公的機関の歩き方

地域に根づいた産業全般を支援

Vol.16 都道府県等中小企業支援センター

都道府県等中小企業支援センター

第16回は「都道府県等中小企業支援センター」の歩き方をお届けします。
都道府県等中小企業支援センターは、地域産業の振興促進に向けた取組を行っています。
今回は、都道府県等中小企業支援センターの1つである公益財団法人埼玉県産業振興公社に、支援の概要や利用の仕方を伺いました。

地域に根づく事業者に、ワンストップの支援を実施

都道府県等中小企業支援センターは、「中小企業支援法」に基づき指定された法人です。都道府県および政令指定都市が行う中小企業支援事業の実施体制の中心として、全国に60機関設置されています。
都道府県等中小企業支援センターでは、中小企業の経営や技術などの専門分野において、豊富な経験と知識やノウハウを持つ民間人材を配置しています。また、商工会、商工会議所や政府系金融機関などの他の中小企業支援機関と連携しながら、中小企業の経営資源の円滑な確保支援に向けた事業を実施しています。

都道府県等中小企業支援センターの強みは、中小企業が抱える課題に対して、問題解決の糸口が見つかるようなワンストップのサービスを展開していることです。
中小企業の経営者は、資金調達や販路開拓、技術、法律および税務など、さまざまな課題や悩みを抱えています。特に最近では、急速に進むIT化やグローバル化に加え、事業承継などに対しても対応が求められています。全国に設置されている都道府県等中小企業支援センターでは、これらの課題に応えるべく、主に以下のような支援制度を設けています。

(1)相談窓口
経営や技術の専門家や経験豊富でノウハウを持っている担当者が、中小企業が抱える課題に対して相談に応じています。また、地域によっては弁護士などの専門家による法律相談の支援を行うところもあります。

(2)専門家派遣
都道府県等中小企業支援センターに登録している中小企業診断士、税理士などの専門家を派遣し、財務、人材、技術をはじめとする経営課題に関する診断や助言を行っています。

(3)情報の提供など
経営者、起業家を対象とした研修、セミナー、商談会などを実施しています。また、地域中小企業の経営動向などの調査・分析を実施し、情報の提供を行っています。

(4)事業可能性評価事業
アイデア、事業プランなどに対して、技術やノウハウに関する事業可能性の審査、評価を行い、継続的な支援を実施しています。

お近くの都道府県等中小企業支援センターを知りたい方は、上図「都道府県等中小企業支援センターの一覧」をご覧ください。

関東圏のセンターと連携を取り、地域産業の支援を実施する

埼玉県産業振興公社が組織する地域プラットフォーム

埼玉県産業振興公社が組織する地域プラットフォーム
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都道府県等中小企業支援センターの中でも、特徴的な支援を実施する機関をご紹介します。
公益財団法人埼玉県産業振興公社は、中小企業の経営の革新や経営基盤の強化、創業の促進を図ることなどを通じて埼玉県の産業振興を推進し、中小企業の発展に寄与することを目的に設立されています。
同法人は、1973年に「財団法人埼玉県中小企業振興公社」として設立されました。その後、2011年に「財団法人埼玉県産業振興公社」と改称し、2013年に公益法人に移行しています。

同法人は、図「埼玉県産業振興公社が組織する地域プラットフォーム」のように、中小企業などに適切な事業診断を実施したり、ミラサポを活用した専門家派遣事業を展開するなど、県における中小企業支援体制の中心として機能しています。
一例としては、人材育成支援や関東圏の他のセンターと連携した支援事業などを実施しており、埼玉県内の中小企業に加え、起業家なども含めた産業に係るあらゆる対象を支援する体制を取っています。
同法人が独自に行う事業のうち、特に力を入れている事業を以下のとおりご紹介します。

(1)人材の交流や相互啓発を目的とした人材育成支援
埼玉県産業振興公社では、自前で研修制度を設けることが難しいといった中小企業のニーズに対応するべく、「生産力向上研修」や「機械実技訓練研修」といった実務研修、「総合力強化研修」や「実務スキル向上研修」といった階層別研修などを実施し、人材育成支援に力を入れています。1年を通じてさまざまな研修プログラムを提供しており、毎年新入社員に受講させている企業もあるほどです。また、柔軟に受講できるオーダーメイド研修や通信教育も行っています。
さらに、次代を担う県内中小企業の後継者や若手経営者を対象に交流クラブ「フォース21」を組織し、人的ネットワークの構築や相互啓発のための活動を行っています。同法人の職員も参加し、現在約130人いる同クラブの会員を10名ほどのグループに分けて活動を行っており、気軽に交流できる場となっています。

(2)特徴的な専門家派遣事業
埼玉県産業振興公社では、ミラサポを活用した専門家派遣の他に埼玉県からの補助金や独自の予算で専門家派遣を行っています。
専門家派遣は、さまざまな経営課題に対して専門家が現場を訪問し、課題解決に向けたサポートを行うものです。同法人では、ISO認証取得を支援する専門家派遣や事業継続計画(BCP)導入を支援する専門家派遣事業も実施しています。
県の補助事業で実施している専門家派遣は現地支援が10回まで、ISO認証取得に係る専門家派遣は16回までの派遣となっています。海外展開事業などを円滑に進めるためにISO取得は重要であり、近年は導入する企業が増加しています。
同法人では、ISO認証を取得した後、フォローアップも行っています。

(3)関東圏の都道府県等中小企業支援センターとの連携事業
中小企業が多い埼玉県ですが、受注機会を県内の企業同士だけにとどめず、よりチャンスを拡大するため、関東圏の都道府県等中小企業支援センター同士が連携を取り、広域的な商談会を開催しています。
「関東5県ビジネスマッチング商談会」や「九都県市合同商談会」といった商談会を実施し、他県などと連携して、取引促進による企業の受注確保や販路開拓を支援しています。

企業の課題に寄り添った支援事例を紹介

近年、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などのIT技術革新や事業承継に対して迅速な対応が求められています。そんな中、埼玉県産業振興公社が独自に実施する支援制度を活用し、成果を得た企業の事例を紹介します。

(1)事業継続計画(BCP)導入で社の体制を見直し、従業員と事業を守る

災害図上訓練(DIG)の様子

災害図上訓練(DIG)の様子
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埼玉県神川町に位置するA社は、電子部品の製造などを行っています。13名の従業員を抱える同社社長は、大雪被害に見舞われた際、従業員の安全確保か事業継続、どちらを優先すべきか判断に迷った経験がありました。また、取引先の企業から事業継続計画(BCP)導入を求める声も上がっていたため、現在の管理体制における課題払拭や災害に対しての想定や準備に向け対応に乗り出しました。
A社は、埼玉県産業振興公社の職員とともに各自治体で公開されているハザードマップを用いて、地震、水害、土砂災害などの災害により想定されるリスクを目で見えるようにした「災害図上訓練(DIG)」を実施しました。この取組により、現状において考えられるリスクを地図上で把握することができました。また、国土交通省国土地理院で公開されている明治期の低湿地マップも活用し、リスク想定を行いました。
この取組を経て、A社は、同法人の「事業継続計画(BCP)導入支援事業」を活用し事業継続計画の構築を開始。具体的には、重要商品を検討し中核事業を決定する「事業影響度分析」と、被害を想定した上で目標復旧時間を設定する「リスク分析」を実施しました。
現在は、遊休設備を利用して取引先内に代替拠点を設置し、事業継続を図る計画を立てており、従業員の安全確保と事業継続双方を実現できる体制づくりに日々取り組んでいます。

「事業継続計画(BCP)導入支援事業」について、詳しくはこちら

(2)下請け専業から自社製品を開発、医療分野に進出

訓練用医療臓器

訓練用医療臓器
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埼玉県八潮市の株式会社寿技研は、1984年の設立からラジコンのタイヤなど、金型製造を手がけてきた町工場です。下請け業務を専業としていましたが、2008年のリーマンショックにより仕事が激減。「下請けのままでは経営の安定は望めない時代だ」ということを痛感した同社の高山社長は、自社による製品開発を模索しました。
高山社長が注目したのは、医療機器メーカーに勤める友人から聞いた「腹腔鏡手術の訓練道具が高額」という話でした。この話から新事業を開拓しようと考えた高山社長は、思いきって千葉大学フロンティア医工学センターの研究生に。医師が自宅や医局で手軽に練習できる道具づくりを目指して、医師や工学系の専門家の指導を仰ぎました。「どんな手技を練習したいのか」「どのような素材と形状が望ましいのか」といったニーズをもとに試作を繰り返し、医療教材として手法を訓練する事が可能な道具を開発、次々と世に送り出しました。
2017年には、植物性食品を原料とするリアルな模擬臓器の開発に成功。この製品については、「埼玉県先端産業創造プロジェクト」の補助金の活用など、埼玉県産業振興公社が開発を支援しました。この模擬臓器は柔軟性、感触、強度、色などを実臓器と同等にコントロールすることが可能です。従来使用されてきた豚などの動物臓器に比べて、入手の容易さ、衛生面、廃棄処理など多くの問題を解決しています。

「埼玉県先端産業創造プロジェクト」について、詳しくはこちら

困りごとがあれば、まずは足を運んでみてください

全国商店街振興組合連合会 浜野次長

埼玉県産業振興公社 武井英樹主任調査役(右)と
山崎等主査

中小企業が抱く最近の課題として、事業承継に関するニーズが高まっています。「後継者がなく廃業せざるを得なかった」や「社内に適任な人がいない」など、中小企業の後継者問題は深刻です。そのため、埼玉県産業振興公社では、2018年4月から県の予算で事業承継コーディネーターを設置し、本格的に相談事業に乗りだしています。
同法人に事業承継における窓口を設置し、相談内容によっては県内の商工会や商工会議所、事業引継ぎ支援センターにご案内しています。また、年間2回、他の支援機関向けに事業承継における専門家の研修支援を行っています。

埼玉県内の中小企業の方で、事業承継についてご相談があれば、次の窓口にお問い合わせください。

事業承継相談窓口
TEL:048-647-4085
相談時間:9:00~12:00 13:00~16:30(土日祝、年末年始除く)

しかし、事業承継のみならず、中小企業が持つ基本の課題は「ヒト・モノ・カネ・情報」です。同法人では、さまざまな観点から課題を見極めることができる専門家や職員が配置されており、相談内容に対応できる部署にご案内しています。また、「何を相談したらいいかわからない」といって同法人に訪問してくる方も珍しくありません。相談内容が明確でなくとも、専門家や職員と一緒に課題を見つけ、優先して解決すべき事項をともに考えながら対応していますので、まずは足を運んでいただくか、経営相談の総合窓口にお問い合わせください。
他県の方は、最寄りの都道府県等中小企業支援センターにお問い合わせください。

経営に関する相談窓口(※埼玉県の企業が対象となります)
公益財団法人埼玉県産業振興公社 企業支援部企業支援グループ
TEL:048-647-4085
FAX:048-645-3286
Eメール:desk@saitama-j.or.jp
相談時間:9:00~12:00 13:00~17:00(土日祝、年末年始除く)

インタビューをした人

公益財団法人埼玉県産業振興公社
総務企画部総務企画グループ
主任調査役
武井英樹さん

武井英樹さん

企業支援部企業支援グループ
主査
山崎等さん

山崎等さん

Profile

  • 公益財団法人埼玉県産業振興公社
    大宮事務所
  • 〒330-0854
    埼玉県さいたま市大宮区桜木町1-7-5 大宮ソニックシティビル10F
  • TEL:048-647-4101(代表)
  • 埼玉県産業振興公社ホームページ