Vol.68 地域経済をリードする「地域未来牽引企業」を紹介します!

2017年12月に選定および公表された「地域未来牽引企業」。地域経済を牽引する担い手となる地域の中核企業として選定された2,148社に対し、地域未来投資促進法などに関連する支援施策が措置されています。
今回は、地域未来牽引企業の概要やその支援施策について、経済産業省地域経済産業グループ地域未来投資促進チームの山崎孝志課長補佐に伺いました。また、2018年4月に開催の会津若松サミットおよび2018年7月に開催の熊本サミットの開催レポートをお伝えします。
※本記事は、2018年7月25日時点の取材をもとに執筆・掲載しています。

地域の担い手となる中核企業2,000社超を選定

経済産業省地域経済産業グループ地域未来投資促進チーム 山崎孝志課長補佐

経済産業省地域経済産業グループ
地域未来投資促進チーム
山崎孝志課長補佐

「地域未来牽引企業」は、地域の特性・強みを生かして高い付加価値を創出し、将来、成長が期待できる分野での需要を地域内に取り込んで経済的な波及効果を及ぼすような、地域経済をリードする中核企業を指します。地域内外の取引実態や雇用・売上高を勘案し、地域経済への影響力が大きく、成長性が見込まれる企業を選定しました。

地域未来牽引企業に対する支援は、2017年7月31日に施行された「地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律」(以下「地域未来投資促進法」という。)の関連施策として行われています。2017年12月に、外部有識者委員会の検討も踏まえ、経済産業省が2,148社を選定・公表しました。

選定部門は、以下の2種類があります。選定対象は、売上高1,000億円以上、資本金10億円以上または東証一部上場企業などを除く、中小・中堅企業としており、企業の同意を得られた場合に経済産業省が選定します。

(1)データ部門
以前から地域経済を牽引してきた主要企業を、取引データ、売上高および雇用貢献度などの指標により選定を行うものです。付加価値の高さや今後の成長性、地域内外の取引の「結節点」の役割を担っているかどうか、などが評価のポイントとなります。これまでに726社が選定されました。

(2)推薦部門
地域の新たな牽引役として期待される、魅力ある事業に取り組む企業を、その事業内容に着目し、事業や経営の特徴などを考慮して選定を行うものです。地方自治体や商工団体、金融機関などの関係者が、今後の地域経済への貢献などが期待される企業を推薦します。これまでに1,422社が選定されました。

これまでに選定された企業の多くは製造業ですが、農林水産、観光、サービス、卸売、地域商社など多様な業種を含みます。形態も中堅やベンチャー、先進企業など、さまざまな企業が選定されています。
近年、観光・航空機部品など、地域の特性を生かした成長性の高い新たな成長分野に挑戦する取組が登場しつつあり、このような取組が全国で活発になることで、地域経済における「稼ぐ力」の好循環が実現されることを期待しています。

あらゆる政策資源を集中投入して支援を実施

地域未来牽引企業に選定された企業(以下「選定企業」という。)には、さまざまなメリットがあります。代表的なものは以下のとおりです。

(1)ロゴマークの使用

地域未来牽引企業ロゴマーク

地域未来牽引企業ロゴマーク

選定企業のみが活用できるロゴマークを制定しており、申請すれば名刺や従業員の制服などに同ロゴマークを使用して広報活動や行うことができます。2018年7月現在、選定企業の約半数に当たる981社からロゴマークの使用申請がありました。

(2)地域未来コンシェルジュによる支援
各経済産業局に「地域未来投資促進室」を新設するとともに、都道府県ごとに「地域未来コンシェルジュ」を配置しました。これには、各経済産業局の地域経済に関連する部署の職員が任命されています。
これらの人が選定企業を訪問し、支援施策に関する情報提供や要望の聞き取りなどを行います。2018年度中に、選定企業の全てを訪問する予定です。

(3)選定証の交付
選定企業には、国からの期待を認識していただくために、全社に対して「地域未来牽引企業選定証」を交付しています。地域未来牽引企業に選定されたことで、これまで取引のなかった企業や金融機関から新規取引開始の打診があったり、選定企業同士のコラボレーションによる事業が生まれたりと、さまざまな効果が出てきています。

民間事業者による支援施策

国が設けている支援施策とは別に、大手民間事業者が独自に選定企業向けの支援メニューを設けている場合があります。その代表的な例は以下の2件です。

(1)株式会社みずほ銀行による選定企業向けの特別貸出ファンド
各都道府県に拠点を持つ同行が、選定企業向けの低利融資枠を創設、運用しています。同行では、この融資枠の利用を喚起して設備投資や海外進出を支援し、地域ビジネスを拡大して地方創生を図ります。

(2)株式会社マイナビによる選定企業の紹介イベント
大手人材広告企業である同社が、就職予定の高校生やその保護者など向けに選定企業を紹介するイベントを開催しています。地域の企業の魅力を発信することで、地元雇用の促進効果も期待できます。

参考:選定企業以外も活用できる!地域未来投資促進法における支援施策

地域未来投資促進法による支援スキーム

地域未来投資促進法による支援スキーム
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地域未来投資促進法は、地域の特性を活用した事業の生み出す経済的波及効果に着目し、これを最大化しようとする地方公共団体の取組を支援するものです。
支援の流れは図「地域未来投資促進法による支援スキーム」のとおりです。

同法に基づく支援施策は、選定企業以外でも活用できるものを含みますが、その利用に当たっては、国の同意を得た基本計画を策定する市町村および都道府県において、都道府県知事による「地域未来牽引事業計画」の承認を得ることが必要になります。なお、47都道府県で186の基本計画が策定されています。
地域経済牽引事業計画の承認申請については、最寄りの経済産業局でも相談に応じています。

例えば、以下のような支援措置があります。

(1)地域中核企業・中小企業等連携支援事業(うち戦略分野における地域経済牽引事業支援事業)
地域未来牽引事業計画の承認を受けた事業者が連携して行う、地域経済を牽引する事業に係る設備投資を支援します。
※補助上限額は5,000万円(連携事業者数に応じて最大で1億円)。非中小企業への補助額は、補助額全体の1/2未満。

(2)地域未来投資促進税制

各種優遇税制の早見表

各種優遇税制の早見表
(クリックすると拡大します)

先進性を有することや総投資額が2,000万円以上など、一定の要件を満たすことを国の確認を受けた事業について、設備投資金額の一定割合の特別償却または税額控除を受けることができます。

(3)補助金の優先採択などの優遇措置

「ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業」や「サービス等生産性向上IT導入支援事業」などの補助金では、地域未来牽引事業計画の承認を受けた事業者を審査の過程で加点するなどの優遇措置があります。

上記の他にも、地方創生交付金など他省庁の予算や、地方自治体によっては、固定資産税などの減免措置を活用することが可能です。詳しい内容については、各経済産業局、各都道府県・市町村にお問い合わせください。
あらゆる政策資源を集中投入することで地域経済を牽引する事業を支援し、地域の未来につながる投資を促進します。

選定企業の一部を紹介します

前述のとおり、多くの企業がこれまでに選定されています。その選定企業から2社の事例を紹介いたします。

事例紹介1:金型業界の風雲児を目指し、成長市場に積極展開する企業

熟練の思考回路をAIで可視化。加工技術に磨きをかける

熟練の思考回路をAIで可視化。加工技術に磨きをかける

株式会社IBUKI(山形県西村山郡河北町)は、1933年、東京都品川区で木型メーカーとして創業、金型製造へ事業転換して電機大手向けの販売で規模を拡大しました。2008年度から業績が厳しい時代を迎えますが、2014年に製造業コンサルティングのO2(東京都品川区)が株式を取得したことで、大胆な人事異動、組織改革を断行します。
IBUKIの代表取締役に就いた松本晋一さんは、「金型業界の風雲児」を目指すとし、得意とする金型へのデザイン性の高い特殊微細加工を強みに、ブルーレイディスクレコーダーの筐体に高級感を与えるなど、さまざまな効果を生んでいます。同技術を武器に、自動車業界への進出にも成功しました。

同社の経営改革の鍵を握るのが、「IoT(モノのインターネット)・AI(人工知能)の活用」と「オープンイノベーションの推進」です。同社はO2グループのAI技術を活用し、ベテラン社員しか対応できなかった見積手法を形式知化することで、若手社員でも適切な見積書類を作成できるようになりました。受注確度が高まって採算割れの心配も減ったといいます。また、同業他社と提携し、IBUKIが加飾技術を供与する一方、他社のグローバル拠点網を活用する「オープンイノベーション」で、海外勢に対抗する狙いとしています。
同社では一連の改革が奏功し、2016年度に売上高8億円(前年度7億円)まで息を吹き返しました。今後は、高付加価値企業を目指し、アンテナ・ノイズの新要素技術開発や光学ベンチャーと世界初の映り込み防止機能の共同開発など、さらなる改革に邁進する考えです。

事例紹介2:品質の徹底、多品種少量生産を強みとする企業

スペースを拡大して生産能力を3割増やした新本社工場

スペースを拡大して生産能力を3割増やした新本社工場

株式会社ミズキ(神奈川県綾瀬市)は、精密ネジやシャフトなど締結部品を提供する、1939年創業の老舗メーカー。大手企業を含む国内外の約70社と取引しています。
真ちゅうやステンレスなどのコイル材をそのまま製品に高精度加工できる技術を持ち、2,000種類以上の締結部品を多品種少量生産できます。同社代表取締役の水木太一さんは、「さまざまなお客さま、多様なニーズに対応できるのが当社の強み」と胸を張ります。
受注は好調で、現在、主要な売上を占める自動車ヘッドランプ用を筆頭に、デジタルカメラ用、ハードディスク駆動装置用などの精密ネジやシャフトを製造しています。
2017年12月には、延べ床面積3,500平方メートルの新本社工場が完成しました。新分野への進出など将来を見据え、生産能力を最大で従来比約3割増に引き上げました。NC(数値制御)旋盤も導入し、協力工場に委託していた切削加工の内製化を果たしています。

5~10年後にはロボット、航空宇宙分野に力を入れたいとしており、航空宇宙分野に使われる軽量なチタンの加工技術を磨くため、歯科用のインプラント加工も始めました。水木さんは「締結部品で社会に貢献するという企業方針は変わらないが、最新の技術動向をつかんでおくことが重要」と語ります。工場へのIoT導入も検討しています。
ハード面だけでなく、経営理念の浸透などソフト面の充実も図っており、「国内外からありがとうの言葉を集める」のスローガンを掲げ、新入社員向け冊子やポスターなどを通じて社内浸透に努めています。

経済産業省の広報サイト「METI Journal」では、今回紹介した企業の他にも、選定企業の取組を紹介しています。

地域未来牽引企業サミット開催レポート

選定企業同士が交流する場として、さまざまなイベントが開催されています。全国の選定企業が集まる交流の場としては、2018年4月に「地域未来牽引企業サミット in 会津若松」、7月に「地域未来牽引企業サミット in 熊本」を開催しました。その他にも、ブロックごとの選定企業が集まるシンポジウムの開催が予定されています。
今回は、両サミットの開催レポートをお伝えします。

(1)「地域未来牽引企業サミット in 会津若松」開催レポート

2018年4月14日、會津風雅堂(福島県会津若松市)で「地域未来牽引企業サミット in 会津若松」が開催されました。
初の開催で世耕弘成経済産業大臣、内堀雅雄福島県知事、室井照平会津若松市長ら来賓を始め、選定企業の代表者、産業支援機関の関係者ら約1,000人が参加しました。
選定証授与式では、出席した選定企業に世耕大臣が選定証を授与しました。

~世耕大臣による挨拶概要~

開会挨拶をする世耕弘成経済産業大臣

開会挨拶をする世耕弘成経済産業大臣

世耕大臣は、参加者への御礼を述べ、「地域未来牽引企業の皆さまが一堂に会し、地域未来牽引企業の考え方、地域未来投資促進法の考え方を分かっていただきたいという思いで、サミットを開催させていただきました」と開催の意義を説明しました。
そして、「地域未来牽引企業の皆さまと、サポートさせていただく立場の人々が、いろいろな意見交換・情報交換を深め、そんな中から新たなビジネスが出てくる、あるいは意見をぶつけていただく、今日はそういう場にしていきたいと思います」と期待を込めました。
開催場所の選定について、「福島第一原発事故の風評を吹き飛ばしていただく一助にしていただきたいという思いで、決めさせていただきました」とその理由を説明し、「会津若松市の素晴らしい風土を楽しんで帰っていただき、『よかったよ、あなたも行ったら』という声を、全国で広げていただきたいと思います」と参加者に呼びかけました。

(2)「地域未来牽引企業サミット in 熊本」開催レポート

2018年7月21日、ホテル日航熊本(熊本県熊本市)で「地域未来牽引企業サミット in 熊本」が開催されました。
世耕弘成経済産業大臣、蒲島郁夫熊本県知事、大西一史熊本市長ら来賓をはじめ、選定企業の代表者、産業支援機関の関係者ら約500人が参加しました。
それぞれの来賓挨拶に続いて、選定に係る有識者委員会委員長を務める東京大学の坂田一郎大学院工学系研究科・技術経営戦略学専攻教授総長特任補佐による基調講演や、産業支援機関による施策紹介などが行われました。また、選定企業6社による先進事例の紹介もありました。

~世耕大臣による挨拶概要~

選定企業に熱い思いを語る世耕弘成経済産業大臣

選定企業に熱い思いを語る
世耕弘成経済産業大臣

世耕大臣は、西日本豪雨災害の被災地へのお見舞いを述べ、大きな災害が起きている中でのサミット開催について議論があったとしながらも、「私はむしろこの時期だからこそ開くべきだと決断しました。2年前の地震で多くの企業が被災し、そこから復興する熊本の『創造的復興』を全国に発信することが、この時期だからこそ重要」と力を込めました。
そして、豪雨被災地の企業に「熊本のように前を向いて、復旧復興に取り組んでほしいと思います」と激励しました。
承認済みの808件の地域未来牽引事業計画のうち、264の計画は選定企業によるものであることを説明し、「予算、税、金融、規制緩和など、ありとあらゆる政策手段を集中、総動員させて支援していきます」と世耕大臣。
「皆さまは経済産業省にとってかけがえのないパートナーです。皆さまも地域のために頑張っていただきたいと思います」と選定企業および施策にかける熱い思いを披露しました。

~坂田教授による基調講演の概要~

基調講演を行う坂田一郎東京大学大学院大院教授

基調講演を行う
坂田一郎東京大学大学院大院教授

坂田教授は、「第4次産業革命という大きなパラダイムシフトが到来する中、その詳細について他より先に見出すことができれば、大きなチャンスとなります」と指摘しました。
続いて、地域、未来、牽引のそれぞれの言葉のコンセプトについて、「『地域』は、グローバル化の中で遠距離、近距離の交流やネットワークを持つこと。『未来』は、スマート化し繋がる産業。『牽引』は、自分の周りの多数の企業と密な関係を持ち、コネクターハブとなる概念」と説明しました。
最後に、選定の考え方や選定企業に対する支援策について述べました。




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