Vol.76「ものづくり日本大賞」に見る、ものづくりの新しい方向性

内閣総理大臣表彰「ものづくり日本大賞」は、本年度で8回目となる募集を実施しています。日本のものづくりを牽引する人材を表彰するもので、本募集では、既存のものづくりの枠にとどまらず、さまざまなものをつなげることで新たな付加価値を創出する取組にも対象を広げ、「Connected Industries-優れた連携」部門を新たに創設しました。
同賞について、前回募集からの変更点や受賞のメリットなどを、経済産業省製造産業局ものづくり政策審議室の住田光世課長補佐に伺いました。
※本記事は、2018年11月13日時点の取材をもとに執筆・掲載しています。

新時代のものづくりに挑戦する人を顕彰とは

経済産業省製造産業局 ものづくり政策審議室 住田光世課長補佐

経済産業省製造産業局
ものづくり政策審議室
住田光世課長補佐

「ものづくり日本大賞」は、経済産業省と国土交通省、厚生労働省、文部科学省が連携して実施するもので、ものづくりの第一線で活躍し、我が国の産業界を支える人材を顕彰する制度です。受賞対象は、新時代のものづくりに挑戦する人(個人もしくはグループ)です。内閣総理大臣賞をはじめとする各種の賞を授与し、ものづくり人材の意欲を高めて産業競争力の強化につなげることを目的としています。

募集は2年に1度実施しており、第8回となる今回は「製造・生産プロセス」「製品・技術開発」「伝統技術の応用」「Connected Industries-優れた連携」「人材育成支援」の5部門で受賞候補者を募集します。それ以外の部門は、既存の各種大臣表彰制度等の受賞者などの中から選考を行います。全ての受賞分野については、図「ものづくり日本大賞の概要」をご覧ください。

ものづくり日本大賞の概要

ものづくり日本大賞の概要
(クリックすると拡大します)

5部門の募集は2018年11月16日から開始しており、締切は2019年1月25日です。厳正な審査を行い、2019年秋に受賞者を決定して表彰式を開催します。 なお、応募は候補者本人が行うのではなく、候補者を推薦する方(推薦者)が2名の賛同者を得て申請する必要があります。

部門新設「つながり」で価値創造

ソサエティ5.0につながるコネクテッド・インダストリーズ

ソサエティ5.0につながるコネクテッド・インダストリーズ
(クリックすると拡大します)

今回の募集では、「Connected Industries-優れた連携」部門を新設しました。Connected Industries(コネクテッド・インダストリーズ)は経済産業省が推進する概念で、第4次産業革命に伴って生まれたIoT(モノのインターネット)などの新しいデジタル技術を活用し、個社と個社の壁や業種の壁を乗り越えた連携、または機械とモノの融合などを実現することにより、社会課題の解決を目指すものです。こうした取組を加速させるため、今回の募集では従来あった部門をさらに発展させ、「コトづくり」を広く包含するような表彰部門に改めました。
同部門はデータの共有などで機械や人をつなぎ、イノベーションを創出して社会課題を解決する人材を評価するもので、従来の対象に加え、人や機械、技術がつながるようなものを対象としてイメージしています。
優良事例を発掘、表彰してコネクテッド・インダストリーズの有用性を伝えていくことで、こうした取組をさらに広め、超スマート社会「ソサエティ5.0」の実現につなげることを狙いとします。

他に今回の変更点としては、配点を変更し、「社会課題への対応」につながる内容を重点的に評価するようにしました。これは単なる「技術的」な側面のみならず、サービス・ソリューション提供も含めた幅広い取組により新たな付加価値を創出し、社会課題を解決している、またはその見込みがある方を、積極的に評価しようとするものです。
我が国の製造業は緩やかに拡大する一方、人手不足が深刻化しています。特に人工知能(AI)などのデジタル技術に詳しい人材が少なく、欧米に比べ人材育成が遅れているといわれています。また公益財団法人日本生産性本部の調査によると、就業者1人当たりでみた労働生産性は経済協力開発機構(OECD)の35カ国の中で我が国は21位と劣位にあり、さらに近年では日本企業が強みとする品質の面でも問題が相次いで報じられています。
今後、人手不足対策や生産性の向上がさらに求められる中、国(経済産業省)は新しいものづくりの動きを後押しします。

コネクテッド・インダストリーズの事例を紹介

上述のとおり、第8回ものづくり日本大賞で新設された「Connected Industries-優れた連携」部門では、デジタル技術を活用し、さまざまな「つながり」を構築することで新たな付加価値の創出や課題解決を進めた個人またはグループを表彰します。同部門では、以下のような事例の表彰を想定しています。

「Connected Industries-優れた連携」部門の想定事例

「Connected Industries-優れた連携」部門の想定事例

受賞者を生んだ企業が得たメリット

ビジネスチャンス創出、事業に寄与

ビジネスチャンス創出、事業に寄与
(クリックすると拡大します)

我が国の製造業が強みとしてきた品質管理で問題が相次いでいますが、海外企業では外形検査のデジタル化が進んでおり、品質管理の効率化や不正防止に向けて日本でも活用する必要があります。ただ、品質管理の最終工程は最もデジタル化が難しいと言われています。そこで「ものづくり日本大賞」では、こうした課題に積極的に取り組んでいる企業を評価できるよう、今回から社会的課題への対応に関する採点の配分を重くしました。品質不正や人材不足など、我が国の製造業が直面している社会的課題の解決を通じて新たな付加価値を生み出す人物や取組を高く評価したいと考えています。
経済産業省では、ITの知識を身に付けてもらうためのリカレント(学び直し)教育などの政策を実施してきましたが、実際にものづくりの現場でデジタル技術を駆使している取組や人材を発掘することも重要です。本賞を通じて事例をたくさん集めて紹介し、こうした取組や人材が増える契機にしたいと考えています。

過去の受賞者からは、「販路や人脈が広がった」「展示会での引き合いが増えた」「社内の若手社員の士気が上がった」といった前向きな声をたくさん頂いています。今回の募集では、前回募集を上回る300件以上の応募を目指しています。皆さまもぜひご応募ください。




すべての特集を見る