公的機関の歩き方

中小企業・小規模事業者の専門医・総合医

Vol.8 よろず支援拠点

第8回は「よろず支援拠点」の歩き方をお届けします。
よろず支援拠点は、47都道府県に設置された、中小企業・小規模事業者の支援機関であり、売上拡大、経営改善、創業などの経営課題の解決を使命としています。
そんなよろず支援拠点の歩き方を、本部事業を受託する独立行政法人中小企業基盤整備機構に伺いました。

小さな企業からの「よろず相談」を受け付け

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よろず支援拠点は、経済産業省が平成26年6月から各都道府県に整備した無料の経営相談所です。地域の中小企業支援機関と連携しながら、中小企業・小規模事業者が抱える売上拡大などの様々な経営相談にワンストップで対応します。

他の支援機関との違いを医療機関に例えて言えば、商工会や商工会議所などは地域企業の身近な「かかりつけ医」、よろず支援拠点は主に他の支援機関では対応が困難な分野に対応する「専門医」として、また支援機関と連携して対応する「総合医」としての役割を担っています。

さらに、単に相談内容についてのアドバイスに止まらず、ひざ詰めのコンサルティングにより本当の経営課題をあぶり出し、根本の課題解決を図ることが特徴です。
よろず支援拠点のミッションは、中小企業・小規模事業者の起業から経営安定までの各段階のニーズに応じて、主に以下のような事項できめ細かな対応を行うことです。

(1)他の中小企業支援機関では十分に解決できない「専門性の高い経営アドバイス」
(2)事業者の相談に応じた「課題解決のための総合調整」
(3)蓄積された「他の支援機関に対する支援ノウハウの共有」

全国のよろず支援拠点の平成28年度実績は、相談対応件数(延べ)が18万8,364件で開設以来、年々増加しています。相談者の割合は製造業、サービス業がいずれも26%で最も多く、さらに小売業、宿泊業など幅広い業種から相談があります。従業員数別では、創業前の相談者を含め20名以下の事業者が8割を超えており、小規模な企業からの相談が大半を占めています。
また、すべての相談者に対してアンケートでの満足度評価を実施していますが、約87%の相談者から肯定的評価を得られており、非常に高い満足度の結果となっています。

相談件数の増加に伴い、相談体制も強化しています。各拠点には、経営相談への高い水準での対応、体制構築などを行う1名のチーフコーディネーターと、経営相談を専門的に行う数名から十数名のコーディネーターが在籍しています。それらのコーディネーターとして、経営コンサルタント、民間企業・金融機関出身者、またニーズの多いWebマーケティングやデザインの専門家、女性の事業者でも相談しやすい女性の専門家など幅広い人材が在籍しており、どんな相談にも対応できる体制を整備しています。

全国本部が拠点をサポート
独立行政法人中小企業基盤整備機構は「よろず支援拠点全国本部」として、チーフコーディネーターなどの支援能力向上、他の支援機関との連携促進活動、広報周知活動、各拠点の評価・改善などの役割を担い、各拠点のレベルアップなどをサポートしています。

よろず支援拠点 活動実績

拠点ごとのオリジナルな取り組み

チーフコーディネーターやコーディネーターは、いずれも専門的なスキルを持ち中小企業支援に長けていますが、その経歴は様々です。また、各拠点では地域の実情に応じた活動を実施しており、支援手法も様々です。
ここでは、工夫を凝らしてオリジナルな経営相談を実施するよろず支援拠点とその支援事例の一部を紹介します。

(1) パートナー金融機関からの紹介をきっかけに製品を開発、売上拡大

長野県よろず支援拠点では、金融機関を始めとする支援機関との連携をさらに強化するために、所定の研修を受けた人に対して「エクセレントパートナー」の称を付与し、協働による支援を推進しています。
伊東産業(株)長野支社(長野県長野市)は、金融機関のエクセレントパートナーの仲介により、相談を同拠点に持ちかけました。

同社は昭和31年に創業し、上下水道設備工事を主な事業としてきましたが、あるとき自治体から「農業用水や生活用水に設置された水門を自動開閉することはできないか」と相談がありました。これを受け同社では、電力供給がない山間部の水門でも自動開閉可能なソーラーバッテリーの利用、さらにスマートフォンによる遠隔操作ができる機能の付加を発案し、開発に取り組みました。この開発の過程で様々な技術的課題に直面したため、同拠点を訪ねることとしたのです。

担当コーディネーターはすぐに信州大学工学部の専門の先生を探しあて、協力体制を構築しました。同大学の協力を得ながら試行錯誤を繰り返し、ようやく低電圧で水門を開閉できる技術の核となる減速機構の開発に成功。これによりソーラーバッテリー電源を利用した水門自動開閉装置をスマートフォンで操作できる画期的なシステムが完成しました。また降雨量や水位を検出して自動開閉できる機能もオプションとして製品化しました。
同拠点による支援は、製品の開発後も続きます。同製品の販路開拓を支援するため、既存製品との違いや優位性を効果的に発信するための手法をアドバイスしたり、製品を自治体の農業土木部やコンサルタントに紹介したりといった支援も行いました。

また試作や評価・検証に必要な補助金の活用もアドバイスし、この補助金を獲得したことで高性能・高信頼な製品化を実現することができました。その後、各種展示会への出展やマスコミへのプレスリリースを行ったことで知名度を大きく向上させ、全国各地から引き合いが増える結果となりました。

(2)市立図書館の窓口相談をきっかけに事業再生を達成

岐阜県よろず支援拠点では、拠点以外の場所でも相談を受けられるよう相談所を市立図書館内にも設置し、コーディネーターが出張相談を実施しています。そこでは、相談に同席する司書が相談内容に応じたビジネス専門書を推薦してくれるサービスもあります。
そこに訪れた (有)アールアンドエスフーズ(岐阜県関市)は、食品卸売商社として北海道産のカニや中国から輸入した冷凍食材を商社や問屋向けに販売していましたが、中国製ギョーザ中毒事件や東日本大震災などの影響で経営難に陥っていました。

そこで担当コーディネーターは経営基盤を固めるために、現金商売が推進しやすい小売店へ取引の軸足を移すことの重要性を伝えるとともに、大手量販店とは一線を画した商品を取り扱い、消費者により近い位置で販売することで、より高い価格帯での商品展開を図って売上を安定させることが先決だと分析したのです。
また、既存の商品、販路、人脈の中から、新たな事業方針にマッチングするものだけを取捨選択するよう提案しました。
これらのアドバイスを受け、相談者は自身の人脈を活用し、消費者の顔が直接見え、かつ自社ブランドのアピールが可能な売場の確保と道の駅や地元スーパーなどとの取引の開拓に成功しました。また、相談者自らも実演販売の店頭に立つことで、直接来店客の声を把握しながら事業展開を図るという好循環が生まれています。
かつては外部から食材を仕入れて卸売りするという業態でしたが、相談後、自社オリジナル商品のプロモーションが増えたことで、より高い単価設定が可能となり、収益性も高くなりました。

今後も「よろず」はあらゆる相談に全力で応じます!

国(中小企業庁)が策定するよろず支援拠点の「活動基本方針」では、今年度新たな項目として「政策的な重点分野への対応」を追加し、各拠点では従来の相談対応に加え、(1)ITを活用した生産性向上に向けた取組、(2)事業承継、(3)人材不足問題、(4)信用補完制度の見直しに伴う経営改善等への対応に取り組むこととしています。実際、各拠点においてはこれらをテーマとするセミナーを開催し、その後個別相談会を実施するなど、常に時宜に適った課題に取り組んでいます。
また、これらの課題に関わらず、拠点ではどんなことでも相談に応じます。経営の悩みを持つ方はもちろん、悩みはないが業績を伸ばしたいという方も歓迎します。「暗い顔でいらっしゃる相談者でも、帰る頃には明るい顔にします」とコーディネーターらは自信を持って語ります。また、お金のかからない提案・アイデアをするよう努めていますので、「まずやってみよう」という気に必ずなると思います。

地域内に複数の相談所を設けている拠点も多いので、ぜひお近くの拠点にお気軽にお電話ください。
全国の拠点の一覧は次のとおりです。

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インタビューをした人

経営支援部 審議役
小濱 昭浩さん

経営支援部 支援機関サポート課
課長代理
田栗 義也さん

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