巻頭特集|施策活用 経営に公的サポートを活かす!Vol.1|今、中小企業・小規模事業者には、生産性を向上させて収益を上げる「稼ぐ力」が求められています。それを実現するためには、補助金や専門家派遣などさまざまな公的支援を活用することが有効です。公的支援を活かして「稼ぐ力」をアップさせようとする中小企業の取り組みを紹介します。

Vol.1 平成26年度補正ものづくり・商業・サービス革新補助金

公的補助金を弾みに、夢見たワイナリーを都会で開業! 【スイミージャパン】

社長の中本徹氏(深川ワイナリー『テイスティング・ラボ』にて)

社長の中本徹氏(深川ワイナリー『テイスティング・ラボ』にて)

【公的サポートの効果】
(1)

設備資金の補助金の採択を契機として、金融機関からの融資を得られた

(2)

この融資のため設備購入が進められ、醸造(果実酒の製造)免許の交付後、すぐに生産を開始することができた

(3)

キャッシュフローに余裕が生まれ、関連事業の早期展開に寄与した

東京で3軒目のワイナリーとなるスイミージャパンは、単にワインを醸造するだけでなく、ブドウの収穫体験やオリジナルのブライダル商品の提供などワインをベースにした「コト」の創出に取り組んでいる。

同社の中本徹社長にとってワイナリー経営は長年の夢。その弾みとなったのが補助金だった。「平成26年度補正 ものづくり・商業・サービス革新補助金」の採択により、醸造設備に必要な資金の3分の2にあたる982万円を賄うことができ、ワインをベースにモノ(ワイン)だけでなく様々なコトも提供するという、夢に描いたビジネスを実現させたのだ。

事業の内容と特徴

ワインをベースにした様々な仕掛けを提供する東京のワイナリー

スイミージャパンの創業者・中本徹社長は、2004年に駐在先の北京で広告代理店業のスイミーチャイナを創業し、次いで2006年9月に株式会社スイミージャパンを起業した。

同氏は長年、広告代理店・貿易会社を経営しており、サービス業とは異なる自社での「ものづくり」へのあこがれを持っていた。その中でも、「ワインはものづくりの極みではないか」との思いから、5年もの構想を経て、2015年にワインバル「九吾郎ワインテーブル」を開店、そして2016年、醸造所「深川ワイナリー」を開店した。2017年1月には、同じ江東区内でワインと発酵食品のセレクトショップ「市松屋」をオープン。これらワイン関連事業が、地元顧客の愛顧を得て、大変好調な業績で推移している。

ワインは本来、生産地で醸造するのが大半である。しかし、同氏は、深川で生のブドウを仕込み、醸造過程を間近に見られることを「ブドウに都会に来てもらう」と表現し、それをコンセプトにワイナリーを創った。顧客にブドウの収穫体験をプロデュースし、ブドウの生産地と消費者の関わりを深める。例えば、結婚を控えたカップルが初めての共同作業として披露宴や引き出物でふるまうワインを醸造したり、来日する外国人が観光体験として醸造したりするなどである。生産者の名前をエチケット(ラベル)に記載するにとどまらず、アパレルなど他業種のブランドとのダブルネームとするなど、その関係者みなでワインを創りあげる。これまでにない斬新な発想を形にし、自治体を含む多方面からたくさんの賛同・共感を得ている。

「東京都と江東区という場を通じて、さらなる発展で地域貢献を目指している」と中本氏は語る。

公的支援活用の背景

自家醸造したくても設備資金が調達できない

同社のワイン関連事業すべての基盤となっているのが、会社に隣接する醸造所である。東京都にはこれまで2社のワイナリー(江東区には、そのうち1社)しかなく、同社が都内3番目のワイン醸造所となった。ワインの醸造開始にあたっては、その免許取得のため、必要な技術的能力を備えた醸造家の雇用、年間6,000リットル(ワインボトル8,000本相当)以上の醸造量の確保(=販売ルートの確立)など、様々な厳しい制約があった。

同社初の飲食店であったワインバル「九吾郎ワインテーブル」での成功をきっかけに、温めていたワイナリー構想について、金融機関への借り入れを打診したものの、その金融機関での前例が乏しく、事業計画の実効性が伝わりきらなかった。そのため、当初は融資の希望も思うようにならなかった。

だが、中本氏はワイナリー開業の夢を諦めなかった。その夢の実現のため、醸造免許の取得に向けてめどが立った際に、税理士や社会保険労務士といった専門家のコンサルティングを受けたことで、醸造設備(プレス機、醸造タンクなど)の資金の一部が補助される「平成26年度補正 ものづくり・商業・サービス革新補助金」の存在を知り、申請・採択されたのである。初めての補助金申請で慣れない点も多く、申請の過程では必要なデータの算出など多くの苦労があった。そんな状況で補助金採択に至ったのは、前述したような消費者と生産者らをつなぐための「体験型事業」が他社との差別化となり、評価されたものと中本氏は考えている。また、広告代理店の勤務時代から関係する商社や設備業者から売れる商品づくりのためのアドバイスを得るとともに、これらのことを専門家の助言を得ながら計画書にきちんと反映させたことで、結果、採択に結び付いたと考えている。

醸造前の原料のブドウ

醸造前の原料のブドウ

ワイナリー内の醸造タンク

ワイナリー内の醸造タンク

活用の効果

素早い事業化で売上にも直結

「この補助金の採択を受け、認定支援機関からのサポートが受けられることになった」と中本氏は語った。2016年6月に醸造の免許が交付されたのち、すでに準備が整っていた設備で生産が開始され、同年8月、待望の初出荷となった。このため、時間的なロスもなく、売上に直接的に結び付けることができたのである。

設備投資資金の3分の2にあたる982万円の補助金を受けられたことにより、やがて金融機関から追加融資を受けられたことが、同社のキャッシュフローに大きく寄与した。単年度黒字化の追い風になったことは言うまでもない。また、資金に余裕ができたことで、他店舗を譲り受けワインと発酵食品の店「市松屋」として業態転換し、2017年8月には醸造所併設プライベートレストランの増床を予定するなど、度重なる資金需要にプラスの効果をもたらした。

この補助金活用は、今後、「飲食店などで独立する方々のサポートをしていきたい」という同社のインキュベーションへの取り組みや、前述した様々なワイン関連ビジネス、今後、多店舗展開を予定する飲食店事業について、良い循環を促す呼び水となったと言える。

会社データ

企業名 株式会社スイミージャパン
設立年 2006年(平成18年)
所在地 東京都江東区
資本金 1,000万円
事業内容 ワイン醸造業、ワイン関連飲食・物品販売業、広告代理店業、貿易事業

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