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ミラサポ総研Vol.86『仕事と育児・介護の両立支援で、社員がずっと働きたくなる会社へ』では、育児・介護と仕事を両立させる環境を整えることの重要性や、体制づくりをサポートする「中小企業のための育児・介護支援プラン導入支援事業」、取り組みに活用できる助成金をご紹介しました。

本記事では、育児と仕事の両立を希望する社員のためにテレワークに取り組んでいるブランコやすべり台、ジャングルジム等の公園遊具や健康器具を製造・販売する、日都産業株式会社(東京都杉並区・1939年創業)の事例をご紹介します。取り組みのきっかけ、実施までの準備、実際に取り組んだからこそ把握できた課題など、総務部 萩原 雅和係長にお伺いしました。
※本記事は、2019年11月25日時点の取材をもとに執筆・掲載しています。

未来を見据えた社員からの声で『テレワーク』導入検討スタート

ミラサポ事務局:いつごろ、なぜテレワークの導入を検討されたのでしょうか。

萩原さん:世の中的に在宅勤務のような働き方が話題に上がるようになった、4年ほど前に検討を開始しました。経営陣から検討をするよう指示があったわけではなく、いつか育児をしながらでも当社で働き続けたいと考えた社員から、相談を受けたことがきっかけです。

弊社は遊具を作る会社です。相談をくれた社員はデザイナーで、遊具のデザインをしたいとの強い気持ちで入社してくれた社員でしたので、共に良き対応策を打ち出したいと、検討をスタートさせました。

ミラサポ事務局:まず、どのようなことから準備を始めたのでしょうか。

萩原さん: 早急に取り組まなくてはならない状況ではなく、課題が顕在化する前でしたので、時間をかけて導入できる策の可能性や想定される問題について、まずは相談をくれた社員と情報収集から始めました。東京都が開催していた在宅勤務導入セミナーへの参加や、講師を務めていたテレワークのコンサルティング企業の方への個別相談、本もたくさん読みましたね。
併せて、友人知人たちにも、彼らの会社でどのような取り組みがされているのかヒアリングを行いました。ママ友・パパ友などに伺った各社の取り組みと実際に活用されての意見は、大変参考になりました。

そのような取り組みをしている中、実際に相談をくれた社員と、もう1名のデザイナーが同時期に妊娠いたしました。当時、弊社のデザイン担当は4名でして、そのうちの2名が休業に入っては業務への支障も少なくありません。そこで本人たちとデザイン部署の上長、そして総務の私で、何ができるのか、何がしたいのか、それら要望を取り入れた場合に起こりうる課題の洗い出しと、対応策の検討に入りました。
以前から新しい働き方について話し合いを行ってきたメンバーたちでもあったので、実際にやれる形で、どうスタートすればよいか、話し合いを続けました。

試験的にテレワークをスタート!

ミラサポ事務局:テレワーク導入に向けての、環境や就業規則の整備はどのように行ったのでしょうか。

萩原さん:現在も、就業規則における制度化は行っていません。導入も試験的な状況にあります。
勤怠管理や労務管理をいかに行うのか、一つ一つを突き詰めて制度化だけを進めるよりも、今ある社内の運用にテレワークをどう照らし合わせて管理を行うべきか考えました。

勤怠管理は、終業時にデザイン画の作業状況の画面キャプチャと、実施した業務をメールで報告し、実労働時間で管理することにしました。

業務面では、今回在宅勤務を希望したデザイナーの2名は、3DのCGソフトを活用しデザインを行うのですが、パソコンさえあれば業務は行えます。元々、社外からでも社内のサーバにアクセスできる環境を有していましたので、パソコンさえあれば社内の情報にアクセスし、デザイン業務が行える状況にはありました。

ただしデザイナーは一人で業務が完結するのではなく、描いたデザインを図面に起こす設計部署と共有することや、営業担当と取引先からの要望・依頼等を話し合う必要もあります。そこで新たに資料やデザイン画を共有できる「チャットツール」や「Web会議」のツールを導入し、コミュニケーション機会ロスの軽減を計画しました。

テレワークを行う社員たちへの対策は、想定できる範囲で計画できたと思っていますが、社内で仕事をする社員たちからの理解獲得も課題の一つでした。制度化していない中、この問題は運用を開始している現在でも未だ解決はしていません。

運用したからこそ気づいた課題

ミラサポ事務局:実際に運用を始めて、新たに気付かれたことはありますか。

萩原さん:テレワークを活用している社員がデザイナーという職種であるため、業務自体に大きな支障はありません。

コミュニケーションの問題に関しては、ツールも導入してみましたが、週に1・2日は出勤しているので、打ち合わせはその日にまとめて行い、1人で集中して行うプランニングやデザインの業務は在宅で行うなど、メリハリをつけて行っています。また、急な連絡が必要な時にもメールと電話でほとんどの場合、解決しているようです。

ただ、取り組んだからこそ気づいたことではありますが、職場でみんなの中で集中して業務を行う場合と、一人しかいない環境で業務を行う場合では、やっていること自体は一緒なのですが、感覚としては異なるそうです。雑談からアイディアが生まれることもあり、みんなのいる職場の方が働きやすいとの意見も出てきています。

また、想定はしていたのですが、テレワークを行っている本人が、周りの社員たちに迷惑をかけているのではないかと不安に陥り、想定以上に大きな心理的負担となっています。休みなのか在宅で勤務しているのか他部署の社員からも把握できるツールを導入しているのですが、ツールを確認しないまま部署へ連絡をし、そこで出社していないことに気づくことも多いです。そのような状況に負い目を感じてしまい、本人が不安になっています。だんだんではありますが周りの社員もテレワークの社員と働くことに慣れてきており、業務的な障害は少ないのですが、本人は割り切れず、慣れずにいます。

感情的な課題は、制度化したからと言って補えることではありません。お互いをサポートしあう気持ちが大切です。社内で仕事をする社員たちからの理解と共に、今後も本人たちへのフォローを今後も考えていきたいと思います。

現在はデザイナー2名がテレワークに取り組んでいますが、今後は営業や管理部門などの社員もテレワークを行えるよう、検討を進める必要性も感じています。
営業は普段から全国の取引先を飛び回り、社外で仕事を進めることに慣れてはいますが、管理部門は紙で管理している情報も多く、紙を見なければパソコンで作業が行えないような業務もあります。
FAXで届いた情報を台帳に転記し管理していますし、承認は紙での捺印による管理をしている状況ですので、業務フローをすべてデジタル化できればとも思いますが、すぐに切り替えられるものではありません。

【社員たちの声】

テレワーク活用者 Kさん
育児休暇のように長期間の休暇を取得してしまうと、復職した時に『浦島太郎状態になってしまうのでは...』との不安がありましたが、その不安は払拭されています。また、社のみんなが忙しい時期に少しでも手伝えることで、心苦しさも緩和されています。
やってみてわかったことですが、思っていたよりも短時間しか仕事することが出来ないということです。月30時間程度勤務すると、私には忙しさを感じました。納期の厳しい案件には対応しづらく、また、上司もそのような案件はアサインしづらいだろうと感じています。

テレワーク活用者 Nさん
出勤での勤務では対応できない朝や昼休みの時間に家事をこなせるので、子どもと過ごせる時間が増えました。
在宅勤務をしていて困ったことは、社内のホワイトボードに書かれている同僚のスケジュールが確認できないことです。外出していることに気づかず、電話してしまうことがあります。
週2日在宅勤務を行っていますが、これ以上増やすと会議の出席、打ち合わせでの意見交換にも支障をきたすので、この程度のペースでの活用が適度だと感じています。

同じ部署の同僚
お互いに何を行っているのか、わかりづらいとは感じています。学ぶことや刺激を与え合うこと、作品に興味を持つことなど、同じ空間で仕事をしていると自然に行えることが出来ないと感じています。
また、クラウドのカレンダーサービスでスケジュールの共有を行っていますが、完全ではありません。部門内で運用ルールの徹底が図れればよいと思います。

他部署の同僚
横から見ていて、上長の管理業務が大変そうだなと思っています。自分の部署でテレワークに取り組む場合には、現状の運用ルールでは導入が難しいと感じています。

介護によるテレワークの導入も視野に

ミラサポ事務局:今後どのようにテレワークの取り組みを拡張させていきたいとお考えですか。

萩原さん:現在は育児によるテレワークの実施となっていますが、今後は誰にでも可能性がある介護による導入も検討が必要だと考えています。介護による取り組みは、管理職など役職についている社員ほど必要性が高まります。そのような社員が休む、さらには退職するとなると社としては大きな損失です。
また、介護だけでなく本人の怪我や病気なども考えられます。すべての働きたいと思ってくれる社員が、様々な働き方で働き続けてくれるとよいと考えています。
いずれにしても今の取り組みを見直せば、柔軟に対応できると思っています。

また、先に述べた通り部署による業務内容の差異にも、対応していかなければなりません。全社統一のルールではなく、部署ごとに最適な働き方があると思っています。制度化を図らなくとも、多様な働き方を希望する社員の気持ちに寄り添い、お互いを信頼し取り組んでいけば、よい結果が得られると信じています。今後も状況に合わせて、試験的に取り組みを拡張させていきたいと思います。
育児のみならず介護などより多くの社員がテレワークを活用することで、テレワーク活用に対する社内の意識が変わり、感情的な課題も解決するのではと期待しています。

ミラサポ事務局:これからテレワークに取り組みたいと考えている企業の方へ、お伝え出来ることはありますか。

萩原さん: 弊社でも就業規則に加えなくてはならないと、当初は制度化することばかり考えていました。しかしながら、制度化にこだわる必要はないと思います。制度があるから利用されるようなものでもなく、いくつかある働き方ツールの一つと捉えるのが、よいのではないでしょうか。
当然、魔法の杖ではなく、すべての問題がテレワークの導入で解決するわけではありません。取り組んでみると、そのことで新たな課題が発生することもあります。ですが、やってみない限り何が起こるのかもわかりません。

準備段階ではコミュニケーションツールが必要であると考え、実際導入してみましたが、少し運用を変えれば、電話とメールで事足りる事態でもありました。

私もそうでしたが、つい制度の構築、環境の整備を完璧に済ませなければと考えがちです。しかし、すべて整えてからスタートを切るのではなく、自社で働き続けたいと思う社員の思いに寄り添い、可能な範囲からまずはスタートされてはいかがでしょうか。

日都産業株式会社




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