公的機関の歩き方

中小事業者の事業再生をサポート

Vol.12 中小企業再生支援協議会

中小企業再生支援協議会

第12回は、「中小企業再生支援協議会」の歩き方をお届けします。
中小企業再生支援協議会は、47都道府県に設置され、公正中立な立場から事業再生をサポートする機関です。
そんな中小企業再生支援協議会の歩き方を、独立行政法人中小企業基盤整備機構に設置され、各協議会の支援を実施している中小企業再生支援全国本部に伺いました。

47都道府県の中小企業再生支援協議会と中小企業再生支援全国本部

中小企業再生支援全国本部で副統括プロジェクトマネージャーを務める町田さん

中小企業再生支援全国本部で
副統括プロジェクトマネージャーを務める町田さん

中小企業再生支援協議会は、中小事業者の再生支援業務を行うため、産業競争力強化法第127条に基づき、商工会議所などの「認定支援機関」に設置されています。2003年2月から全国に順次設置され、現在では全国47都道府県に1カ所ずつ設置されています。

中小企業再生支援協議会には、中小事業者の事業再生に関する知識と経験を持つ専門家(金融機関出身者、公認会計士、税理士、弁護士、中小企業診断士など)が統括責任者(プロジェクトマネージャー)及び統括責任者補佐(サブマネージャー)として常駐しています。各協議会の規模は、通常、統括責任者1人と統括責任者補佐3~5人程度の構成ですが、東京や大阪など大都市では、より多くのサブマネージャーが常駐しています。

各協議会では、過剰債務などにより経営状況が悪化している中小事業者からの相談を受け、課題解決に向けたアドバイスを実施するとともに、再生のために財務や事業の抜本的な見直しが必要な場合には、再生計画の策定支援を実施しています。

また、その他の支援機関での個別相談や専門家派遣などの支援が適切と判断される場合は、相談企業にその旨を伝え、各関係支援機関を紹介します。例えば、事業面の改善が必要なら「よろず支援拠点」を紹介します。

産業競争力強化法について、詳しくはこちら

中小企業再生支援全国本部が各協議会をサポート

中小企業再生支援全国本部は2007年に設置され、各協議会の能力向上支援や各種サポートなどを行っています。具体的には、各協議会への助言、専門家の派遣、先進事例や案件情報の収集・分析・提供・公表をはじめ、具体的な解決策の提案なども行っています。また、全国の中小企業再生支援協議会のみならず、金融機関や各種士業団体などを対象に、再生支援事業の普及のための研修なども行っています。

相談受付から再生支援への流れ

中小企業再生支援協議会の支援の流れ

中小企業再生支援協議会の支援の流れ

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中小企業再生支援協議会は、国(中小企業庁)が公表している「中小企業再生支援協議会事業実施基本要領」に基づき、業務を行います。

まず、事業者と窓口相談(第一次対応)を行い、一定の要件を満たす事業者については再生計画の策定支援(第二次対応)を行います。窓口相談は事業者が自らご相談いただく場合と、金融機関を経由してご相談いただく場合があります。

対象となる事業者の要件は、産業競争力強化法第2条第17項に規定する中小事業者が原則ですが、第一次対応では幅広く相談を受け付けています。

第二次対応の対象事業者は、(1)過剰債務、過剰設備等により財務内容の悪化、生産性の低下等が生じ、経営に支障が生じている、もしくは生じる懸念のあること、(2)再生の対象となる事業に収益性や将来性があるなど事業価値があり、関係者の支援により再生の可能性があること、などが条件になります。

第一次対応までは無料ですが、第二次対応については、調査や外部専門家の費用について一部負担をお願いしています。

中小企業再生支援協議会は、公正中立な第三者機関であり、債務者である中小事業者の代理人でも、債権者である金融機関の代理人でもありません。また、ファンドやスポンサーの代理人でもありません。

公正中立な立場から、専門家によって構成された個別支援チームにより、相談企業の事業面、財務面の詳細な調査分析や同事業者が困難な状況に至った原因などの分析を実施します。その上で、債務者による再生計画案の策定を支援します。その後、対象債権者(多くの場合は金融債権者)による債権者会議を開催し、再生計画案を提示の上、再生計画案に対する対象債権者の合意形成を支援します。

再生支援の手法としては、その8~9割が、借入金の返済を緩やかにする「リスケジュール」ですが、それ以外の支援の形としては、債務を通常のローンから長期の劣後ローンへ組み換える「DDS(デット・デット・スワップ)」、収益性の高い優良な事業だけを別会社にし、不採算事業と過剰債務が残された旧会社を特別清算する「第二会社方式」などの手法を用います。

2003年度から累計529,585人の雇用維持を実現

累計の窓口相談件数(第一次対応)は3万8,000件超、再生計画策定支援完了件数(第二次対応)は1万2,000件超

累計の窓口相談件数(第一次対応)は3万8,000件超、再生計画策定支援完了件数(第二次対応)は1万2,000件超

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中小企業再生支援協議会の実績を紹介します。2016年度の実績は、第一次対応の窓口相談件数が1,672件、第二次対応の再生計画策定完了案件数は1,047件です。2003年度から2016年度までの累計実績は、第一次対応が38,562件、第二次対応完了件数は12,098件に上ります。

この結果、企業の継続などによる雇用維持累計人数は529,585人となりました。

中小企業再生支援協議会の実績はこちら

中小企業再生支援協議会による支援事例

取り扱う対象が中小事業者の事業再生というデリケートな問題であるため、成功事例であっても実名での紹介は困難ですが、「リスケジュール」「DDS」「第二会社方式」という代表的な再生手法を用いた最近の支援事例を、それぞれ紹介します。

なお、再生支援は、企業の財務状況や再生可能性などによって異なる手法が用いられます。たとえ事例企業と似たケースであっても、同じ再生支援手法が用いられるものではありません。ご注意ください。

(1)借入金返済のリスケジュールによる飲食業の事業再生事例

経営混迷状態にあった飲食店の存続と従業員の雇用確保に寄与した

経営混迷状態にあった飲食店の存続と
従業員の雇用確保に寄与した

相談企業は、2店舗を経営する東日本にある和食系飲食業です。資本金は500万円、従業員数は2店舗で43名でした。売上高2億8,000万円に対し、債務残高3億5,000万円と債務超過に陥っていました。

来客数増加を狙って大型店舗を開業した矢先、創業者である先代社長が死去。その妻が代表を引き継ぎましたが、2店舗の維持費用や人件費といった多額の固定費が発生したことから、経営は混迷を極めていました。

対応した中小企業再生支援協議会は、当社の知名度や、大型駐車場・バリアフリー設備を有している店舗の強みを生かし、再生計画策定を支援しました。

具体的には、介護事業者や観光会社に対して営業活動を行い、主に団体客の来客数増加をねらう計画としました。また、2店舗間でのメニューと仕入先の共通化による原価低減を図るとともに、先代社長の妻に代わり、息子である副社長を、後継者として経営全般を掌握する内容の事業計画策定を支援しました。金融支援策としてはメイン金融機関からの借入金のリスケジュールにより資金繰りの安定化を図りました。

(2)DDSと新規運転資金融資によるプラスチック製品製造業の事業再生事例

メイン金融機関による債務の劣後化により新規運転資金の確保にも寄与した

メイン金融機関による債務の劣後化により
新規運転資金の確保にも寄与した

相談企業は、中日本にある売上高13億円のプラスチック最終製品の製造業です。資本金2,000万円、従業員数は55名でした。在庫管理や価格設定などの基本的な財務管理体制が未整備であったことをはじめ、商品力の弱さ、外注先のコントロール不足などの要因により、慢性的な赤字体質を脱却できず、過剰債務がかさんでいました。

相談時は日常の経営管理がほとんどできていない状態であり、対応した中小企業再生支援協議会はそれを改善すれば、事業の再生は可能と判断し、支援を実施しました。

関連するデザイン業者とのタイアップによる商品力向上の検討や取引条件に関するルールの策定、不良在庫の見直しなどを事業計画に盛り込み、経営状態の改善を図ることとしました。

債務残高17億円のうち、メイン金融機関からの借入金の一部である6億円を資本性劣後ローン※へ借り換え。実質資本の増加により過剰な債務超過状態を軽減し、財務状態は改善しました。その他の債務についてはリスケジュールを行い、さらに金融機関から2億円の運転資金の新規融資を受け、資金繰りの安定化を図りました。

※劣後ローンとは、他の一般的な負債より支払い順位が劣るローンを指し、仮に会社が倒産した場合にはほぼ回収できない。そのため、財務諸表上は債務に分類されるが、金融機関では自己資本(純資産)の一部とみなされ、「資本性劣後ローン」とよばれる。

(3) 第二会社方式による老舗旅館の事業再生事例

過大な債務超過の解消により老舗旅館のブランド存続に寄与した

過大な債務超過の解消により
老舗旅館のブランド存続に寄与した

相談企業は、西日本にある老舗温泉旅館です。資本金は1,000万円、従業員数は120名でした。メイン金融機関からの働きかけもあり、中小企業再生支援協議会に相談されました。

相談時の売上高は、ピーク時と比べ半減の約10億円。過大な設備投資に起因する過剰な負債を抱え、大幅な債務超過に陥っていました。また、老舗旅館であるという経営者のプライドから、抜本的な経営再建に取り組むことに抵抗があり、手付かずの状態が続いていました。

メイン金融機関からは抜本的な金融支援も視野に入れて再生を図りたいという意向があり、対応した中小企業再生支援協議会も再生可能と判断し、支援に取り掛かりました。

経営資産の調査を行った結果を踏まえ、より高級路線としてブランディングを高めた差別化戦略、インターネットを含めた販売チャネルの拡大及びリピーター対策を行うこととしました。さらに、専門コンサルタントの指導による管理体制の確保を図りました。

再生手法としては、新会社を設立し、そちらに地元再生ファンドの出資を受け入れて経営のガバナンス強化を図るとともに必要な経営資源と適切な金融負債を引き継ぎ、残りの過剰な負債約14億円は実質債権放棄を伴う再生計画の策定支援を行い、取引のある金融機関3行の同意を得ました。

対応した中小企業再生支援協議会では、引き続きフォローアップ支援を実施しています。

まずは、企業の健康診断ととらえて早期の相談を

全国の中小企業再生支援協議会の一覧

全国の中小企業再生支援協議会の一覧

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相談企業の中には、「もう少し早く相談に来てくれれば、経営改善も早かったのに」と思われる案件も少なくありません。「経営において特に課題はない」という中小事業者の方が少ないと思います。自社の財務内容を十分に理解していない経営者も多く、借入金返済が遅れ出してから協議会を訪れるケースが多いのです。「再生」という言葉に抵抗はあるかもしれませんが、全国の中小企業再生支援協議会に、ぜひ一度ご相談ください。

中小企業再生支援協議会の設置主体となる委託先には「経営改善支援センター」が設置されています。「経営改善支援センター」では、「経営改善計画策定支援事業」「早期経営改善計画策定支援事業」という、経営改善計画策定及びモニタリングの費用を一部支援する事業も実施しています。

「経営改善計画策定支援事業」は、過剰な債務を抱えた中小事業者が、金融支援を伴う本格的な経営改善計画の策定を専門家に依頼するもので、計画策定費用及びモニタリング費用の一部支援を行います(支援比率3分の2、上限200万円)。

また、2017年5月から開始した「早期経営改善計画策定支援事業」は、資金繰り管理や採算管理の早期の経営改善の取り組みを必要とする中小事業者が、資金実績・計画表やビジネスモデル俯瞰図などの策定を専門家に依頼し、策定した計画を金融機関に提出する事業で、計画策定費用及びモニタリング費用の一部支援を行っています(支援比率3分の2、上限20万円)。

これらにより、医療機関に例えれば、健康診断(早期経営改善支援)、通院(経営改善支援)、入院(再生支援)という中小事業者の多くが陥る様々な経営局面に対応できる体制を確立しています。まずは経営の健康診断として、「早期経営改善計画策定支援事業」の利用から開始してみてはいかがでしょうか。また、債権放棄などが伴う金融支援が行われる再生支援計画の場合には、同時に事業承継の支援や経営者保証ガイドラインによる経営者保証の整理支援も行っていきます。

さらに、「よろず支援拠点」や「事業引継ぎ支援センター」など他の中小企業支援機関との連携によって、中小事業者のあらゆる経営課題の解決や経営改善・事業再生のお手伝いを行いますので、お気軽にご相談ください。

インタビューをした人

独立行政法人中小企業基盤整備機構
中小企業再生支援全国本部
副統括プロジェクトマネージャー
町田継道さん

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