Vol.74 労働時間を見直し、生産性向上を実現する先進的な取り組み!~「勤務間インターバル制度」とは~

2018年6月29日に成立した「働き方改革関連法」に基づき「労働時間等設定改善法」が改正され、2019年4月1日から「勤務間インターバル制度」が努力義務として規定されます。
「勤務間インターバル」とは、終業時刻から次の始業時刻の間に一定時間の休息を設ける仕組みであり、導入することで残業時間の減少や業務効率化が期待されます。
今回は、制度導入のメリットや導入した企業の成果事例、導入支援に係る助成金制度などを紹介します。
※本記事は、2018年11月5日時点の取材をもとに執筆・掲載しています。

「勤務間インターバル制度」とは

休息時間を確保し、労働時間を見直す「勤務間インターバル」とは

勤務間インターバルの仕組み

勤務間インターバルの仕組み
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2019年4月1日から、「勤務間インターバル制度」の導入が事業主の努力義務として規定されます。
制度の導入にあたっては、自社の就業規則などに規定することが考えられます。

「勤務間インターバル」とは、図「勤務間インターバルの仕組み」のとおり、1日の勤務終了後、次の出社までの間に一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組みです。
例えば、就業時間が8時から17時と規定されている場合、残業を23時まで行うと次の日の始業時間までの休息時間は9時間です。しかし、「勤務間インターバル制度」を導入することで始業時間を遅らせるなどの規定を設けて、11時間など十分な休息時間を確保することができます。

このように、一定の休息時間を確保することで、労働者が十分な生活時間や睡眠時間を確保でき、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら働き続けることができるようになると考えられています。また、企業にとっては、人手不足解消や生産性向上につながると期待されています。

「勤務間インターバル制度」導入の背景

6カ国における年平均時間

6カ国における年平均時間
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「勤務間インターバル制度」の導入を推進する理由の1つに、我が国の労働環境があります。
図「6カ国における年平均労働時間」のとおり、2016年における6カ国(日本、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国)の就業者1人当たりの平均年間総実労働時間を比較すると、我が国は欧州諸国に比べ、年平均労働時間が長いことが分かります。

また、図「6カ国における長時間労働者の構成比(週あたりの労働時間)」をみると、我が国は、韓国とアメリカに次いで3番目に長時間労働者の構成割合が高く、特に49時間以上働いている労働者の割合が高いことが分かります。

6カ国における長時間労働者の構成比(週あたりの労働時間)

6カ国における長時間労働者の構成比(週あたりの労働時間)
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継続的な長時間労働は、健康面に悪影響を及ぼすだけでなく、過労死などにつながり、遺族や企業、社会にとって大きな損失につながりかねません。
近年は人手不足問題もあり、より1人ひとりの負担を低減するべく業務の効率化などに取り組む必要があります。

このような背景から「勤務間インターバル制度」は、過労死防止にも資する取組の1つとして「働き方改革」に組み込まれています。

「勤務間インターバル制度」の重要性

「勤務間インターバル制度」の概要や活用するメリットについて、同制度の普及促進を進めている厚生労働省労働基準局労働条件政策課の鈴木信幸係長に伺いました。

厚生労働省労働基準局 労働条件政策課 鈴木信幸設定改善係長

厚生労働省労働基準局
労働条件政策課 鈴木信幸設定改善係長

制度化することで、十分な休息時間確保につながります

「勤務間インターバル制度」は、2018年6月29日に成立した「働き方改革関連法」に基づき、「労働時間等設定改善法」が改正され、その取組の1つとして盛り込まれました。「働き方改革関連法」は、以下の2つのポイントを主軸としています。

(1)労働基準法や労働安全衛生法、労働時間等設定改善法の改正などによる「労働時間法制の見直し」
(2)パートタイム労働法や労働契約法、労働者派遣法の改正などによる「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」

同制度は、上記ポイントのうち「労働時間法制の見直し」の中に盛り込まれており、導入することで労働者は生活時間を確保でき、十分な睡眠時間の取得が可能となります。
労働者が健康的にいきいきと働くことができれば、企業にとっては生産性向上や人手不足解消につながります。
この制度は、我が国の長時間労働を低減し、多様で柔軟な働き方ができる社会を実現するきっかけになると考えています。

では、我が国の企業の多くは勤務間インターバルを導入していないのでしょうか。
厚生労働省が2018年に取りまとめた「就労条件総合調査」によると、1年間を通じて実際の終業時刻から始業時刻までの間隔が11時間以上空いている労働者が「全員」であると答えた企業割合は40.5%、「ほとんど全員」と答えた企業は30%を超えていました。
実は、多くの企業が労働者に対して、11時間以上の休息時間を確保しているのです。
しかし、制度として導入していない場合、企業によっては繁忙期や重大なトラブル対応などで休息時間を確保できない場合が考えられます。
「勤務間インターバル制度」を導入しきちんと制度化することで、上記のような労働環境を改善することができます。また、その他にもさまざまな効果が期待できます。

勤務間インターバル制度導入で得られるメリット

勤務間インターバル制度を導入することで企業が得られるメリットは、主に以下の3つです。

(1)休息時間確保で労働者の健康を守る
同制度を導入することで、長時間労働を防ぐことができます。また、深夜労働を行った場合でも十分な休息時間を確保することで、健康面への悪影響を低減させることができます。
上記の効果から労働者の健康やモチベーションの維持につながるため、企業の生産性向上を図ることができると期待されています。

(2)ワーク・ライフ・バランスが促進される
同制度を活用することで、労働者の生活時間を確保でき、ワーク・ライフ・バランスの促進を図ることができます。また、仕事以外の時間が充実することなどにより労働者のキャリアアップにもつながり、結果的に仕事に還元することもできます。

(3)人材確保につながる可能性
近年、深刻な人手不足が問題となっていますが、同制度を活用することで(1)や(2)の効果が見込まれ誰もが働きやすい労働環境を構築することができます。それにより、離職者の低減や企業イメージ向上による就職希望者の増加などにつながる可能性があります。

勤務間インターバル制度を導入する上での注意点

勤務間インターバル制度は、導入する上で検討すべき項目があります。ポイントとして、以下の4つなどがあります。

(1)インターバル時間数
「労働時間等設定改善法」では、インターバル時間数の設定について下限や上限を定めていません。一律に時間数を設定する方法や職種によってインターバル時間数を設定する方法など、企業ごとの実状に合わせてインターバル時間数を設定する必要があります。

(2)対象とする社員や適用除外の規定
制度導入に当たって、全社員を対象にする場合や業務の特徴によって特定の職種のみ適用する場合など、対象者を制限するといった導入方法が考えられます。また、自然災害や顧客とのトラブル対応など、適用除外とする場合を定めることも可能です。

(3)休息時間が次の勤務時間に及ぶ場合の勤務時間の取扱い
繁忙期や重大なトラブル対応などで終業時刻が遅くなり、休息時間が次の勤務時間に及ぶ場合があります。その場合、休息時間と次の所定労働時間が重複する時間を「働いたもの」とみなす方法や次の始業時刻を繰り下げる方法などがあります。

(4)管理方法の構築や就業規則の整備
労働時間を適正に把握するためにタイムカードや勤怠管理システムなどを導入する他、制度として導入するため、自社で定める就業規則などの整備を行う必要があります。

勤務間インターバル制度を導入した企業の成果事例

「勤務間インターバル制度」を導入し、残業時間の削減や労働環境の改善、生産性向上などの成果を得た中小企業の事例を、厚生労働省の「勤務間インターバル制度導入事例集」から紹介します。

事例1 制度導入で、残業時間削減と従業員満足度の向上が実現

株式会社スリーハイ

株式会社スリーハイ

神奈川県横浜市に所在する株式会社スリーハイでは、従業員数が31名と少数ながらも顧客ニーズに合った工業用・産業用ヒーターをオーダーメイドで製造しています。
同社は、2018年3月から勤務間インターバル制度を導入し、残業時間の削減と従業員満足度向上を実現しました。

同制度の導入前は、残業や休日出勤の事前把握が必要である中、社員の申告が滞り、申告しないことが当たり前になっていました。しかし、従業員満足度への影響や残業時間の現状に危機感を感じていた同社社長は、社会保険労務士の支援を受けて同制度を導入しました。規定では従業員全員を対象とし、インターバル時間を9時間に設定することで深夜残業の抑制などを図りました。

当初、同社社長が社員に対してアンケートを取ったところ、残業に対して「繁忙期に残業があるのは仕方がない」や「勤務間インターバル制度の導入で顧客が減らないか」などの消極的な意見がありました。しかし、導入後は業務の「見える化」が進んだことで、残業時間の削減や業務の効率化につながりました。また、社員の意識も変わり、互いの業務を助け合う気運も醸成されました。

同社社長は、この取組が会社の知名度やイメージの向上に寄与するとともに、雇用面でも効果を期待しています。今後は、フレックスタイム制度との併用も検討しています。

事例2 健康第一を求めて制度を導入、残業時間30%削減に成功

株式会社スナップショット

株式会社スナップショット

株式会社スナップショットは愛知県名古屋市に本社を構え、従業員20名で勤怠管理システムなどの開発を手がけています。
同社は、2017年3月に厚生労働省が開催した「勤務間インターバル制度導入セミナー」で情報を得て、導入を決めました。

同社では繁忙期の深夜作業やシステムのサーバーメンテナンスで夜間勤務が必要になる場合があり、社長は十分な睡眠時間や休息時間が確保できない事態が発生しかねない、と危機感を持っていました。
そのため、同制度を導入し、全社員を対象に11時間のインターバル時間を設定しました。休息時間を確保するため出社時間を遅らせた場合も、終業時刻を変更せず定時での退社を許可し、所定労働時間が短縮される場合でも給与支払の対象としました。

同制度を導入した結果、同社では時間外労働時間が約30%も削減され、業務効率も向上したといいます。また、社員の健康確保や時間意識の改革、自己啓発時間の確保などに効果がみられました。具体的には、社員の間では深夜残業を控える意識が芽生えた他、読書や業界リサーチなど、社員のキャリアアップに活用できる時間が生まれました。さらに、中途採用で入社した社員から、同制度を魅力的に感じたといった声が上がるなど、人材確保の面でも強みになると感じています。

短時間で生産性の高い仕事ができるようになると、会社全体の競争力や製品開発の向上につながります。通常の業務をこなしながら新製品開発に取り組むことができるサイクルを生み出せるのではないか、と今後に期待が高まります。

上記2つの事例の他、厚生労働省では、2016年度と2018年度「勤務間インターバル制度導入事例集」で同制度を導入した企業の事例を紹介しています。
また、事例集は下記サイトから閲覧することができます。

助成金制度やセミナーで、中小企業の制度導入を支援

厚生労働省では、中小企業や小規模事業者の皆さまを対象に勤務間インターバル制度の導入を支援する助成金を新設し、2017年度は、約1580企業が支援を受けました。
2018年度の「時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」は、昨年度と比べ1.5倍の企業が申請しており、制度の認知度は徐々に高まってきています。

助成対象者は、労働者災害補償保険法の適用事業主であり、以下の(1)から(3)のいずれかに該当する事業場を有する中小企業事業主です。

(1)勤務間インターバルを導入していない事業場
(2)既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場
(3)既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場

助成金の支給対象となる取組は、勤務間インターバル制度の導入に当たり、同制度に係る研修や就業規則・労使協定などの作成に係る費用、コンサルティング費用、勤怠管理に活用するシステムツールや労働能率増進に資する設備導入などに係る経費などで、最大50万円まで助成します。
2018年度の申請締切は、12月3日(月)までです。
2019年度も同制度の導入支援に係る助成金制度を実施する予定です。

また、2018年9月から、47都道府県において「勤務間インターバル制度導入セミナー」を実施しています。同制度の効果や導入方法、助成金制度などを解説します。また、働き方改革の概要についても併せて紹介しています。
このセミナーは3月まで実施しており、参加費は無料です。

担当者からのメッセージ

中小企業や小規模事業者の皆さまにとっては、人材確保は欠かせないポイントです。
「勤務間インターバル制度」を導入し、労働環境を整備してよりよい職場づくりに取り組むことで、人手不足解消を図ることができます。また、中小企業や小規模事業者だからこそ「取組に対して意識の共有がされやすい」などの強みもあります。
「働き方改革」の取組の1つとして「勤務間インターバル制度」を導入して、「魅力ある職場づくり」→「人材の確保」→「業績の向上」→「利益増」の好循環を生み出し、誰もがさまざまな働き方を選択できるような職場づくりを進めていきましょう。

「勤務間インターバル制度」については、専用サイトにてさまざまな取組や支援を紹介しています。




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