巻頭特集|施策活用 経営に公的サポートを活かす!Vol.4|今、中小企業・小規模事業者には、生産性を向上させて収益を上げる「稼ぐ力」が求められています。それを実現するためには、補助金や専門家派遣などさまざまな公的支援を活用することが有効です。公的支援を活かして「稼ぐ力」をアップさせようとする中小企業の取り組みを紹介します。

Vol.4 認定支援機関による経営改善計画策定支援事業

東京下町から日本の伝統文化「屏風」の魅力を国内・海外に発信 【片岡屏風店】

東京で唯一の屏風専門店社長の片岡恭一氏

東京で唯一の屏風専門店社長の片岡恭一氏

【公的サポートの効果】
(1)

値上げやコスト削減により前年比売上3%アップ、利益は大幅増加

(2)

社員の経営参画意識の高まり

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取引金融機関から一層の信用獲得とさらなる公的サポートの活用

株式会社片岡屏風店は、現在東京で唯一の屏風を製造する専門店である。屏風づくりに加え、博物館の設置や体験教室の開催により、日本の伝統文化である屏風の魅力や技術を積極的に伝えている。

2012年、東京スカイツリーが同社の至近に開業し地域の旅行客が増える中、同社社長は息子の孝斗(こうと)氏への将来の事業承継に向けて、2014年に「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」を活用し、計画策定による販売先の見直しや販売価格の値上げ、コスト削減により前年比売上3%アップ、利益大幅増加を実現するとともに、新規顧客開拓のための取り組みなど経営改善を進めた。

事業の内容と特徴

工房、博物館、体験教室をあわせ持つ屏風専門店

片岡屏風店は戦後間もない1946年に東京都墨田区に創業。屏風専門店として節句用、ホテル式場用、装飾用などの屏風に加え、帯や着物を素材としたオーダーメイド屏風など、美しい屏風をつくり続けている。

1996年には、製作現場にショールームとして屏風博物館を併設した。次いで、世界に1つのオリジナル屏風がつくれる「からくり屏風」体験教室を開設し、修学旅行生や国内・海外からの旅行者を中心に、年間2,000人以上が屏風づくりを体験するなど、賑わいをみせている。

屏風づくりは創業時から変わっていない。職人が手作業で骨となる木枠を組み、下貼りを何層も重ね、装飾をして仕上げていく。社員は10名ほどだ。既定の節句用などに対し、評判の高いオーダーメイド屏風は、大きさ、貼り紙、模様などを顧客の要望に応じて1隻(せき)1隻丁寧に仕立てる。顧客の記念品を素材として使用することもあるため失敗が許されず、高い技術力が要求される。

その伝統文化に対する高い技術力が評価され、同社社長の片岡恭一氏は、墨田区を代表する付加価値の高い製品をつくる職人に与えられる称号「すみだマイスター」に認定された。また同氏は、2006年には都内に就業する優秀な技能者を表彰する「東京都優秀技能者(東京マイスター)」にも表具師として選出され、ソムリエの田崎眞也氏らとともに表彰されている。

公的支援活用の背景

後継者へのバトンタッチのために

屏風の使われる場は年々減少しており、同社を取り巻く環境は厳しい。市場の多くを占めるのは節句用やホテル式場用であり、20年以上前には東京都内に屏風専門店が7~8軒あったが、景気や需要の変動を受け廃業に追い込まれた。同社の節句用やホテル式場用の売上もピーク時から2~3割減少した。

一方、近年では訪日外国人の増加や地元墨田区の地域活性化事業「すみだ3M運動」により、同社への問い合わせが増えるなど知名度が向上している。

既存市場の低迷や借入金返済の対応、増加している潜在顧客の開拓など、課題を認識してはいたが対応できずにいた。そんな折、大学卒業後アメリカに留学していた息子の孝斗氏が帰国し、2014年に同社に入社した。家業を継ぐかどうかは本人に任せていたが、アメリカの文化に接した孝斗氏は「屏風づくりを通して、日本の伝統文化の良さを国内・海外に発信していきたい」と決心したという。後継ぎができたからには、債務を整理し安定した資金繰りの経営状態にして事業を引き継がせたい、と片岡社長は思うようになる。そこで、取引先である地元信用金庫の助言を受け、同年に東京都経営改善支援センターが実施する「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」を活用することにした。これは中小企業・小規模事業者が経営改善計画を策定するに当たり、認定支援機関による計画策定支援に係る費用などを経営改善支援センター(全都道府県に設置)が一部負担するものである。

店内に並ぶさまざまな種類の屏風

店内に並ぶさまざまな種類の屏風

「上貼(うわば)り」を貼る様子

「上貼(うわば)り」を貼る様子

活用の効果

全社員で改善意識を高め、次の一手へ挑戦

経営改善を支援するために派遣された中小企業診断士と取引信用金庫の担当者が、毎月1回同社を訪問し、経営に関する助言を行うようになった。

経営改善計画を策定することで、月々の売上や発生コストの見込みから損益が見えるようになり、販売先の見直しや値上げを行うことで売上は前年比3%増加した。コストを削減した効果もあり、利益は売上以上に大幅アップした。

また、片岡社長や社員の経営に対する意識も変わった。これまで売上程度しか伝えることができなかった定例会議でコストや利益も共有したところ、「作業効率を高めてもっと生産量を増やさなければいけない」といった意見が社員から出て、ある屏風では製作数が一日5隻から30隻に大幅アップするなどの効果があった。社員の経営に対する参画意識が高まったのである。

片岡社長自身も中小企業診断士との毎月の打ち合わせに備えて積極的な取り組みを行った。具体的には、六本木の日本製品取り扱い店に問屋を通さず委託販売を開始して3割ほど販売価格を上昇させたり、大阪や京都の国内外観光客が集まる店に製品の展示をしたりといったことである。

取引信用金庫からは一層の信用を得ることができ、これまで同社が認識はしていたが、どう対処すればよいかわからなかった課題について、さまざまな公的支援施策の提案を受けられるようになった。例えば、増加する外国人向けの需要を開拓するため、ホームページの英語表示や海外での展示会への出展について、「Buy TOKYO推進活動支援事業」(東京都)の補助金の活用につながった。

2020年東京オリンピック開催に向けて、海外から一層高まる日本の伝統文化への関心に対して、「屏風を″Byoubu″として世界に発信したい。また、屏風づくり教室を通じて、子どもたちが大人になったときも、屏風を身近なものと感じてもらいたい。経営改善を進めながら、新しいものを積極的に取り入れ屏風の魅力を伝えていく。屏風には可能性がある」と片岡社長は熱い思いで語る。

会社データ

企業名 株式会社片岡屏風店
設立年 1950年(昭和25年)、創業年1946年(昭和21年)
所在地 東京都墨田区
資本金 1,000万円
事業内容 屏風製造・販売業

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