公的機関の歩き方

Vol.9
地方独立行政法人
東京都立産業技術研究センター

地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター

第9回は、「地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター」(以下「都産技研」という。)を紹介します。
都産技研は2006年4月、東京都立産業技術研究所と城東地域中小企業振興センター、城南地域中小企業振興センター、多摩中小企業振興センターの技術部門を統合し、地方独立行政法人として設立されました。全国の中小企業の技術支援を使命とし、年間に約14万件もの技術相談、約14万件の試験依頼、約13万件の機器利用依頼が寄せられます。まさに中小企業から頼りとされる都産技研ですが、その支援の概要や利用の仕方、および活用事例をご紹介します。

中小企業の技術・製品開発で頼りになる支援機関

都産技研は多岐にわたって中小企業を支援する

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都産技研は、中小企業を幅広く技術支援するため、2006年に東京都により設立された公設試験研究機関です。

都産技研の事業は、「技術相談」「依頼試験」「機器利用」「研究開発」「産業交流」「産業人材育成」「情報発信」と多岐にわたります。そのうち「技術相談」「依頼試験」「機器利用」が主要な事業です。
「技術相談」は、情報・電子、材料・化学、製造技術、環境・省エネルギー、デザイン・設計、製品化支援技術など、幅広い分野で対応します。さらに、工場や事業所など依頼主の現場に赴いて課題の解決を支援する「実地技術支援」も実施しています。

また、「依頼試験」では、単に試験を請け負うだけでなく、依頼主に対して測定・分析に基づく技術的アドバイスをしたり、依頼主の個別ニーズに対応したりする「オーダーメード試験」や製品開発の上流工程を支援する「オーダーメード開発支援」も実施しています。

「機器利用」ではさまざまな試験装置を用意しており、それらの装置の利用だけでなく、各種機器の操作方法や試験データの読み方も説明します。

年間の相談や依頼については、技術相談で約14万件、依頼試験で約14万件、機器利用で約13万件が寄せられます。まさに、中小企業から頼りにされている技術支援機関なのです。

どんな技術課題でも気軽に相談できる

どんな技術課題でも気軽に相談できる「総合支援窓口」

都産技研は、すべての日本法人が利用できますが、「実地技術支援」の利用は都内の中小企業に限られます(ただし、都内に事業所を有する企業で、都外に工場を保有する場合、日帰りに限り実施可能)。

都産技研を利用したい場合は、まずはどんなことでも「総合支援窓口」で相談をしてください。直接、本部や支所(5拠点)に行って相談することも可能ですが、相談内容によっては時間を要する場合もあるので、事前にホームページの「技術相談受付フォーム」もしくは電話やファックスで総合支援窓口へ相談内容を申し込むことをお勧めします。

総合支援窓口で受けた相談の内容に応じて、担当する都産技研の研究員や外部専門家(専門相談員および都産技研に登録しているエンジニアリングアドバイザーなど)へつなぎます。

都産技研の技術相談についてはこちら

そして研究員や外部専門家との相談を経て、「依頼試験/オーダーメード試験」「機器利用」「オーダーメード開発支援」「共同研究」など適した支援を紹介します。

なお、技術相談はすべて無料です。ただし、「専門相談員による窓口相談」は予約制で本部のみで実施しています。電話もしくは「専門相談員 相談予約フォーム」で、予約を受け付けます。

ご自身で利用したい支援が「依頼試験」や「機器利用」であることがわかっている場合は、以下の要領で申し込めます。

(1)依頼試験

まずは、メールフォームまたは電話で申し込みます。本部と各支所で対応できる試験に限りがあります。どの支所に連絡すればよいかの判断がつかない場合は総合支援窓口に連絡することで、適切な研究員を紹介してもらえます。

都産技研の依頼試験についてはこちら

(2)機器利用

まずは、メールフォームまたは電話で申し込みます。ただし、複雑な試験・加工や初めて利用する場合は一度本部、支所に行き、相談することをお勧めします。

都産技研の機器利用についてはこちら

「依頼試験」や「機器利用」、「実地技術支援の一部」は有料ですが、利用料金の助成を行っている都内の区市・支援機関があります。詳細は「助成内容一覧」をご確認ください。

都産技研の助成内容一覧はこちら

注目の技術分野でも中小企業を支援

都産技研が中小企業のロボット開発を支援したことにより開発された美術館向けの案内ロボット

AM(3Dプリンター)による造形技術で、自動車や産業機械などに用いられる複雑な形状の金属部品も容易に成形できる

今後の中小企業の技術開発の方向性を鑑みたうえで、都産技研が注力している事業には以下のようなものがあります。

(1)ロボット産業活性化支援

案内、産業、点検、介護の4分野におけるロボットの技術開発から事業化までを支援します。ロボットを開発する企業だけでなく、使用する企業(ユーザー企業)も含めた体制で開発に取り組む団体を支援することを特徴としています。2015年からロボット開発拠点「東京ロボット産業支援プラザ」を新たに設けています。

都産技研のロボット産業活性化支援についてはこちら

(2)3Dものづくり支援

3次元CADをベースにした3Dものづくりを総合的に支援します。特に、樹脂粉末や金属粉末などを用いたAM(Additive Manufacturing:3Dプリンターによる積層造形技術)による造形技術、高精度な寸法・形状の測定技術による品質評価の支援に注力しています。

都産技研の3Dものづくり支援についてはこちら

(3)先端材料開発支援

先端材料製品の開発に用いる先端機器を集中的に配置し、研究開発や技術課題の解決に向け、①分析機器・特性解析機器を活用した技術、②粒子分散・混合機を活用した微粒子応用材料の開発、③スクリーン印刷機を活用した機能部材の開発、を支援しています。

都産技研の先端材料開発支援についてはこちら

(4)中小企業のIoT化支援

IoT活用による生産性の向上や業務の効率化、およびIoT関連製品の開発や新たなサービスの提供によるビジネスの創出を支援します。支援メニューとして、実機展示とテスト環境の提供を目的としたIoTテストベッド、公募型共同研究事業、IoT研究会、人材育成事業に取り組んでいます。

都産技研のIoT化支援についてはこちら

(5)航空機産業への参入支援

航空機産業への参入について、具体的な技術支援を2017年12月13日から始めました。試作部品の技術検証機能の提供、航空機に使用される国際規格に準拠した専用試験機を設置して、試作・実証実験を支援します。

都産技研の航空機産業への参入支援についてはこちら

ロボット、AM(3Dプリンター)、先端材料、IoT、航空機部品と最近の国内外で注目される重要分野の技術について、中小企業への支援に力を注いでいます。日本の中小企業が持つ高い技術力を重要分野に活かし、製品化・事業化につなげることで企業の競争力向上を底面から支えることが目的です。

都産技研の支援による中小企業の製品開発事例

都産技研が支援した最新の中小企業の製品開発事例として、「3Dものづくり支援」などを活用した成果を紹介します。

(1)開発期間とコストを削減した新製品づくりに寄与

コードレスビニール溶接機 「ジョインティー」

建築作業の専用工具を製造する板橋匠屋本舗(東京都板橋区)は、従来の電気式熱風溶接機の熱源をガスと触媒反応に替えた、ガス式コードレスビニール溶接機「ジョインティー」の開発を目指しました。この溶接機は建築現場の職人が使う道具であり、その性能の要となるノズルパーツの開発について同社は都産技研に技術相談しました。

同社はノズルパーツの試作では、実際に熱を加え、空気の流れや温度上昇を正確に把握したいと考えていました。そのためには金属製のノズルパーツを試作する必要がありましたが、複雑な形状のため切削加工ではつくれず、また、金型を用いて試作品をつくると時間と費用が多くかかってしまいます。

そこで、都産技研の金属3Dプリンターを活用してノズルパーツを試作することになりました。金属3Dプリンターであれば、どんな複雑な形状でも金属で製作できます。

その結果、実際の製品と同じ形状、同じ材質でノズルパーツを試作して検証できたことで、開発を目指したノズルパーツの性能を向上させることができ、かつ開発期間とコストも削減できました。

2016年に発売した「ジョインティー」は、2年足らずで2000台を売り上げるほど、ユーザーから支持されています。

(2)目的の製品機能を迅速に実現

光コネクタ断線検出器「OCCR」

光ファイバや通信用コネクタなどの関連製品を設計・製造するオプトゲート(東京都葛飾区)は、光コネクタ断線検出器「OCCR(Optical Component Coherence Reflectometer)」の開発を目指しました。光コネクタ製品は発生直後の断線の発見が難しいため、製品を販売する前に内部断線を確認することが重要です。そこで同社は、光コネクタ断線検出器の開発に際して都産技研に技術相談しました。その結果、性能を確保するためにはプロダクトデザインの必要があることがわかり、都産技研と共同研究を開始しました。

共同研究では、EMC対策の重要性から3Dプリンターで機器形状の試作を繰り返し、その結果、当初に想定していたタテ型から電磁ノイズ発生を低く抑えられるヨコ型に決めることができました。さらに、電磁ノイズ漏れを防ぐために内部を二重構造にするなど、同製品で不可欠なEMC対策と3Dプリンターによるデザインの確立を実現させました。このように3Dプリンターを駆使することで、目的とする機能を迅速に実現できたのです。

2016年4月発売の「OCCR」は、従来品では難しかった発生直後の微小な断線も発見でき、価格も1/3程度に抑えられ、大手通信企業などから受注が相次いでおり、同社の主力製品になっています。

(3)開発品の性能を数値化して製品化につなげる

衝撃吸収力に優れる洋風の畳「リフォーム畳」

畳を製造・販売する大山畳店(埼玉県八潮市)は、衝撃吸収力・防音性・保温性を備えた洋風の畳「リフォーム畳」の開発に取り組みました。

「リフォーム畳」は、畳床を畳表ではなくクッションフロアなどの表面シートでくるんだ洋風の畳です。その特徴の1つとして衝撃吸収性がありますが、開発にあたって、同社としてはその性能を数値で表すことが課題でした。

そこで、衝撃吸収性の評価方法について都産技研に技術相談しました。その結果、都産技研で衝撃特性評価試験機を用いてリフォーム畳、通常の畳、フローリング材など各種の床材を試験してもらい、リフォーム畳の衝撃吸収性を数値として測ってもらいました。さらに、性能を向上させる方法についてのアドバイスも受けました。

それにより開発した「リフォーム畳」は、優れた衝撃吸収力を数値で証明できたことから、転倒時の衝撃をやわらげることなどを製品のアピールポイントにすることができました。また、特許と商標登録も取得しました。

2015年に発売した「リフォーム畳」は、衝撃吸収力に優れるという新しい概念の畳として多方面から多くの関心を集めています。

中小企業の技術相談ならどんなことでも受けられます!

都産技研では、初歩的な技術相談から最近注目の技術分野の開発支援まで幅広く中小企業の技術、製品、事業をサポートします。日本法人であれば、全国どこの中小企業でも支援が受けられます。相談したい課題、開発したい技術、製品などがあれば、お気軽に都産技研に相談してください。

インタビューをした人

経営企画部
経営企画室長 上席研究員
小林丈士さん

小林丈士さん

経営企画部
広報室長 上席研究員
木村千明さん

木村千明さん

Profile

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