて納税が発生するような場合や目先の資金繰りを重視する場合には、特別償却を選択するとよいと思います。

特別償却は、減価償却費を前倒しで計上する制度ですので、トータルの償却費の金額自体は変わりありません。税額控除は、償却費の計上に加えて税額の控除を受けられるので、長い目で見ると税額控除の方が有利となります。中小企業投資促進税制、商業・サービス業・農林水産業活性化税制は、それぞれ対象となる設備と認められる事業が異なります。適用を検討される場合には、対象設備に該当するか指定事業に該当しているか確認をしてください。2019年3月31日までに取得等し、事業の用に供した減価償却資産が対象です。

インタビューをした人

佐藤昭一さん

佐藤 昭一さん

税理士。明治学院大学経済学部卒。
大学在学中からダブルスクールで税理士試験に挑戦し、卒業後は試験勉強と税理士事務所での仕事を両立させる。税理士事務所での仕事と並行してリサイクルショップを経営していたこともある。2つのことを同時並行させるために実践していたITを駆使した業務効率化、リサイクルショップ起業の経験を活かした経営支援を得意としている。最近は、体を動かすことに目覚めスポーツと仕事を同時並行させている。




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