Vol.78持続可能な企業へと発展するために!~中小企業向けSDGs活用ガイドを紹介~

2015年9月に、国際連合ニューヨーク国際本部において採択された国際目標である「SDGs(持続可能な開発目標)」。
気候変動や生物多様性など環境に関わる問題から教育やジェンダー、貧困および紛争などを課題とし、それらを17のゴールに分けて、課題解決を目指すものです。
環境省では、SDGsの取組促進のため、中小企業や小規模事業者向けに「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド」(以下「SDGs活用ガイド」という。)を作成しました。
今回は、SDGs活用ガイドからSDGsを取り組む上でのメリットや具体的な取組方法について取り上げ、事例などを紹介します。
※本記事は、2018年12月4日時点の取材をもとに執筆・掲載しています。

世界共通の目標である「SDGs」とは

SDGsのロゴ(日本語版)

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「SDGs」とは、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことであり、2015年 9月に国際連合で採択されました。
2030年に向けて、発展途上国や先進国などにかかわらず、すべての国を対象に、経済・社会・環境の3つの側面のバランスが取れた社会を目指す世界共通の目標として、17のゴール(目標)が定められています。
17のゴールは以下のとおりです。

SDGsで規定された17のゴール(目標)

SDGsで規定された17のゴール(目標)
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(1)貧困をなくそう
(2)飢餓をゼロに
(3)すべての人に健康と福祉を
(4)質の高い教育をみんなに
(5)ジェンダー平等を実現しよう
(6)安全な水とトイレを世界中に
(7)エネルギーをみんなに そしてクリーンに
(8)働きがいも経済成長も
(9)産業と技術革新への基盤をつくろう
(10)人や国の不平等をなくそう
(11)住み続けられるまちづくりを
(12)つくる責任 つかう責任
(13)気候変動に具体的な対策を
(14)海の豊かさを守ろう
(15)陸の豊かさも守ろう
(16)平和と公正をすべての人に
(17)パートナーシップで目標を達成しよう

17のゴールには、さらに具体的なターゲット(達成基準)が定められており、全部で169項目あります。取り組みたいゴールに該当するターゲットを1つ達成すると、そのゴールに取り組んだことになります。
SDGsは、自治体などに対して報告義務や取り組む上での要件審査などはなく、誰でも取り組むことができます。
昨今、ビジネスにおいてはSDGsへの取組が企業価値や投資の面で評価の対象になるなど、SDGsの重要性が高まっています。また、我が国では2016年5月20日に内閣総理大臣を本部長としたSDGs推進本部が立ち上がりました。

ビジネスの世界で重要視されている「SDGs」

環境省は、すべての企業の持続的発展に向け「SDGs活用ガイド」を作成しました。特に、本ガイドは、中小企業や小規模事業者を主な対象として、環境保全などに関する取組を中心とした内容を紹介しています。
今回は、本ガイドの制作を担当した環境省大臣官房環境経済課民間活動支援室の長谷川学室長補佐に話を伺いました。

環境省大臣官房環境経済課  民間活動支援室 長谷川室長補佐

環境省大臣官房環境経済課 民間活動支援室
長谷川室長補佐

SDGsは中小企業の存立にも関わりがあります

近年、「SDGs」というワードはビジネスの業界で重要性を持ち始めています。政府や自治体のみならず民間企業においても取り組む機運が高まっており、取引条件として評価される対象になりつつあります。

「SDGs」が注目されている理由として、少子高齢化による人材不足や消費者ニーズの多様化などが進み、さまざまな課題を抱える企業が増加していることがあげられます。特に、中小企業や小規模事業者の間では事業継続や企業存立などの課題が深刻化しています。そのような企業が存立し発展していくためには、社会の動きを読み取り長期的な視点で自社の将来を考え、持続的な発展につながる経営と事業展開を図る必要があります。
SDGsには、社会が抱えているさまざまな課題が網羅されており、これらの課題に対応することは、企業にとって経営リスクの回避とともに社会への貢献や地域での信頼獲得につながります。

本ガイドでは、環境省大臣官房環境経済課民間活動支援室がSDGs の取組方法などについてわかりやすく解説しています。本ガイドは環境課題に関する内容が充実しています。

取組のポイントやメリットとは?

SDGsの17のゴールと企業の取組の関連性を当てはめた例

SDGsの17のゴールと企業の取組の関連性を当てはめた例
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SDGsに取り組む際、図「SDGsの17のゴールと企業の取組の関連性を当てはめた例」のとおり、現在まで実施してきた企業の取組と17のゴールを紐づけることで、「企業イメージの向上」「社会課題への対応」「生存戦略になる」「新たな事業機会の創出」などのメリットにつながります。SDGsの取組を対外的にアピールすることで、企業の信頼性が高まり人材確保にも効果がある他、従業員のモチベーション向上に寄与するなど、社内教育としても効果があります。また、SDGsの取組をきっかけに、投資などの条件で有利に働いたり、地域との連携や新規取引先の獲得、新規事業開拓なども期待できます。
新しく何かを始めなくても自社が取り組んでいる事業や、節水・節電、社員の福利厚生に係る制度などとSDGsのゴールを紐づけることで、多大なコストをかけずに、ビジネスチャンスの機会を創出することが可能になるのです。

SDGsは大企業のほうが取り組みやすい印象を持たれがちですが、意思決定のスピードや地域との密着性、柔軟性が高いなどの面から、中小企業や小規模事業者にとってもSDGsは取り組みやすいと考えられます。

自社の専門性や強みでSDGsに取り組む中小企業を紹介

SDGsは自社の強みや専門性を活かして取り組むことができます。今回は、「SDGs活用ガイド」から、SDGsに取り組んだ中小企業などを3社紹介します。

事例1 自社の強みを活かしたSDGsの取組でカンボジアを支援

現地で実施している事業スキーム図

現地で実施している事業スキーム図
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1966年に設立されたテラオライテック株式会社は、福井県越前市に社を構える従業員約36名規模の企業です。電気工事や設備工事、リフォーム事業を営む他、アパレル業界や福祉業界、飲食業界、教育への参入も果たしています。

同社社長は、自社の取組について改めて意味づけができるとともに、自社が抱える課題を絞り込めるのではないかと考え、SDGsの取組を進めました。掲げた目標は、自社の強みを活かすことができるゴール6「安全な水とトイレを世界中に」とゴール7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」です。

はじめに、同社は部門ごとに掲げたゴールについてアイデアを話し合い、目標を立てていきました。また、社員との間でSDGsに対する共通認識を得るために、会議や社内研修の場を使って理念の共有を行うとともに、社内や社用車にSDGsのステッカーを掲示して日常的にSDGsを目にする機会を作った他、名刺や会社パンフレットにもアイコンを印刷して、SDGsの取組を対外的に示しました。

同社では新たな取組として、発展途上国・カンボジアのインフラ支援事業に取り組んでいます。図「現地で実施している事業スキーム図」は、SDGs活用ガイドに掲載したものよりさらに進化を遂げた最新版であり、現地では「テラオ式」と呼ばれています。カンボジア政府もこのサイクルを国内全域に広げたいと検討を進めており、今後に期待が高まります。

事例2 SDGsで地域住民と湾湖の環境改善に取り組む

収穫祭イベントのチラシ

収穫祭イベントのチラシ
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石川県金沢市に所在する農事組合法人Oneは2013年に設立。従業員8名で水稲やれんこん、にんにく、ジャガイモの生産販売事業を行っています。
同法人は、自分達の理念とSDGsに共通点があったことからSDGsに取り組むことを決意し、目標として掲げたゴール2「飢餓をゼロに」に関連して、ゴール6「安全な水とトイレを世界中に」やゴール12「つくる責任 つかう責任」などの課題解決に取り組みました。

ゴール達成に向けて、同法人は生産した農作物の収穫祭イベントを開催しました。農産物のPRだけでなく、地域の資源資本を活用する上で、生産者の責任として保全に取り組み持続可能な農業を推進する必要があると考え、地域住民にとって身近な河北潟にスポットをあて、農業排水が濁りの一因となっている現状を紹介。また、入場料という形で河北潟の水質浄化活動に係る募金にも参加してもらいました。入場者は200名ほどになり、SDGsの展示も行うなど普及啓発にも取り組みました。

同法人の副代表は、「SDGsと現在までの取組を紐づけることで取り組む意義の再認識や整理ができ、『自分たちは何のためにやっているのか』ということを改めて考えるきっかけになりました」と語り、現在までの自社の取組に自信が持てたと言います。
現在は、循環型農法の充実に向け、地域連携型の堆肥工場を建てる準備を進めるなど、SDGs取組当初に構想されたプランの実現のため事業に取り組んでいます。

事例3 エコアクション21での取組とSDGsをマッチング

「月刊まいにちSDGs」創刊号

「月刊まいにちSDGs」創刊号
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来ハトメ工業株式会社は、1946年に創業し、埼玉県八潮市で主アルミ電解コンデンサ用ケースをはじめとする各種アルミ製品の製造を行っています。同社は、2010年にエコアクション21認証を取得しており、継続して環境活動に取り組んできました。大企業のようなCSR部門がない中小企業にとってチャンスだと考えた1人の社員が、積極的にさまざまな取組を実施し、会社全体として取組を拡大していきました。

同社ではSDGsに取り組む際、社内教育に力を入れました。例えば、社内で実施している環境活動の記録簿に、関連するSDGsのゴールのアイコンを貼り活動について意識づけを行った他、社員に仕事やプライベートで取り組みたい目標を考えてもらい、それを「私のSDGs」と名づけ、社内掲示板で共有するなど、日常的にSDGsに触れる機会を創出。また、社内掲示物としてSDGs情報を盛り込んだ「月刊まいにちSDGs」を創刊した他、毎月実施している生物多様性に関する社内テストでSDGs関連の問題を出題するなど工夫しました。

これまでの経験を活かして社内にSDGsを浸透できたとともに、自社で設定した取組内容とSDGsを紐づけたことで、新たな課題を抽出することができました。今後は自社の環境経営目標や環境経営計画にSDGsを組み込んで、SDGsに対応した環境活動をスタートさせる予定です。

上記3社以外にも、外務省「JAPAN SDGs Action Platform」では、さまざまな取組事例を紹介しています。

詳しくはこちら

SDGsに係る支援事業

省庁や全国の自治体は、SDGsに係るさまざまな支援事業を実施しています。今回は、2つの支援事業を以下に紹介します。

(1)地方創生SDGs官民連携プラットフォーム
内閣府では、国内でのSDGs実施の促進およびそれに資する「SDGs未来都市」を推進し、地方創生につなげることを目的に、地方自治体や民間企業、NGO・NPO法人、大学および研究機関などが意見共有などできる官民連携の場として、「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」を設置しています。本プラットフォームでは、次のような支援を行っています。

a)マッチング支援
研究会での情報交換や課題解決コミュニティの形成

b)分科会開催
会員提案による分科会設置、課題解決に向けたプロジェクトの創出など

c)普及促進活動
国際フォーラムの開催、展示会への出展、HPやメーリングリストでの情報発信、プラットフォーム後援名義発出など

また、プラットフォーム内で、上記以外の支援事業も紹介されています。
地方創生SDGs官民連携プラットフォームはこちら

(2)ジャパンSDGsアワード
2017年度から「ジャパンSDGsアワード」という表彰制度が開始しています。
民間企業やNGO・NPO法人、地方自治体、学術機関、各種団体などを対象にSDGs達成に資する優れた国内外の取組を行っている、日本に拠点のある企業や団体に表彰を行う制度です。
第2回ジャパンSDGsアワードは2018年12月21日に発表され、株式会社日本フードエコロジーセンターが内閣総理大臣賞を受賞しています。

「ジャパンSDGsアワード」について詳しくはこちら

担当者からのメッセージ

環境省大臣官房環境経済課  民間活動支援室 長谷川室長補佐

環境省大臣官房環境経済課 民間活動支援室
長谷川室長補佐

SDGs 活用を検討したり取り組もうとされている中小企業や小規模事業者の皆さまから「SDGsは難しい」といったお声をいただくことがあります。また、環境活動を専門とした部署を持つ大企業とは異なり、中小企業や小規模事業者の皆さまは仕事の合間に取り組まなければならないなど、容易に始めることが難しい環境であると考えられます。そのため、当室で作成した活用ガイドは、専門用語やSDGsの仕組みを分かりやすくかみくだき、3部構成で作成しています。
まずは概要版をご覧になって興味・関心が高まった方は、ぜひ本編・資料編を読んで具体的な取組方法などを知っていただければと思います。
SDGs活用ガイドは環境省ホームページからダウンロードすることができます。

「持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド」はこちらから

SDGs は、PDCAサイクルを回して自社の経営を考慮しながら、達成すべきゴールを定め取り組んでいくことが重要です。今回紹介した企業事例などを参考に、ぜひ取組を進めていただきたいです。




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